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これでこの若い自衛隊員は一生涯自力では動けない。
動けるようになるためにはひとつだけ方法がある。
眷属になることだ。
だがそんなことをするつもりはさらさらない。
これも貴重な血液提供用のブロイラーにするつもりだ。
ニマァと笑ったリリー幸田が不気味で気持ち悪い。
暴力を心底楽しんでるんだろう。
そしてさらなる惨劇が起こってしまった。
ドンっとなにかが床に落ちた音。
それが2回。
なんだと川上が足元を見た。
それがなにかわからなかった。
というより理解するのを拒否していたようだ。
ひやあぁぁぁっと最初に悲鳴を上げたのは和久井大臣。
続けて秘書の森田。
川上はグッと唸り声までで抑えた。
自衛隊の幕僚長たるものあまりにもな状況にあっても悲鳴は出さないといった自負はある。
床にゴロンと転がっているのは生首。
2人のSPの首だ。
首から下は床に崩折れた。
切断面は綺麗な斬り口。
まるでレーザー光線で切断したみたいだ。
2人の遺体の側に立ってる男。
いつ現れた?
異様な風貌だ。
細すぎる。
人間の細さじゃない。
胸囲、ウエスト30センチといったところか?
こいつも吸血鬼?
2メートルは超えてるだろう枯れ木のような不気味さがある。
こいつが2人のSPの首を撥ねた?
「邪魔な人間は処分させてもらった。
秘密というのは知ってる人数が少なくなるほど外部に漏れることも少なくなる。
だから必要ないと思われる邪魔者は処分させてもらった」
ウィッカー少佐は当然のことだろとでもつけ加えたいように強い言葉で言って和久井、森田、川上の3人を順に見ていった。
完全に怯えているのは和久井と森田。
2人とも両膝が大きく笑っている。
外からは見えてないが和久井大臣はさらにションベンを漏らしている。
「こんなことで我々が···」
川上が言い終わる前に天童副隊長が川上の目の前に腕を伸ばした。
1枚の写真を見せつけられた。
川上の次の言葉も動きも止まった。
食い入るように写真を凝視することになった。
「川上天、26歳。
今はデザイン事務所で働いている。
将来は独立希望」




