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07 As you like it 

若干際どいようなR15。

やべぇ。

やべぇよ、この状況……!


「ま、待って、マジ…ちょ、待て!!」


抱き締められて暫くしてから自然に押し倒されあのソファーでの一件再来。


いや、流れとしてわかるよ?

片思い→両片思い→すれ違い→告白と仲直り→合体ってのは。

すげぇセオリー通りだと思うし、別にいいと思うよ?うん。


でも、今やばいから。マジ勘弁して。

私、朝まで軽く残るくらい酒飲んでんだよ、昨日。んでそのまま寝て、起きて顔洗ってお手軽化粧して外に出てここに至ると。

…………隙だらけの化粧に、昨日の汚れと酒と煙草が残った体。こりゃいくらなんでも酷過ぎんだろ!

化粧はこの際いい。翠星館でがっつりすっぴん晒したし今更。

でも一日風呂入ってないでヤんのはやだ。雪崩れ込みセックスが多かったから結構事後に風呂入る派だけどそれとこれとはわけが違うわ。


「……駄目っすか?」


あーくそ、かわいいじゃんかよ……!ちょっと許しそうになった。いやいや、まだ人間でいたいよ私。


「駄目じゃないんだけど駄目! お願いせめて十分待って! 萎えても大丈夫すぐ復活するって! 若いから自由自在だよね!」

「ちょ、そういう……」


慎みのない女ですみませんね。でも間違ってないっしょ。

まぁ勃ってるかどうかはここからじゃ判別つかないけどさ。目ぇギラギラしてるし、多分元気になってんだろ。


「つーか佳也クンだって酒と煙草のダブルパンチくらいながらセックスなんかしたくないっしょ? 突っ込んでる途中で吐かれたらトラウマになんよ? まぁあれくらいの量じゃ全然具合悪くなんかなんないけどさ」

「だからもうちょいオブラート使ってくださいよ色々。

つーかやっぱ飲んでたんですか、朝いた奴と」


地を這うような声になってもエロ声はエロ声なんすね……って怖いんですが。


「飲んでたけど……別に何もないよ。お互い絶対安全牌だし」

「……酒の席じゃ絶対なんてないっすよ。ほんっと、警戒心ねぇな…」

「私だって相手選んでんよ。えーと……副ゼミ長とかだったら絶対ふたりで飲んだりしないし」

「しかもやっぱふたりきり……はぁ」


思いっっきり溜め息をつかれてちょっとイラッとくる。大体二人で飲んだ理由はテメェの家から泣いて帰ってきて慰めてもらってたからなんだよ……ってありゃそもそも私の勘違いから始まったんだよな。じゃあやっぱ悪いの私じゃね?


「とりあえず、一旦置いときませんかこの話……せっかく佳也クンといんのにわざわざ別の男について考えんのだるい」


私に非があるっぽいのは認めるからさ、上からどいて風呂貸してくれると嬉しい。んでこの微妙に盛り上がってるようで下がってきてる気分をどうにかしたい。できれば上げてく方向で。


視線を合わせて誠心誠意主張すると、何でかまたしてもふっかい溜め息をつかれる。

何、何が駄目なのさ。この状況でそんなに尋問優先したいのかお前は。


「ミウさんって、マジずりぃ」

「はぁ? …って、待てっつーの! ンン…っ」

「待つわけ、ねぇっすよ……超燃えた」


あの日以来の、ねっちこいけど上手いキスに捕獲される。

つー勝手に盛り上がんじゃねぇよ!引っ張られんだろ、この犯罪ボイス!


「やだ…ッ、ふ……せめてシャワー、んぅ、貸して!」

「後で」

「ば、かぁ……!」


馬鹿野郎、朝っぱらから何でそんな超本気なんだよ!

予備の歯ブラシもらって歯磨きしておいてほんっとによかった。いや、さすがに歯も磨かないで外出はないけど、基本だけど。


「やべぇ……今の、可愛い…」

「……は、ぁ? …っ」


頭腐ってんのか。可愛いは私から一番遠い単語だっつーの。


シュル、シュル……


キスの合間に耳が何かの音を拾ってきた。その音源に気付く前に昨日のままのワイシャツが軽く引っ張られる。

……あれ、もしかして、さっきのスカーフ……って、ぇえ?何そのすげぇ手馴れた感じ……!さすがイケメンは場数踏んでるってやつか。見もしないで取ったし。ネクタイならまだしも何となくな結び方したスカーフなのに。

つーかこの流れはもう逃げらんない感じ?うわ……香水もっと多めにつけときゃよかった。多少はマシだったかも。


元々第二くらいまで開いてたボタンの更に下、ブラが見えるちょうど境目の三つ目のボタンに手がかかって、何でか離れてった。

この状況じゃ何も見えないんだけど、感覚としてはわかる。何、風呂貸してくれる気になった?


