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SPELL NUMBER~強か女子大生と年下バンドマンの一年~  作者: 矢島 汐
第九章 レイジングフィルム
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02 やるか、やらないか

「ここに座っているということは、一応主旨を理解してもらえたと捉える。話を進めよう」


我が兄ながら、今日も絶好調高圧的っす……

砕けてるっつーか、通常運行になってるだけだ。

一応客じゃないのか、スペルメンバーは。超居心地悪そう。連れて来たの私だけどさ。


「この件の返事は全ての説明が終わった後に伺う。それまでよく考えながら俺の話を聞いてくれ」

「わかりました」


代表して京介クンが素の声で返事する。

つーか、健司クンがリーダーだったんだね。知らなかった。

普通に京介クンだと思ってたのに……サイト見直そう。

まぁ、健司クンは何だかんだ言って大らかにまとめてくれそうな気ぃするし、緩衝材っぽいからリーダーに向いてるのかもしれないけど。



『美雨、SPELL NUMBERのメンバーに都合つけてもらってくれ』

『……マジで?』

『大マジだ。このクソ忙しい時に冗談で割く時間はない』



そう言われたのが、一昨日佳也クンに電話する十分前。

だいぶ驚いたけど、反対もなく頷いた。

私のロック好きはお兄ちゃんからきてる。今でこそ結構落ち着いてる感じだけど、この人もかなりコアな音聴いてきてるから、色んな可能性の中からスペルを拾い上げたのも納得した。


