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川上幕僚長との会見から1週間がすぎた。
強力な装備品を取り上げられた。
例えていうなら毒ヘビで牙をもがれて普通のヘビに弱体化したようなものだ。
新しい武装どころか次の作戦の予定もない。
そのため隊員の増員の話も断ちぎれになっている。
はっきりとした予定としては日々の基礎訓練のみ。
それにしても川上幕僚長の言動の変化はどうしたもんだろう?
新武装の不具合の説明なども目が泳いでいた。
全体的におかしいと敏感に気づいていた。
対吸血鬼に関しては誰よりも前向きで推進派だった。
それが急に後退してしまっているようだ。
裏でなにかがあった?
ちょうどいい機会なので前々から考えてたことを実行に移そうと思い有給休暇の申請を行った。
ずっと帰ることもできなかった実家に戻ることにする。
31歳になるが独身なのでフットワークが軽い。
ただ帰るというわけではない。
帰るだけの目的もある。
かなり強引に提出して認めさせた有給休暇の初日の午前中に出発した。
天女目は防衛大学出身で入隊している。
3佐という階級で30歳も超えているので独り暮らしは許可される。
だがあえて松戸駐屯地内で暮らしていた。
現在は吸血鬼対策特別機関「怒雷組」に移ったため市ケ谷駐屯地内に引越している。
通常の自衛隊員としての任務ということではないので駐屯地内で暮らしていたほうが都合がよいといった判断からだ。
ここにいれば24時間体制で吸血鬼と戦いやすいと思ってのことだ。
外で暮らすよりは作戦行動に移るまでのロスタイムを減らせるからだ。
それに食事のことから日常生活においてが便利なこともある。
天女目の実家は山形県の西置賜郡にある白滝町。
黒鴨と呼ばれる地域にある城上寺というお寺。
元は長野県にあったとされるがれん座(寺が移動すること)して山形県に移っている。
なんでも「あやかしの寺」として江戸時代には有名であったとか。
移転してきた理由はある目的があったとされる。
そしてこの黒鴨という土地には化け石、夜泣き松、死人森などと妖しげな伝承が残っている。
その日の昼すぎには城上寺に着いた。
午後2時をすぎたところだ。
途中でお昼にしてゆっくり戻ってきたのでちょうどよい時間だ。
今は父親が24代目住職。
24代ともなるとものすごく長く続いてるようでもあるが実はそうでもない。
中には継いで1年ほどで亡くなったりしてる住職もいたりするのでとんでもなく長く続いてるってわけではなさそうだ。
なさそうだというのはいったいいつから寺の歴史が始まったのかがはっきりとしてない。
引越のどさくさでよくわからなくなったというのが正解のようだ。
24代となっているが怪しいものだ。
自分の家を疑うつもりはないがなかなか謎の多い寺だと思う。




