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「誰かに殴られた?」
月読はストレートに訊いた。
殴ったのはおそらく親だと見当はついているがあえて訊いてみた。
そしてまた関わってしまった。
人間でいる時なら声をかけることはなかったかもしれない。
吸血鬼化してしまうと「もの好き」と「おせっかい」が出てしまう。
不死身のバケモノになってしまえば怖いものなどなにもない。
だからかもしれない。
本来の性格が素直に出てしまうのが本来の姿である吸血鬼になった時。
そういった時に死にかけていたつぐみ、ちよ、時雨を眷属として迎え入れている。
雨足が強くなってきた。
場所を変えて雨宿りしようと提案するとちょっと迷ったようだった。
雨がだんだんと強くなっているのを気にしているのか月読の言葉を受け入れた。
少し小走りで麻布通りを進んでみる。
カフェがあったのですかさず入った。
店内は麻布らしく小洒落ている。
チェーン店ではなく個人経営のカフェだ。
店員は2名の男女。
夫婦かもしれない。
テーブル席に着くと女性がグラスを運んできた。
それほど広くはない店内に他の客はいない。
女性はそれとなく2人を見ている。
親子だろうかと思っているのかもしれない。
初めて見る2人。
そして子供の女の子のほうを見た。
着ているものは綺麗だ。
気になったのは腕の青茶色っぽい跡。
俯いているので顔は見えない。
ハッとしてその子の前に座っている男に顔を向けた。
男は下からジッと見ていた。
目と目が合った。
黄金の目をまともに見てしまった。
女性は一瞬でポワ〜ンとした表情になった。
頭の中が空白になり思考が停止した。
何事もなかったかのようにカウンター内に戻っていった。
「なんにする?
好きなもの頼みなよ」
吸血鬼化している月読は人間の血液以外はいらない。
注文するのは最も無難なブレンドコーヒーと決めている。
あとは目の前の女の子がなにを頼むかだ。
そういえば名前を訊いてなかった。
「お名前は?」
ちょっと言葉遣いを変えた。
人間体でいる時は人と接することがある。
しかし小さい子供とは接点がない。
どういった話し方がいいのかね?




