第八章 新事業
第八章 新事業
早川浩一は父の代から始まった早川組と言う土建屋を2代目として引き継いだ。それから2年目に早川建設株式会社へとその組織形態を変えた。明治生まれの親父は浩一を子供の頃から2代目に育てるため、土建屋に学問はいらんという自説の元にスパルタ方式で育て上げ、中学校卒業と同時に工事現場へと見習いで放り込んだ。明治、大正、昭和と生きた親父は頑固一徹で早川組を江東区では一番大きな土建屋へと育て上げた。それを一番身近で見習った浩一は親父の頑固さに加えて、親父に隠れて勉強した経理や法律を武器としてゼネコン予備軍としての早川建設と言う会社組織にまで大きくのしあげ、今では従業員300人、下請け作業員1000人を抱えるまでになった。
早川浩一の正妻にはこどもが生まれなかった。御陰で外に女を何人か作っても女房は苦言の一言も言わない。その中でも小料理屋をやらせていた熊谷初恵に男の子が産まれた。浩一が45歳の時だった。遅く生まれた子供ほど可愛いものはない。初恵には小料理屋もやめさせて一軒の家を持たせ、子供と二人で暮らせるようにしてやった。
18年が経った今、その子供がどうしようもない反抗期で大学受験にも失敗し入った予備校もさぼり、プー太郎を決め込んでいる。それが初恵と共に送り込んだオーストラリアで地元の大学へと入りたいと言う。日本に住んでいた間中、それも特にこの数年間、早川浩一を悩ませ続けたあの愚息が外国の大学へ行きたいという。私立大学だから入学に際しての寄付金が必要だという。聞くと500万円で法学部に入れるそうだ。早川浩一はにべもなく送金してやった。
そんな頃、親父の代から引き継いで会社の専務をしていた金沢徳蔵と言う男が老衰で無くなった。その息子孝雄にも一つの現場を任せていたが、葬式の数日後、社長室に尋ねてきた。
「社長、わたしの持っている現場も今月末で終わります。出来たらこれを機会に会社を辞めさせていただきたいのです。」
金沢孝雄が出されたコーヒーにも手を付けずに、固い表情で言った。
「おいおい、どうしたんだい。急にビックリするような事を言うなよ。何が不満なんだ。お前の場合、給料じゃなく出来高払いだから、結構金には文句は無いだろうが。」
浩一が机から離れて金沢の前に腰を降ろして言った。
「さぁ、聞こうじゃないか。」
金沢の言葉を促すように、更に言葉を付け足した。
「はぁ、実は不動産の免許をとりましたので遅蒔きながら独立を考えているんです。大学時代の仲間が既に3人集まりましたから本格的に不動産屋を始める事にしました。」
金沢孝雄は浩一の親父と違い息子には学問をつけなければいけないと大学まで卒業させ、浩一の会社へと入社させたのだった。
「なんだ、そうか。独立するのなら止める訳にはいかんな。大学卒業の人間が集まってやる不動産屋なら周旋屋をやるのではないだろう。土地の開発でもやるのか。」
浩一が聞いた。
「はい、一応はこの会社で学びましたマンションの建設から始める事にしております。だから図面が出来たら社長に建設の方をお願いするつもりでおりましたが、今日現在ではまだ出来上がって来ませんので持参しておりません。でも間違いなく社長に建設はお願いします。社長に退職の了解を戴けましたら、すぐさま作業に取り掛かりますので数日内には御覧戴けると思います。」
金沢が活き活きとした顔を見せて話した。
「そうか、そうか。それはよかった。ところでマンションを建てると言っても資金はどうするのだ。目途はついているのか。」