「……あ゛ー!」

「えっ、何、気持ち悪くなった? だから言ったじゃんか臭い女とヤるのなんか拷問だよ」

「違います。その……すっげぇだせぇこと言っていいっすか…?」

「怖気づいてしなしなに縮んだとか以外なら」


「だから…まぁ、いっす……

……何かちょっと限界超えたみたいで、あの、マジで情けないんすけど……手ぇ震えて、うまくできなくて…………ほんと、有り得ねぇ……ミウさんに触んの、すげぇ緊張する」


……ごめん、きゅんきゅんキた。

マジかわいいよ、この人。抱き締めてわしゃわしゃやってやりたい。


つーか嬉し過ぎんだろ。こんな人が、私なんかに触んのに緊張してる。

それくらい大事に思ってくれてんだよね?ンなこと言われると私まで若干緊張すんだけど。


「……じゃあ交代する?」

「え」

「はい、逆ー」


肩を掴んで横に一回転。これで端まで行かないって……一人暮らしのベッドじゃねぇよこれ。

切れ長の目をかっ開いた佳也クンを下にして、頬を両手で包む。


「おー何か新鮮」

「え、ミウ、さ……」


「くち、あけて」


正直あんまキス上手くないんだけどさ、私。舌短いから大体後手に回ること多いし。でもちょっとくらい頑張らせていただきますよ。


「ふ、ン……ッ、ん……」

「、っ……」


上の歯の裏側の柔らかいとこを丁寧に舐めてから向こうの舌を避ける。ちょみっと触ったらまた避けて、狭い範囲の追いかけっこ。

結構よくやるテクだけど、これやると相手がムキになること多くて……って、それじゃ主導権奪取されんじゃね?うわ、やっべ。


「ッ、マジで、煽んじゃ、ねぇよ……!」

「っ?! ン、ンぅ!」


ちょ、苦し…っ!頭抑えられっとマジで逃げ場ないんですが!

つーか煽ってない煽ってない。よく言われっけど舌の長さ的に自分から絡めんのがうまく出来ないだけだから。

耳の後ろとか髪とかを骨ばった指が撫でてく。あー私、佳也クンの手も好きかも。ってンなこと考えてる余裕がそろそろ……


…………もう、いっか。通常運行しても。考えるのだるくなってきた。


キスされたまま、さっき佳也クンが外さなかったボタンを片手で外してく。もう片方は自分の体支えてて何もできないから、マウントポジのままわざとアレに当たるように軽く腰を動かしてみる。

頭に添えられた手が抑えるから掴むくらいの力に変わって、これ以上ないってくらい濃いキスがやってくる。うん、引かれてないならいっか。


「ふぅ、っン…ん、は、ッ」


息長ぇな、佳也クン……オネエサンそんな素潜り的息継ぎできないよ。合間に吸うにしてもちょっと酸素足んないわ。

マジ、苦しい。でも何か幸せなのは私にMの気質があるんじゃなくて相手が佳也クンだから、でいいんだよな?


「ミウさ、ん…ほんとッ、真面目に、煽んないで。


……ブッ壊しそう」


モロ好みの美声でンな続き聞いてさ、燃えない女がいますかね?

世の中の女が全部受け身で控えめだと思うなよ。女だって性欲あんだよもっとノるに決まってんだろ。


思いっきり頭振って逃げ出して、顔全体が見える位置まで下がる。


「はしたない女でよろしければ。As you like it」


“そうやって言われると燃える”なんつって必ず開幕合図でこれを言わせたのは、文学青年気取りの隠れオタクだった。

結構付き合ってた期間長かったから癖になっちゃって、これを言うと自分でもどっかに火がつく感じがする……って、変なのはわかってるけどさ。

あいつが言葉攻めジャンルを確立してったんだよな、確か。私のセックスの脳内引き出し、カオス過ぎる。


斜め上の知識ばっかの元カレどもにすっかり感化されてるから、痛いのと汚いの以外だったら大抵のことはいけるようになってんだよ、私。断んの面倒臭いから普通に受け入れてたらいつの間にか自分もかなりコアっつーかビッ…積極的、みたいな。


「…………」

「佳也クン?」


通じなかったっつーことはない、と思う、多分、いや信じたい。

や、やっぱ駄目っすか。痛いっつーかアウトっすか。こういう女……


「あのぉー……」

「今日講義とかバイトとかないっすよね」

「は? ないけど……」


「マジで覚悟してくださいね」


何 の で す か 。


また攻守交代しておっぱじまった佳也クンの本気は、そりゃもうすごかった。脳内コメントしてる余裕すらないくらい。

この日、私はセックスしてて演技でもなく真面目に“許して”“もうだめ”とかその他諸々言ったっつーか言わされ、ある意味の“初体験”を味わうことになった。

お気に召すままどうぞ、


この先はお月様行となっております。

同タイトルで投稿しているので、大人なお姉様はよろしければ探してやってください。

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