お兄ちゃんにはスペルのことを何度か話したことがあった。

“今まで知らなかったけど、学生バンドですごいのがいる”って。

私らは歳が離れた異性のきょうだいにしては仲がよくて、二人でドライブとかもする。その時流すのは大体お互いが見つけてきた良曲だ。

私がiPodと車のオーディオ繋いでサイトから音源落としてきたスペルの曲流してたら“これ、何のバンドだ?”って聞いてきたことあった。

耳は私に近い、っつぅか私の耳の育ち方がお兄ちゃんに影響されてるんだと思う。



レイジングフィルムは、人が少ない。

社長を含めて全員が何かしら兼務しながらいくつかの依頼を同時進行して映像を作ってる。

いくら自分が責任者で自分の好きな音だからって、そんな適当な決め方はしない。忙しくても最高のものを作るのが普通のことだから。

CMにスペルの音を使うってことも、色々論議し合ってクライアント側とチームスタッフの全員で決めたこと。

それが商品に、自分たちの創った映像に合ってると思った。それだけだと思う。


きっかけは私の知り合いってことだけど、お兄ちゃんの言う通り……“間に合わせ”なんかじゃない。


「美雨、お前はどうする?」

「んー……見てるわ」


向いに座ってる四人が首を傾げる。

わざわざ言わないけど……これ、私も関わってる話だからさ。


ほとんどだまし討ちみたいに連れて来ちゃって申し訳ない気持ちもあるけど、私もスペルの音をのせたこのCMが流れてほしいと思ってる。

だってさ、お兄ちゃんに聞いてから想像したら……これ以上ないくらい合ってるんだもん。


「では、まずはこれを見てほしい」


目配せで再生ボタンを押す。

パソコンと画面繋いだ大きなディスプレイに全員の視線が集中して。


始まりは真っ黒な画面。女の声でブランド名が囁くように入って。

そこから写ったのは濃いメイクがされたでっかい目。画面いっぱいにドンって出てきてインパクト大。

それが瞬きしたら、次は下半分だけ見える横顔。頬から顎にかけてラメがたっぷりのペンキみたいなのが滴っていく。

一瞬したら画面が変わって、また目。でも今度はメイクの色が違う。

それが伏し目になったら、肩が映る。どんどん下に滑ってくペンキは色とりどりで、何色って表現するのが難しい。

色の違う目。手。目の瞬き。腰。じっと見つめる目。足を伝うペンキ。

最後に閉じられた目からブラックアウトして――



『きらめく虹に、溺れなさい』



キャッチフレーズ。

それとカットしたダイヤみたいな形した入れ物が転がって、中から色とりどりのきらきらしたパウダーが落ちてくる。

最後に真っ白にフェードアウトしていく中にブランド名。そこで動画終了。


某有名コスメメーカーのシャドウのCM。

今年の春前から流れて、結構見かけることが多かった気がする。

このCMソングは『sweltering night』を歌ってたアーティストの曲だ。

ハスキーなのに何となく可愛らしい声で、重低音の効いた曲。この選曲はかなりよかったと思う。


「このCMに見覚えは?」

「ありますねぇ……化粧品のCMで人の顔が出ないのって新鮮で、覚えてます」

「おれもー母ちゃんがこれ欲しいっつってた。若作りだってーの」

「すんません……オレは覚えてねぇっす」

「……俺も」


まぁ、半年以上前だしね。

CMなんか腐るほどあるし、男からしたら興味ないだろうし。

つーか昭クンが知ってたのは意外だったなぁ……


「この続編となるのが、これだ」


また目配せを受けて、ちょっとパソコンをいじってから再生ボタン。


頭は同じ黒画面と女の声。

それからまず太ももに添えられた手。綺麗な縦長の爪には青の偏光っぽいネイル。

その手が下にゆっくり動き出した瞬間、また画面が変わる。

今度は手だけ。指が誘うように動いて、ネイルがグラデをかけてるみたいに光る。

そしたらまた切り替わって、太ももから膝に滑る手が映る。

何度も画面が交互に変わっていって、最後は同じ色で塗られた足の爪を指が撫でて――



『まばゆい青を、崇めなさい』



前のに似たキャッチフレーズ。

ブラックアウトした画面に持ち手が宝石みたいになってるネイルボトル。青だけ横倒しになって、中身が零れている。


流れてるのは重い音と囁くような歌声。妙に耳に残る曲だ。

これは洋楽のオルタナ系バンドの曲が使われてる。日本じゃマイナーだけど、向こうじゃ有名アーティストのオープニングアクトとかやってるらしい。


「…………え?」


お兄ちゃんが何か言う前に、佳也クンが声をあげた。

んで、何でか私と画面をちらちら見る。


……まさか、ね。


「あの、すんません。今の……いや、その前のも、映ってた脚って……」


ちょっと佳也クン……まさか、だよね?


「よくわかったな……君はそういうフェチか?」


「え゛」

「はぁああ?! 何で、何でわかんの?!」

「何、何?! 佳也何わかったん?」


絶対わかんないだろうから平然としてられたのに……!

佳也クンの足フェチ、甘く見てた……!!


「美雨はこれでも現役のパーツモデルだ。このシリーズにも全部出ている」


『……えぇぇええ?!!』


「ちょ、言わなくたっていいじゃん!」

「事実だ。隠しようもない」

「隠してたのにバラしたのあんただろうが!」


何で全員にカミングアウト?!佳也クンひとりわかったならそれでいいじゃんよ…!