「えぇ、仲間の一人は現在大手の銀行で貸し付け係をやっておりますので、資金関係はこの男が見て、あとの二人は不動産業者に務めておりましたから、販売を担当します。わたしが建設関係を見て、一応の態勢がとれた訳です。とりあえずは東京都内だけをテリトリーとしますが、順調に拡大できましたら大臣免許を申請して周辺の県外へも進出する計画ではおります。既に3箇所の土地の手当ては契約だけですが終わっておりますから、わたしが抜けることが出来ないのです。ご無理を申しますがよろしくご判断下さい。」
金沢が頭を下げた。
「そうか、そこまで進んでいるのか。羨ましいな。頑張ってくれよ。そんな話を聞いて俺が反対なんか出来るものか。出来る限りの応援もさせて貰おうじゃないか。」
浩一が金沢の手を取って言った。
「あっ、ありがとうございます。」
金沢が感極まったように目を潤ませて言った。
「そうなれば俺も色々と考えなくてはいけないな。ちょっと待て。」
浩一が立ち上がって社長机のうしろにある大きな金庫を開けて、札束を手づかみで持ちだし、金沢の前にデンと置いた。
「退職金なんかはあとで総務の方から出るだろうが、これは俺からの選別だ、1000万円ある。会社設立の経費ぐらいにはなるだろう、持って行きなさい。」
「えっ、そんな・・・」
金沢は声も出ないほど感激した。
「まぁ、親父さんから君まで二代に渡っての奉公をしてくれた金沢家だから、これでも少ないぐらいだが納めておいてくれ。本当に俺が必要ならいつでも手伝ってやるから言って来いよ。長い間ご苦労だったな。ありがとうよ。」
金沢が涙を溜めて浩一を見つめているが、声にならない。
「よしよし、もういいから行きなさい。俺も今から用事で出掛けなくちゃならんからな。」
金沢がうなずいて現金を自分のカバンにしまい込んで立ち上がった。
「本当に、無理ばかりを言いまして・・・・すみません・・・でした。」
最敬礼を何度も繰り返して金沢が部屋から出ていった。
「そうか、独立する奴がうちの会社から出るようになったか。」
浩一がつぶやきながら冷めたコーヒーに手を伸ばした。
数日後浩一は金沢から電話を受け、同じ社長室で金沢の連れてきた3人の男達とも向かい合った。
「先日は本当にありがとうございました。会社のメンバーも本当に喜んでおります。つきましては3棟分の図面が出来上がりましたので、社長に一番最初に見て貰おうと持参致しました。どうか御覧下さい。」
金沢が広げた大型の図面に目を落とした浩一がビックリしたように言った。
「おいおい、金沢君。これは本格的な建物じゃないかい。僕はてっきり小型のマンションから始めるものだと思っていたよ。1、2、3、・・・・・12階建て。どうして、どうして、凄い物から始めるんだね。ビックリしたよ。どうやってこんな資金が出来たのか聞きたいねぇ。」
「それにつきましては僕の方から説明します。我々ではたいした信用は有りませんので、資金集めを銀行などからやっていたのではこんな事業は出来ません。僕が銀行におりました時に考えを巡らせていたのですが、色々な資金集めのからくりが有りまして。一口で言えば、一般顧客から直接集めるという方法なんです。まぁ土地の資金程度は銀行からも借金をしていますがね。」
金沢が連れてきた吉田と名乗る男が答えた。大手の銀行に長年勤めていたと言うだけあってそれなりの貫禄も供えている。
「それにしても凄いね。これを3棟一発に着工するのかね。」
「い〜え、先日社長に話をしてからあと、更に4箇所の土地手当が出来ましたから第一回目の建築発注は7棟になる予定です。しかも販売も順調で戸数で言えば既に4棟分が完売しております。」
金沢が胸を反らせて言った。
「おいおいおい、そんなに年寄りを驚かせるものじゃないよ。そんなことが出来るものなのかね。ビックリを通り越しちゃったよ。まさかその建物総て俺にやれと言う訳じゃぁ無いんだろうな。」
「とりあえず、この3棟だけは社長にお願いするつもりです。どうかよろしくお願いいたします。」
