2-9
グレゴール博士は月読に近づいていった。
どんな毒が使われたのかがわかれば解毒の方法もあるのだが調べてからということになればかなりの時間がかかりそうだと思案しながら。
3メートルほどの高さにいたつぐみがグレゴール博士の視線の高さにまで降りてきた。
「時間はかかるが大丈夫。
回復する」
グレゴール博士には確かに聞こえた。
倒れている月読からではなかった。
となると、まさか?
「君なのか?
君は話せるのか?」
「違う。
ぼくは物理的な会話ができない。
その代わりグレゴール博士の頭の中に直接話しかけている」
なるほど、そういうことかと理解した。
見た目は赤ん坊、中身は超能力者。
いったいどれだけの能力を持ってる?
「ここではつらいだろう。
家の中で休ませよう。
お〜い、手伝ってくれ」
グレゴール博士はドアの外にいるポンペイに声をかけた。
ポンペイは人の言葉がわかるようだ。
屋内へ入っていった。
なにか持ってくるつもりらしい。
「それにはおよびません。
ぼくが運びます。
しばらくの間、またおじゃまします」
その前にとグレゴール博士の頭の中に聞こえた。
空気振動の会話よりも鮮明に聞こえる。
そのグレゴール博士はまたもや超能力の脅威をまざまざと見せつけられることになった。
路上にある吸血鬼の遺体などを燃やすためにあたり一面が一瞬で大火事になった。
つぐみが豪華な「業火大炎上」を発生させた。
路上にある遺体はつぐみによってすべて火葬された。
痕跡を残さないようにするため。
大火が消えたのを確認してからつぐみが月読を運ぶことになる。
物理的にではなくテレキネシスをつかってのことなので音もなくスムーズに月読は運ばれていく。
人を運ぶための担架を引きずってきていたポンペイが浮いている月読を見て驚いている。
担架はこの家に常備されているものだ。
例えばたが、片腕が失われたり頭を吹き飛ばされても月読の再生能力ならすぐにでも復活してしまう。
ただ毒などには非常に弱い。
死ぬことはないのだが完全復活には時間を要する。
吸血鬼の源である血が汚されてしまうことには弱い。
吸血鬼全員にいえることなのだが血液汚染があると弱体化してしまう。
そのためむやみに人間の血液を飲むことはやめておくべきとされている。
特に現代はそうなる。
例えば喫煙、病気などによる薬の飲用、病気などではない薬の乱用。
これは覚醒剤などのことだ。
血液が汚れまくっている。
そのような人間は生きている価値もない。
殺すべきだと大半の吸血鬼はそう考えている。
実際にそうしてる者も多い。
やはり血液製造工場で純粋に飼育された人間の血を飲むに限るということだ。
牛を育てて美味い牛肉を食べるといった人間がやってることと同じだ。




