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Blood Times-吸血鬼たちの小夜曲(セレナーデ)  作者: 弁財天睦月
闇夜のその先

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3-10

それだけ聞くと川上は黙るしかなかった。

つまりそういうことだ。

人質にとられた。

そうなると娘だけではなく家族全員が狙われてるってことになる。

和久井大臣もそういうことなのか?

それにプラスして政治献金まで受けている?

思ったよりもずっと巧妙にずる賢しこく吸血鬼たちはこの国の政界に食い込んでいるのかもしれない。

あまりにも甘く考えていて迂闊だった。

もっともっと細心の注意を払っておくべきだった。

後悔してもすでに遅い。

自衛隊のトップにいても政治や経済には疎い。

裏工作的なこともほとんど無縁だ。

これじゃ吸血鬼たちにまともに対抗できない。

軍事的な力だけじゃなく政治力も絶対に必要になる。

吸血鬼の実態を知らなすぎた。


「我々が望むことはたったひとつ。

シンプルなものだ。

我々の活動には関与しない。

簡単なことだろ」


これが最後の忠告だというようにウィッカー少佐が締めくくった。

和久井は「わかってます」と即座に応えている。

決して反論などしない。

川上は言い(よど)んだ。

吸血鬼なんかに屈しないという覚悟はある。

だが家族の命がかかってしまったとなると···


「その隊員はどうなるんだ?」


どうにかそれだけは言えた。

声が上ずってたかもしれない。

あの若い隊員は脊髄の神経を壊されたとあってはもうまともな日常生活も送れないだろう。

どこまで治療できるのかもわからない。

一生寝たきりか?


「この状態でも死ぬことはない。

我々で世話をすることになる」


天童副隊長が代表して応えた。

どこまで信用できるかわからない。

具体的にはどうするんだと不安がある。

嫌な予感と吐き気がするほどの嫌悪しか今の川上にはない。

ここで独りで暴れても犬死にだ。

グッと耐えるしかない。


天童の言ってることは本当のことだ。

しっかりと世話はする。

血液提供用の養殖としてだが。

役に立たなくなったらその時は処分する。


震えがおさまらない和久井大臣とともに川上幕僚長も無事に戻されることになった。

捕らえられた無傷の自衛隊員を含む3人はいわば人質のような形で残された。

川上は頭が痛い苦悩を抱え込むことになった。

人質がいる。

その中には自身の家族も含まれる。

あの儀式のような「神経を壊す」といったデモンストレーションを見せつけられたのは逆らうとお前も家族もこうなるぞといった警告なんだろう。

それを目の前で見せることによって恐怖や不安、混乱を植えつけるといった魂胆だ。

それはみえみえでわかってはいるが「受け入れざるを得ない」のほうに気持ちが傾いている、

そうしないと家族が人質が···


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