「わかった。うちの会社の内容は君がよく知っているから暴利はとらないように積算の方に言っておく。まぁこれは任せて貰ってもいいだろう。あとの分はその流れを見せて貰ってから相談しよう。」
浩一は金沢達に押され気味の自分を感じながら言葉を継いだ。
「ところで、その資金集めのやりかたと言うのはどんなからくりなんだ?これは教えてはくれ無いわなぁ。」
「いや、社長なら問題ないでしょう。実はこれらのマンションの大半は貸しマンションなのです。買い手は住むのが目的では無く、賃貸収入を求める人々なのです。一つは参加経営システムで、一口を100万円で区切り、返済期限を3年として満期時には元金を返済します。その間利息を年率で10パーセントを支払いします。これはあくまで経営に参加する方式ですが、二つ目のシステムは普通の所有システムです。いわゆる購入されたマンションのローン返済を家賃で相殺していく方式です。これだと少ない頭金を用意するだけで入居者が支払う家賃が借金を消して行くわけですから、購入者は知らない間に資産形成が出来ていくと言うものです。だから普通のサラリーマンでも一度に数戸のマンションを購入できるのです。最後に3つ目のシステムですが別枠所有システムとして一口を1000万円とし、期限を2年間として出資して貰います。これには満期時期に元金の2割を金利として加え返済をするという方式です。この3つ目の方式で既に4億円を出資した方がおられますし、2つ目のシステムでも、まだ宣伝もしていないのに70戸が売れています。一つ目のシステムは現在、セールスマンを6人雇って戸別訪問をやらせていますが、これも約100口が契約できております。それらの御陰で土地購入に拍車がかかった次第なんです。来月からはTVでも募集を開始しますから更に資金は膨れると思いますよ。」
先の吉田が自慢そうに言った。
「なるほどねぇ。随分と頭の良い人間が揃ったものだ。」
浩一が言った。
「ところで今日は全員が揃ってお伺いしたのには訳があるのです。」
横から山口という大手不動産会社の次長だったと言う人物が声を出した。
「おいおい、改まって話されると恐いね。まさか俺にも客になれと言うんじゃないだろうね。」
浩一が空とぼけたように言った。
「いや、実際我々にとっては重要な事なのです。金沢君から話した方がいいかな。」
もう一人の別の不動産会社に勤めていたという中村が金沢に向かって言った。
「そうですね。僕の方から話しましょう。じつは社長にたってのお願いが有って全員で雁首揃えてお願いに伺った次第なんです。実は、余りにも新しい会社なので、対外的にも銀行関係にも更に顧客にも全く、海のものとも山のものとも知られておりませんで、いわゆる信用が全く無いというのが実状です。我々若輩者が何人首を揃えても信用の足し算にもなりません。会社の設立段階でそれなりの方をヘッドに迎えた方が一番早いと言う結論になったのです。そこで我々の中で白羽の矢をうち立てたのが社長なのです。別段名前だけを貸してくれと言うのでは有りません。我々の会社ごと社長の傘下に納めていただくつもりです。先程も申しましたように、資金云々では全く問題はございません。経理に関しては社長の会社とは完全に分離して頂いて結構です。いわゆる社長の名声が我々には必要なのです。どうかこの金沢を助けると考えて聞き届けては戴けないでしょうか。」
4人の男が一斉に立ち上がって最敬礼をした。
「おいおい、こんな田舎のお爺さんにそう言う事をしては駄目だよ。まぁ座り給え。話はよく判った。しかし、わたしも自分の会社を大きくするのに手一杯状態なのは金沢君がよく知っている筈だ。」
浩一が話を始めたのを制するように、
「いや、申し忘れていましたが、社長に常勤をお願いする訳では有りません。」
と金沢が言った。
