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ウィッカー少佐は端正な顔立ちだ。
反面、冷たい印象もある。
「それは···
その···」
川上幕僚長が非常に驚いた目を向けている。
政治献金?
まさか防衛大臣と吸血鬼どもが裏でつながっていた?
寝耳に水の話だ。
「我々の活動に口をはさまない。
そういうことで話はまとまったはず。
そのためにこちらもまとまった金額を渡している。
違いますか?」
「そ、それはわかっていますが···
何があったのでしょうか?
詳しく教えていただがないと···」
「あぁ、そういうこと、知らなかった?
事前に知らされてなかった。
報告さえも受けてなかった。
そういうことか···」
「川上幕僚長、何があった?
何をした?」
和久井大臣は一瞬で血相を変えている。
防衛大臣である自分の承諾なしで自衛隊が勝手に動いたのか?
それともうひとつ、使途が曖昧な360億円という巨額の費用が上がってきているのだが、これは何だと自衛隊幹部である川上幕僚長に問いただしたかった。
これもまったく知らなかったことだ。
事後承諾だという形になって数字だけが出てきた。
なにひとつ相談がなかった。
「協定を結んでただろ。
それなのにいきない襲いかかってきた」
それまで黙っていた天童華鈴中尉が冷静な声を上げた。
怒ってるわけでもないのだが逆に気持ち悪さがある。
また和久井大臣が非難する目を川上幕僚長に向ける。
秘書の森田も驚いている。
「勝手にやったのか?
そんなことは何も聞かされてないが···」
和久井大臣の怒りを抑えた声が室内に響く。
しばらくは無言の状態が続く。
「まぁ、こちらとしてはいい運動になった、といった程度だったんだがな。
残念ながらってのは何人くらいだ?」
ウィッカー少佐が隣に座っている天童華鈴副隊長に尋ねる。
余裕を垣間見せる態度と声音だ。




