第十四章 大陸一周旅行
第十四章 大陸一周旅行
「いやぁ、香山さん1年は難しいですね。あっちうろうろ、こっちうろうろして時間をつぶしても車で走る分には時間が過ぎ去るより先に目的地に着いて、時間が余って仕方が無かったですよ。」
8ヶ月を経過してゴールドコーストへと帰ってきた小野原勉が香山に言った。
「そうでしょう、幾ら広大なオーストラリア大陸と言えども、自動車と言う文明の利器を使えば早ければ1ヶ月で走り抜けられますからね。所で恐竜の発掘はどこかでやってみましたか。」
「はい、走っていると結構何かを掘った跡地みたいなのが見受けられましたので、その都度いちいち車を寄せて穴へと入って行き調べてきましたよ。香山さんに聞かされていたパースの博物館で館長さんにも会えましたし、2週間程毎日通いました。あそこは凄いですね。毎日行って飽きませんでしたからね。それにしても、やっぱりオーストラリアは広いですね。実感しました。香山さんに聞いていた地平線や、三角道路の話は実際のところ想像が出来なかったのですが、現実に行って見るとやはりビックリしました。ブルームで月の階段なんかも見てきましたよ。あそこは結構日本人が居ますね。月の階段を見ている時に、日本人の若者男女5名がみすぼらしい車に乗り合わせて来ていまして、わたしの泊まっているモーテルの庭でバーベキューをして久し振りの日本語を楽しみました。日本で生活していると全く縁の無い事が非常に多くて、数限りないファーストエキスペリエンスを経験させてもらいました。」
その後、延々と小野原勉の体験談が繰り広げられ夜の明ける頃、 それぞれの部屋へ入り眠りに就いた。翌日、2台の車を連ねて香山の山荘へと向かった。
「ゴールドコーストも良いですけれど、オーストラリアを一周してきてから見たこのダルビーは身近に親しみを持つ事が出来ます。楽しみだなぁ。いよいよ本格的な建設と恐竜探索が楽しめますね。」
山荘に着いて改めて乾杯の時だ。小野原勉がしみじみと言った。
「さぁ明日から材木の切り出しに裏の森へ入りますよ。裏の森はワンダーフォレストと名付けましてね。約5万坪程あるのですが、何度入っても方角を間違えるものですからワンダーフォレスト。つまり不思議の森ですな。あとで長いこと使っていないチェーンソーのチェックもしておきます。」
いよいよ小野原勉の山荘を香山の山荘のある敷地内に建てる作業に取り掛かるのだ。小野原勉は子供時代、学校の遠足を待つ前夜のような気持ちでベッドに入った。