「判った、判った。まぁ金沢君を含む君達が大きく事業を延ばしたいのは判る。しかし俺なんかでいいのかね。他にも有名人に頼むとか方法はありそうなものだが。」
「いえ、やはりこういった事業は、それなりの事業経験の有る方でなくてはなりません。映画俳優などでわたしが務めていた銀行にも知り合いはありますが、彼等は宣伝には使えても、事業には向きません。それは私どもではなく社長の方がお判りでしょう。」
吉田が金沢に替わって答えた。
「よし、判った。ここ2、3日時間をくれないか。その間で今まで聞いた事の考えを自分なりに整理して返事をしよう。15日の金曜日夕方にでももう一度会おう。今度は忙しい中、全員で来なくてもいいだろう。何とかいい返事が出来るように考えてみるよ。」
浩一が言った。
「ありがとうございます。それでは当日金沢に電話をさせましてからお伺いいたしますので、どうかよろしくお願い致します。」
吉田が全員を代表する形で言い、全員が立ち上がって最敬礼をした。
「いやぁ今日は楽しい勉強をさせて貰ったよ。頑張って事業を成功させてください。じゃ、次に会うときを楽しみにしているよ。」
早川浩一は彼等を送り出してため息と共に社長イスにどっかと腰を落とし、
「あの吉田という奴が首謀者みたいだな。金沢君を守ってやらなくてはならないかもしれないな。」
とつぶやいた。
約束通り金曜日の4時に金沢から電話を受けた。金沢だけが来ると言うので、築地の料亭新月で7時に会うことにした。
「社長さん、ようこそいらっしゃいませ。お連れ様はもうお着きになっておりますよ。どうぞどうぞ。」
築地では一番美人だと評判の女将が、早川を迎えた。
「おっ、こりゃどうした風の吹き回しかな。美人の女将が迎えに出るとは。景気が悪くて下足番を首にしたのか。」
「まぁ社長さんたら、いけずやわぁ。」
京都出身の女将は時たま京都弁が出てくる。
「そんなことお言いやしたら、次からはでぇしまへんえ。」
女将が先を歩き、振り返りながら早川をちょっと睨んで言った。
「ははは、冗談に決まってるだろう。睨まれたら恐い恐い。」
部屋の前に来て、女将が廊下にすわり、
「ごめんやしや。」
と言って両手で障子を滑らし、頭を下げるので、その前を通って早川は部屋へと入った。
「どうぞ、社長さん。ごゆっくり。」
女将が挨拶の後に出ていこうとしたのに、
「あっそうだ。女将、今日は忙しくて昼飯を食っとらん。ここへ座ったら急に腹が減ってきた。酒もそうだが、料理の方も早めに出して貰おうか。」
と早川が言った。
「はい、板さんにそのように言いつけます。ほな、ごゆっくり。」
女将が出て行ったので、金沢が座っていた座布団をずらして頭を下げて言った。
「お忙しいところ本当に無理を申しまして申し訳ございません。」
「まぁまぁ、気持ちの上での裃は脱ぎ捨てて、気楽に飯に付き合うつもりで飲もうよ。それよりか販売の方は順調に進んでいるのかい。」
早川の言葉で座布団に座り直した金沢が言った。
「はい、ありがとうございます。あれからも出資者の集まりはかなり増えておりますし、分譲の方も順調です。」
「そうそう、そこで問題じゃよ。いったい1棟のマンションで何人の出資者をとるつもりなんだ。家賃との関連も有るから計算はしているのだろう。」
早川の言葉で、金沢がカバンを引き寄せて書類を取り出そうとした。
「よせよせ、ここは会社じゃないんだから、堅苦しい話の仕方はやめにしよう。酒の上での話しに書類は必要ない。」
「はい、判りました。どうもすみません。」
金沢が謝って、頭を下げた時に、仲居が二人で酒と料理を運んできた。
「おぅ、待ちくたびれたぞ。腹が減って前の皮と後の皮とがくっついてキッスをしているぞ。」
早川がお腹をさすりながら仲居に言った。
