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3台のバスが向かう先は渋谷区。
JR原宿駅前の竹下通りをまっすぐ進んでいくと明治通りに出る。
北東の方角、JR千駄ヶ谷駅方向に進んでいく。
5分も歩くと原宿通りに入る道路がある。
その先にある障害者のための施設の跡地が目的地になる。
使われてない施設だが建物はそっくりそのまま残っている。
自衛隊員を乗せたバスが建物の近くで停車したのが午前9時17分。
月読たちが山梨県忍野村を訪れた日のちょうど1ヶ月前の出来事。
作戦行動は素早く。
先攻する12名が建物の正面ドアに向かう。
思った通り開かない。
先攻するチームのリーダーは吉野昭彦1尉。
正面から強引にいくか別のルートを探すか?
迅速で的確な判断が求められる。
「正面からは入りにくいな。
建物を回ってみてくれ。
どこか入りやすいところがないかを探してみたほうがいいだろう」
隊員の2名が右側、2名が左側に調べにいくことになった。
その間、吉野は建物の見える限りの窓に視線を動かしていった。
すべての窓がカーテンによって厳重に閉じられている。
外部から陽の光が入らないように補強もされてる可能性もある。
1階の窓からって手もあるがなるべく物音を立てたくない。
侵入するためには極力気づかれたくない。
周辺の住民に対してでもあるし先制攻撃を仕掛けるためでもある。
調べに回った隊員たちはすぐ戻ってきた。
外から簡単に入れそうな場所がない。
無理にでもということであれば可能だろうが確実に内部にいるであろう吸血鬼には気づかれることになると報告を受けた。
吉野は荒木2佐に報告。
どうするのかの指示を仰ぐことになった。
荒木室長はバスの中にいた。
内部は改装されていて各人が装備しているカメラのモニターがズラリとある。
通信に関してはインカムを使用している。
この室内は2人のオペレーターで管理している。
本来なら外部との連携を取ることもやらなければならないのだが極秘作戦のためそれはできない。
初陣であるのだがそれほど大規模な作戦ではない。
隊員たちは吸血鬼との実戦経験はない。
実際にどれほどの脅威なのかはわからない。
情報としては内部には数人しかいないということなのだが。
「正面ドアから入ることにしよう。
ドアが開けられる程度の小さな爆発で十分だろう。
ゆっくりしてられない。
少々強引にでも突入しよう」




