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「これは何だ?」
吉野が小声で発した。
医療関係のことにはズブの素人だが手術室のような光景が目の前にあることは理解できる。
嫌な予感しかない。
川上幕僚長からは吸血鬼たちの施設だとしか聞かされてない。
具体的なことはよくわかってないということだった。
吸血鬼のなんらかの施設であることは間違いないということだけだ。
「これは何でしょう?」
隊員の1人が見つけたもの。
血液パック。
吸血鬼は血液パックを利用してる?
それにしても大量にある。
ハンガーのようなものにズラッと吊り下げられている。
それを見た隊員の1人から気になる発言があった。
血液パックの大きさが違う。
それにパックの素材も違うと言っている。
実際に本物を見たことがあるということだ。
本物とは違ってるというのは吉野としても気になる発言だ。
それにしても静かだ。
ここまで入ってきて3分はすぎている。
なんの反応もないってことは吸血鬼はいないのか?
後攻チームは階段で2階へ移動している。
荒木信長室長が率いている。
銃口を前方に向けてゆっくりと進んでいく。
2階フロアに出た。
後攻チーム13名はまとまって動いていく。
突然だった。
すべての隊員がギョっとした。
静寂だった2階フロアで確かに全員が耳にした。
あまりにも場違いな声。
赤ちゃんの泣き声。
普段なら微笑ましく聞こえる泣き声もこんな場所でこんな状況下で聞いてしまうと怯えしかない。
中には思わず隊員同士で見合わせてしまう者たちもいた。
そしてさらに慎重な足取りで泣き声がする場所を目指して進んでいくことになる。
「この部屋からです」
先に進む隊員が泣き声が聞こえる部屋のドアの前で立ち止まった。
よしと合図。
3、2、1でドアをそっと開ける。
この部屋には薄明かりがある。
隊員たちがまっ先に目にしたのは保育器。
調べてみると2人の赤ちゃんがいる。
男の子か女の子かまではわからない。
「これは、どういうことだ?」
荒木の問いかけに答えられ隊員はいない。
隊員の1人が保育器の中を覗き込もうとしたその時。




