青鬼と鏡~あるお坊さんのおはなし~
あるところに、お話し好きのお坊さんがいました。
そのお坊さんはとても大人しい性格でしたので、近所のいたずらっ子たちはよくお坊さんをからかって遊びました。
♢♢♢
その日もお坊さんはいつものように、お寺の庭をほうきで掃いていました。
すると子供たちがやってきて、お坊さんをからかいます。
「やーい。ぼうず、ぼうず。はげぼうず」
お坊さんは困ってしまい、一計を講じました。
「これこれ子供たち。そのように人をからかって遊んではなりませんよ」
「うるさーい」
「おはなしぼうず、はげぼうず」
お坊さんはやれやれ、と顔を左右に振ります。
「まったく……」
それでは、と、お坊さんは子供たちに尋ねます。
「あなたたちは『鬼に衣』ということわざを知っていますか?」
「しらない」
「しらなーい」
子供たちは石を投げながら、退屈そうに答えます。
「知りませんか、そうですか」
お坊さんは愉快そうに笑うと、子供たちを自分の近くに集めます。
そしてあるお話を始めました。
♢♢♢
――むかしむかしあるところに、赤い鬼と青い鬼がいたそうです。
赤い鬼は恐ろしい乱暴者で、青い鬼は泣き虫、弱虫。
これは、ある青鬼とひとつの鏡のお話です――。
その青鬼は、泣き虫、弱虫でしたから、他の青鬼たちにいじめられておりました。
でも青鬼は大切にしている鏡を持っておりましたので、その鏡に向かって、自分はどうすればよいか、と相談をしました。
すると鏡の中の青鬼は、「どんどん悪いことをしなさい」と言いましたので、
青鬼は鏡に言われた通り、たくさんの悪いことをしました。
すると、青鬼の頭には、恐ろしい角が生えました。
他の青鬼たちはその角が恐いので、みんなどこかへ逃げていってしまいました。
誰もいなくなってしまい悲しくなった青鬼は、もういちど鏡に相談をしました。
すると鏡の中の青鬼は、「どんどんよいことをしなさい」と言いましたので、
青鬼は鏡に言われた通り、たくさんのよい行いをしました。
すると、青鬼の頭に生えていた恐ろしい角がぽっきり折れて、消えました。
角が消えた青鬼は、また、他の青鬼たちにいじめられるようになりました。
怒った青鬼は、大切にしていた鏡を、叩き割ってしまいました。
ですが鏡を割ってしまうと、もう角が生えることはありません。
困った青鬼は、割った鏡のかけらを拾い集めて、くっつけました。
そして覗き込んだ鏡の中には、恐ろしい角の生えた赤鬼がおりました。
それは青鬼の中にある、恐ろしい心が映し出されたものでした。
その赤鬼は鏡の中で、今か今かと、暴れる時を待っているといいます……。
♢♢♢
お坊さんは語り終えると、子供たちに大きな声で言いました。
「その赤鬼とはなぁ……私のことじゃ~!」
「きゃあぁー!!」
驚いたいたずらっ子たちは、蜘蛛の子を散らすように逃げ出しました。
「やれやれ……」
お坊さんはまた、ほうきで庭を掃きはじめました。




