5-2
帰った初日は寺でゆっくりとすごした。
夜には祖父である天女目鳫穐に「明日、朝いちで行くから」と連絡。
明日からが本題だ。
翌朝、早すぎる時間に目が覚めてしまった。
それからは横になっていても目がさえてくるだけ。
そんなに急ぐ必要はないのに朝食後に慌ただしく出発。
祖父は住職を退いている。
今は隣の長井市で暮らしている。
家にある車を借りて出発。
天女目の一族は寺に関係のない者は長井市に多く住んでいる。
だから祖父も引退してから祖母と一緒に長井市に移り住むことになった。
親戚が多いので安心だ。
「なんだ、もう帰ってきたのか?
それにしても変な時に帰ってきたな」
鳫穐が不思議に思うのも無理はない。
普通なら一族が集まるのは盆明けだ。
寺という関係上どうしても盆休みの間はさけることになる。
だから落ちつけるのが盆明けになる。
道命は祖父から聞かされた話を覚えている。
城上寺の成り立ちは知らないが普通の寺ではないといったことを祖父の鳫穐は言っていた。
その鳫穐も祖父から同じようなことを伝え聞いていた。
寺の名称は城上というが特に意味はないらしい。
それよりも寺としての目的のことだ。
大々、妖の者と戦ってきた僧兵であったといった歴史があるらしい。
鳫穐が住職になった時は戦うといったことはいっさいなかった。
戦うための武器、神器といった類も寺にあるわけではない。
その代わり「妖」に対抗するための秘伝のものがある。
それが城上寺にある大樹。
なんの樹でいつからあるものなのかはわからない。
その1本の大樹を守るためにある城上寺は長野県かられん座したとされている。
その大樹は紫色の葉がつくので「紫色の大樹」と呼んでいる。
そのままなんだが樹齢数百年、500年を超えてるかもしれない?
寺が守りたいのはその大樹の樹液。
これは祖父の鳫穐から聞かされた話。
その鳫穐も祖父から伝え聞いた話。
その樹液を飲めば鬼人化できるという言い伝え。
祖父も話半分以下で聞いていたらしくて試したこともないそうだ。
また使用したという記録も見たことがないらしい。
「突然きたと思ったら急にそんな話か···」
鳫穐は少しばかりあきれている。
昔、確かにそんな話をしたことがあったかもしれない。
それ以降そんなことが話題になったことは1度もない。
寺のあとを継いでくれと思ったこともないし言った覚えもない。
好きなことをやればいいと思ってたらまさかの防衛大学に入ってそのまま自衛官になった。
順調にいってると思った。
自衛隊で順調ってのもどうかとは思うが、これまではなんとかなってたんだろう。
どうしようもなくなったから大樹の話を持ち出してきたと考えるべきか?