「はーどうりで綺麗な足だと……」

「海で足だけ日焼け止め何回か塗り直してましたしねぇ……」

「つーか俺ら裸足なのにひとりだけサンダル履いたまま海入ってたよなー。変なのーって思ってたけど」

「……色々手入れしてたのも、このためっすか」

「…………もー私の話はいいよ。やめよう。うん」


つーか私が耐えられんわ。おやめになって、シャイニングボーイズ。


確かに、私は大学入ってからお兄ちゃんの友達に誘われてモデルの派遣事務所に入ってる。

全身モデルなんておこがましい。足タレってやつだ。

……まぁ、極々たまに臨時で全身出すけど。あれはメイクさんの腕が神がかってるからセーフ。


パーツモデルは不定期で不安定な仕事だから、皆何か他の仕事と兼業でやってる。私は学生とモデルの二足のわらじってやつ。

ケアもメンテもするし色々気ぃ使ったりする場面はあるけど、基本的に私の足は超強靭だ。

ちょっとやそっとじゃむくまないし傷つかないし、服も靴も神経質にならないで選べる。

ここ一年で足を負傷したのなんて、春あたりの佳也クンとの初デートの時だけだ。あれは思ってもみないきつさだった……


物凄い気を付けて制限作って生活してるパーツモデルさんの方が多い。

私はその辺、かなり恵まれてると思う。本気で両親に感謝だ。脚は自分の中で唯一って言ってもいいくらい自信持てる部分だから。

やりたいこととできることがかみ合ってるこの仕事は今では私に向いてると思ってるし、好きだ。

……でも、人にはあんま言いたくない。

“モデル”ってつくだけで、何となく見る目変えてくる人がいるから。実際高校の同級生に知られて面倒なことになったことがある。まぁそれはいい思い出じゃないし、置いておこう。


泉と智絵は知ってるけど、大学ではそれ以外にバラしたことはない。

まぁこの人たちなら全然気にしなさそうだからいいけど。

それに、これから同じ作品に関わってくるなら……知っておいてくれた方がよかったのかもしれない。


って感じに自分を納得させて、私は脳内ひとり会議を終わらせた。


「美雨のことは後で問い詰めるなり何なりしてくれ。話を進めよう」

「真雪さま! かわいい妹にフォローはないんですか?!」

「……名前呼ぶなと言っておいたはずだが? この馬鹿が」


…………こっわ。

でもお兄ちゃんだって普通に私の名前呼んでんじゃん……って、そりゃしょうがないか。

もうこのメンツには私の名前は知れ渡ってるし、佳也クンが呼んでてももうツッコむ気も起きない。


美しい雨に、真っ白な雪。

産んだ日の天気にちなんでお母さんがつけた名前は綺麗だけど……ちょっと、私らにはきついかわいさだ。

特にお兄ちゃんはやばい。“白雪じゃなくてよかったね”っつった悪友の首絞めて本気で吊そうとしたエピソード、っつぅか黒歴史がある。

かわいいんだけどね、真雪……うん。


「ま、まぁまぁ、話進めましょーお兄様」

「そうだな。お前に構ってる暇はない。続けよう」


向かいの三人が心配そうな目で見てくるけど、残念ながら私らはこれで通常運行なのです。

この人と二十一年連れ添ってれば慣れっこですよ。

だから私がドS扱いされるのは心外過ぎる。真のド鬼畜ドSっつぅのはこういうのを指すんだと思うよ。

また言ったら今度は殴られそうな気ぃするから黙っとくけど。


「今回君達の曲を使いたいのは、この画だ。美雨」

「はいはい」


もっかいパソコン動かして再生ボタンをクリック。

無音で再生されんのは、九月下旬に撮影した分の映像。


頭は毎度おなじみ。んで、次が……

今度は綺麗な形した唇が笑う。その口の端に溶けそうなくらい真っ赤な口紅の先が置かれて。

画面が変わって、足の小指に同じ口紅が置かれたらまた場面転換。

上唇を塗り潰すように濡れてるみたいになめらかな赤が引かれてく。

また画面が切り替わって、足先から上に向かってうねった赤いラインが通っていって。

前作と同じように、何度も画面が交互に変わっていく。

太ももまで通ったラインの最終地点で、ぱっと手が離れてリップスティックが落ちる、寸前でこっちは終わり。

真っ赤に染まった唇の間からちょっとだけ舌が見えそうになった瞬間、ブラックアウト――



『濡れた赤に、平伏しなさい』



お馴染みのキャッチフレーズ。

先が潰れてるリップスティックで引いた真っ赤な線の上に、一番上に宝石が乗っかったみたいなスティックが四つ。


「この画に、君達の曲をのせるとこうなる」

「……え?」


ちょ、事後承諾!