「まぁまぁ、社長さんはご冗談がお好きですなぁ。そのお腹でしたら皮の厚みが凄いですね。ほほほ。」
「あっ、多恵ちゃん、言ったな。知ってるかい、天は二物を与えずって言葉を知っているだろう。見て見ろ、多恵ちゃんが言うように、腹の皮は厚い、だからその反動で面の皮が薄いだろう。だから可哀想にいつも、こんな所で多恵ちゃんみたいな美人にいじめられて泣いているんだよ。よよよよ。」
早川が泣き真似をしながら仲居に言った。
「まぁまぁ、社長さん。馬鹿なことを言って。どんな顔してそんな事が言えるんですか。ちょっと顔をみてみましょう。」
仲居が社長の顔に自分の顔を近づけた。
「うわぁ、恐い。多恵ちゃんに又貞操を狙われた。」
と、早川が驚いた顔をあげた。
「まぁ、何が貞操なもんですか、あっちでもこっちでも女を泣かしているんでしょうに。」
仲居がすねたような振る舞いでかるく早川のひざを叩いて言った。
「あっ、多恵ちゃん。それは間違っている。僕はな、女を喜ばす事はしても泣かしはしないんだよ。」
「まぁ、社長さんたら。そんなことどうでもいいでしょ。お料理は本当に全部並べてもよろしいんですか。」
仲居が本来の仕事を意識して言った。
「あぁ、本当に腹が減っているんだ。全部並べてくれていいから。」
「そんなことしたら、旅館の夕食みたいになってしまいますよ。」
「いいんだ、いいんだ。その方があんた方も楽だろう。酒もあと2本ずつ持ってきてくれ。全部持ってきたら、あとはこっちでやるから誰も来なくて良いからね。」
早川が釘をさして仲居を帰した。
「さぁ、まずは一杯いこうか。」
早川が差し出す徳利を金沢は手で制して、
「あっ、気がつきませんですみません。まずは社長から。」
と言い、早川の持つ徳利を取り上げ早川に勧めた。
「さて、仲居を相手に口慣らしも出来た事だし、飯を食いながら話をしようか。さぁ、さっきの答えはどうなっている。」
早川が言ったので金沢は口元へ運んでいた猪口を置いて答えた。
「はい、計画では一戸あたり20口と計算していたのですが、出資者としての希望者が多いので現在は全く無視しています。いわゆる売れれば売れるだけ売ろうと言うことです。だから余剰資金が出来たらすぐ次のマンションの計画に入ると言う考え方に変わってきました。いわゆる100億集まれば100億のマンション。1000億集まれば1000億と言う風にフレキシブルに考えて行こうとなったのです。」
「そうか、なるほどな。それで急に建設棟数を増やしたんだな。」
「そうです。実際売れ行きが悪ければそう容易く棟数を増やせる訳では有りませんから。」
「そうか。と言うことは俺としたらマンション建設の注文がうちの会社に入ってくる数をみていれば俺が常勤しなくても会社の状態をみることが出来る訳だ。」
「そうです、そうです。営業を100人ぐらいに増やす計画ですので、現在の本社を少し広げようとしております。その時には、社長がたまに覗いてみようかなと思われたらいつでも来られるように社長室も作ります。」
「よし、判った。社長を引き受ける一つの条件は、総ての建設、もし本社社屋を建てる時でも、大から小に至るまで俺の早川建設に発注する事。それから俺の代行としての人間を一人取締役に加えること。彼には常勤させる。その二つの条件で引き受けるがどうだ。」
早川が酒を飲みながら、食事に箸を運びながら、淡々と話した。
「ありがとうございます。これで我々は助かります。更に事業を大きくする事が出来るというものです。本当にありがとうございます。」
金沢が箸を置いて、テーブルに頭をこすりつけるようにして礼を言った。
「待て待て、お前は何を言っているんだ。まだお前の方の返事を聞いていないぞ。」
早川が手で制して言った。
「いえ、その条件は我々が予想していた条件ですので全く問題が無いと言う事です。」




