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行ってくると言い残し荒木室長は車外に出た。
後発隊の隊員を招集して廃棄された障害者施設に向かう。
小さな爆発音は聞こえていた。
少量のプラスティック爆薬で十分だった。
正面ドアは、おそらく吸血鬼が真夜中に出入りしてるんだろう。
他と比べると「戸締まり」が緩い。
先攻する12名のチームが順に建物内に入っていった。
予想通り建物内は暗闇。
紫外線対策はバッチリってわけかと吉野1尉はまっ暗な室内を見渡した。
今回はこういうことになってるだろうと考えられていたので個人暗視眼鏡JAVN-V6を装備している。
吸血鬼ほどではないだろうが暗闇でも行動できるようになるのは非常に助かる。
陸上自衛隊では主に航空機のパイロットが使用している。
国産で日本電気製になる。
国産だとメインで使用している20式5·56ミリ小銃も豊和工業製品。
装弾数は30。
今回は大量の弾丸を持ってきている。
いくら吸血鬼といっても不死身ではないはず。
大量の弾丸を全身に浴びせれば確実に死にいたる。
建物は4階建て。
先攻チームは1階をくまなく探索することになる。
入口ドアを入るとエントランス。
事前に館内の各階のことは頭に入れている。
1階は管理事務室があって支援する人たちの部屋があった。
今はどうなってるのかわからない。
2階は浴室や介護のための部屋。
3階には食堂があって入所者の部屋。
4階は運動場や入所者の部屋といった施設だったようだ。
これは隊員全員が事前のレクチャーを受けている。
吉野が他の隊員たちに右手で進めと合図を送る。
ここからはなるべく話さないで手で合図を送っていくことになる。
隊員たちはアサルトライフルの銃口を進行方向に合わせて少しずつ進んでいく。
緊張と恐怖で手が汗ばんでいる者もいる。
余計な物音を立てないように用心深く1歩ずつ進んでいく。
いくつかのドアがある。
受付があってそのすぐ隣に奥に続く廊下がある。
右手側にドアが並んでいる。
左側は窓になっていて外につながっている。
もっともその窓は内側から厳重に鉄板が打ちつけられている。
太陽光の侵入を防ぐことと外部から侵入をさせないようにということだろう。
まず最も近いドアから開けていく。
隊員の1人が合図とともにドアを開けた。
待ち構えていた隊員たちがアサルトライフルを発射態勢に構えたまま次々と突入。
中に入ると広い。
広すぎる。
隣接する部屋をひとつにするために壁を撤去してるんだとすぐわかった。