それくらい普通にやってると思ったけど……やっぱりね。


横から手が出てきてパソコンが操作される。

今と同じ映像で……



『――

唇噛み付く

欲情一直線

合間に見える

赤い舌が誘ってる


どんな奴にも渡せないよ

狼が守る至高の宝

――』



編集されてるけど、何の曲なのかなんてわかり過ぎるほどわかる。

サビは佳也クン、最後の方は昭クンがメインで歌ってる。

スペルじゃ珍しいツインボーカルで、私の一番好きな曲。


「よりによって、『Black Tempest』……」

「お前の一押しだろう。俺もこれは好きだ。『DRUG SCAR』もいいが」

「あー、お兄ちゃん好きっぽいねぇ」

「あの……」


そうだった。兄妹で語ってる場合じゃないわ。


無音だった映像に何の違和感もなく嵌る。

雰囲気も合ってる。

歌詞にも微妙にリンクしてる。

私は脳内で思い浮かべて、こうやって実際に見て……“いい”と思った。

さてさて、当事者の皆さんはいかがですかね。


「許可を取らずに会議で使ってしまったことは謝ろう。だが問題はそこじゃない。

これを見て、君達はどう思った? このCMは目を引くか。見て、聴いて、印象に残るか。どうだ?」


言いたいことを言わせない。

まず自分の意見を言って、それから質問ふっかけて、自分のペースに持っていく。


お兄ちゃんは社会人になってから更にイイ性格になった。

それくらいじゃないとこの業界やってられないらしいけど……今回目の前にいるの、一般人だからね?もうちょい手加減しようよ。

まだCMに使っていいとかそういう話してないのにこういうこと言うの、ずるくね?


フォローに入ろうか迷ったけど……私は一応関係者だけどこの場面じゃ部外者なわけで。

結局誰かが発言するのを待つことにした。


「おれ、いーと思う」


一番リラックスっつーか通常モードだった昭クンがわざわざ挙手してからさらっと言う。


「そうか。ショウくんはどういうところがいいと思った?」

「えー? よくわかんねーけど見てて真っ赤なのがすげー目に入ってくるし。おれらの歌ちょうどいい感じに合ってっし」

「昭、敬語使おうな……でも、オレもいいと思いました。何つぅか、気の利いたこと言えねぇんすけど……目が離せないっつーか」


素直な感想を聞きながら、隣の私と似た顔がほんのちょっと笑ってんのに気付く。

何年経ってもどんだけ依頼こなしても評価されるのは嬉しいらしい。しかも今回はクライアントじゃなくて一般の生の意見としてだからね。


「……このシリーズ、メイク部分以外は全部モノクロですね」

「ああ、色を最大限まで引き立ててほしいというオーダーなんだ」

「画面の動きも同じように揃えてますけど……この最後の口紅の映像だけ場面の移りが段々早まってるのには、何か意味が?」


京介クン、何か……マジな目してね?

クライアントみたいになってんよ、君。


素の方で聞いてきた京介クンにちょっとだけ目ぇ見開いてから、お兄ちゃんはふって笑う。


「よく気付いたな。これは画を少しばかり、君達の曲のイメージに馴染ませたんだ」

「イメージ……?」

「『Black Tempest』……嵐だろう? 上に画面を持っていくにつれて動きをつけてみた。コマを詰めて、切り替えの間に黒一色が入る時間をほんの少しだけ足したんだ」


目配せで催促されて、また再生ボタン。


曲のテンポは変わらない。

画面が激しく動いてるわけじゃない。

でも、お兄ちゃんの言ってた意味がわかる――少しずつ画面の切り替わりが早くなって、うねる口紅のラインが嵐みたいに見えた気がした。


「ふふっ……すごいなぁ…かっちり嵌り過ぎてて怖いくらいですよ」

「俺も実際編集してみて驚いたがな……キユくん、君は?」


ずっと黙ってた佳也クンについに矛先が向く。

何て答えるか、スペルメンバーも黙って佳也クンの方を見てる。


「……映像は印象強くて頭に残ります。それに……これは、ミウさんの曲なんで。これ以上合うものはねぇと思います」

「そうなのか? これお前のことだったのか…物凄い美化だな……」

「やめてぇぇええ!!」


しにたいしにたいしにたい!

