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第二十四章  逃避行


第二十四章  逃避行



 大船碇禎治はジュネーブ空港へと降りた。ヨーロッパへは2度来たことはある。しかしスイスへは始めての旅だ。息子の亀井靖之が大船碇禎治本人のサインが無ければ口座の開設も出来ないし、入れた金も引き出せないと言うから仕方なく来ただけで、住むのはやはりオーストラリアのゴールドコーストにしたい。

 既に息子の名義で自分用にとゴールドコーストで、少し北の外れにはなるが、サンクチュアリーコーブと言う名の大きな団地の一角でウオーターフロントの家を購入していると聞いている。そこは24時間警備体制が出来ており、2名の警備員が入り口で常時入場者をチェックしていると言う。いわば不要な人物は団地内には入れないシステムだ。大船碇禎治のような逃げている人間には最適な環境である。住宅のすぐ裏側には自分専用のクルーザーを係留出来るジェティーと呼ばれる桟橋もあり、必要なら30フィート程度のクルーザーも買っておくと靖之は言っていた。だから逃げてはいるが必要以上に心を狭めて生活する必要は無い。金を使っての楽しい人生を過ごせば良いのだ。よしクルーザーも乗るか。

「いらっしゃい。元気そうだね親父。」

 アライバルターミナルのゲートを出た所で亀井靖之が迎えた。

「まぁ、オーストラリアへ行くよりか少し飛行機に乗る時間が長いと言うだけだから心配する事は無い。それよりかファーストクラスのイスがよかったぜ。寝るのに今までのイスだと少しは傾斜が出来るけれど、今日のは全くベッドのように平になるんだ。だからぐっすり眠る事ができた。」

 スイスへ入ったと言う安心感からか大船碇禎治ははしゃぎ気味で言った。


 スイス銀行の口座を大船碇禎治から電話で教えられたヤスは、早速その日の内にその口座へと15億円を送金した。受け取った資金を大船碇禎治は靖之と共に、ヨーロッパ各地の銀行に作った亀井靖之の口座へと分散させて送金した。5日間程の滞在でそれらの作業を終えた靖之はオーストラリアへ、大船碇禎治はイギリスへと旅立った。

「じゃ、ロンドンへ降り立ったら、俺が頼んである通訳が迎えに出ているから心配無い。そいつには親父の写真を渡してあるから、向こうから接触してくる事になっている。昨日も言ったとおりゴールドコーストでの再会を半年後と言うのは長すぎる。日本とオーストラリアの状況を俺が見て連絡をするから、それまではゆっくりとヨーロッパを楽しむこったな。」

 靖之が税関へと入る大船碇禎治に言った。

「おう、判った。お前も気をつけろよ。」

 大船碇禎治は言葉も少なく飛行機へと消えた。その数時間後には靖之もシドニー行き英国航空機の中にいた。

「何とか段取りは出来上がった。あんな親父でも親父だからな。長くは無い寿命でも、生きられる限りは生きていられるようにはしてやりたい。それが俺のために苦労して金を残してくれた親父への孝行だ。金はベースだ。多ければ多いほどその基礎となる位置を高く出来る。そのベースが無い奴は地べたを這って生きる。ベースが高ければ、その位置から物事を考える事も出来るし、命令も出来る。上から見る事が出来るから仕事の範囲も広げる事が可能だ。そう言って俺の為に金を集めてくれた。この15億を加えると既に俺の手中には50億円もの資金が出来た訳だ。これだけの金が有れば大船碇組を再構築する事も出来る。しかし俺はそんなことに金を使わない。世界を相手に仕事をしたい。・・・・」

 靖之は眠りに就いた。




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