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リリー幸田からそれだけの前置きがあった。
そして押さえつけられている自衛隊員の頭側に回った。
リリーが右手を上げた。
人間たちは異様な光景を見た。
リリー幸田の爪の間からニュルっと細いものが出てきたのが見える。
本来は光の加減によっては見えにくくなるほど細い糸だが人間たちに見えやすくするためにわざと束にしている。
川上幕僚長と新しく警護につくことになったSPの2名は吸血鬼の異質な能力を実際に目の前で見るのは初めてだ。
リリー幸田は右手の5本の指先から出している糸を引っ込めた。
今のはいったいなんだと川上は黙って見ていた。
リリーは続けている。
マジシャンがよくやるように右手の表と裏を見せつけてきた。
なにをするつもりだ、このバケモノはと川上は見ていた。
この状況を打破するはためにはどうすればいいとも考えていた。
防衛大臣に話があると車に乗せられたのが間違いだった。
もっと警戒しなければならなかった。
和久井が吸血鬼と通じてる仲だとは思ってもなかった。
リリーは自衛隊員の首の後ろに人差し指を当てた。
そのままツ〜っと指を首から背中へと移動させた。
その仕種はもったいぶっている。
本人は楽しんでるようだ。
突然だ。
突然にグギイィィィと絶叫が室内に響き渡った。
悲鳴ではなく大絶叫。
全裸にされている若い自衛隊員からだ。
体を拘束されている上に2人の吸血鬼に両肩と足を押さえつけられているので身動きできないでいる。
そのため腰のあたりを中心にして全身がビクンビクンと上下にバウンドしている。
リリーの指先は右に左へと忙しなく動いている。
人間たちに見せつけるためわざと大きな動きをしている。
それを見て絶叫を耳にした和久井大臣と森田は完全に怯えて腰が引けている。
特に和久井大臣は膝が前後にガックンガックンと動いている。
「おい、なにをしてるんだ?
やめろ」
SPの1人がたまらず大声を上げた。
その言葉を待っていたかのようにリリーがニンマリとした顔を向けた。
かなり薄気味悪い。
「魚、知ってますよね。
神経締めって知ってますか?
魚の鮮度を保つために脊髄の神経を壊す。
血抜きもしなきゃいけない」