何で身内の前でンなこと言うのさお前はぁあ!

前はこの歌私の前で流すのすら恥ずかしがってたのに……お前の羞恥心どこ行ったんだよ!


「わめくな外行け馬鹿が。まぁとりあえず全員これをいいと思ってくれたようだ。ありがとう」

「……(キチク)」

「黙らないとお前の鞄の中にあるペンケースの中身、しゃもじに入れ替えておくぞ」

「それ絶対微妙にごはんついたままのやつでしょ! 根暗っぽいよ……!」

『(地味に陰湿……!)』


壮絶に微妙な顔をした昭クン以外を置いてけぼりにするように、お兄ちゃんが少し雰囲気を変える。


「失礼、話を戻そう」


軽く息をついてから、ソファーに座り直す。

その一言で空気がぴりっ、って張りつめた気がした。


「俺が君達に依頼したいのは、この曲の撮り直しと、使用許可だ」


さっきまでの身内的な雰囲気はどこにもない。

さすがにここでふざけたり口出ししたりはできない。


この場は慣れ合いじゃない。“ビジネス”だと再確認させられる。


「俺は、この曲がいいと思った。この画にとても合っていると。

君達が演奏できる最高の『Black Tempest』をここにのせたい。

できるできないで聞いてしまえば君達はできる人間だ。だから俺はここに君達を呼んだ。俺が聞きたいのは、君達が今までの話を鑑みた上で――やるか、やらないか、それだけだ」


……ずっる。

ここまできて、全員に“いい”って言わせて。

トドメでこんな風に言っちゃってさぁ……


選択肢なんかハナッから用意してない。“お願いしたい”なんて一言も言ってない。頼んでる側なのに明らかに立場が上。

ずる過ぎやしませんか?真雪オニーサマ。

最初から最後まで、全部自分のペース。大人って怖い。つーか容赦ない。

まぁ、“ビジネス”だもんね……


「ああ、ひとつ付け足しておくが……ここで君達が了承しても、今回の件が君達のバンドを次のステップに運ぶ術になると安易に考えないでほしい。そういった件は俺にとっては全くの管轄外だ。それは理解してくれ」


んで、現実主義。

夢なんか見させないけど、使えるモンはとことん使う。

まぁ、デビューできるよーとか言って結局一回でポイ捨てみたいな詐欺紛いよりもずっといいと思うけど。変に期待させる残酷な優しさって怖いし。


「できるだけ早く結論を出してほしいが、話し合う時間は必要だろう。報酬などの話もあるが、ひとまず「必要ないです」


にっこり。

シャイニング全開の笑顔、プラス後ろに星とか花とか飛ばす勢いのキラキラオーラ。

すっぱり話切られてお兄ちゃんがまた一瞬だけ目ぇ見開いた。


「多数決取りま~す。やる人、はいっ」


ザッ――


何の迷いもなく、手が……四つ挙がった。


「やるか、やらないか。それ以外にもありますよ、東ヶ原さん」

「……何だ?」


「やりたい、です」


材料出されて褒められて更に挑発されて“やる”って選択肢しか残ってないんじゃなくて、“やりたい”……って。


おっとー……こりゃ若い力の反逆じゃないっすかね。

どう出るよ?オニーサマ。


「その歳でそれくらい言えれば十分だ。ただ餌を与えられるだけでは肥える一方だしな」


…………うん。

うちの兄はどこまでもドSのようでした。


ものすんごくたのしそーぅに笑って、向かいの四人を見渡して。


「よろしく頼む。SPELL NUMBER諸君」


初めて、頭を下げた。

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