3-13
月読たちの現在のメンバーの中で正式に学校教育を受けたのは生田時雨だけ。
独学であってもとんでもない量の学習をしているのがつぐみ。
現在進行形でさらに知識を増やしている。
「ぼくはね、それが気になっていてね。
自分なりにずっと調べてはいるんだ。
結論なんてでないんだが、仮説ということなら自分なりに考えたことがある。
吸血鬼と人間は元は同じ種族だったはずだってね」
「そうなんですか?」
「だってねぇ、考えてみたら吸血鬼が必要とするのは人間の血液のみ。
犬や猫の血液っていっても代用品にもなりゃしない。
吸血鬼ってのは血に関しては特殊だからね」
言ってることはわかる。
月読は無言で頷いた。
そしてなぜか話は変な方向に進み始めたことに戸惑ってもいた。
これも学者特有のとにかく「教えたい」という欲求からきてるんだよなとも感じていた。
「俺もそれに関しては不思議に思ってた。
なぜ人間の血じゃなければ、人間の血液だけしか受けつけないのかって···」
月読には経験があった。
タジキスタンを抜けてキルギスに入った。
そこから中国に入っていった。
山の中を歩いていた。
おそらく天山山脈と呼ばれている地域だったのだろう。
周囲には人の姿はない。
ちょうどこの時の月読は吸血鬼化していた。
餓えと渇きが強かった。
そんな状況下で偶然に見つけたのが奇妙な動物。
白い毛に黒の斑点がある特徴的な見た目の動物が1匹いる。
どう見ても哺乳類のようだ。
この時はその動物がユキヒョウであることは知らなかった。
あの動物なら生き血が飲めるはずと背に腹は代えられないという強い思いから捕獲することを決意した。
捕まえるのは思いのほか簡単だった。
当然のように抵抗されたがスピードもパワーも月読のほうがはるかに上だった。
頭を殴りつけるとあっさりと昏倒した。
毛だらけだったんだがその首もとに牙を入れた。
チュ〜っと吸った瞬間に不味いと吐きそうになった。
受けつけない。
こんな動物の血は飲めない。
人以外の血液は到底受けつけることができない。
無理して飲んで病気になるということよりも前に拒絶反応が強すぎる。
そうなると大急ぎで山を抜けなければならない。
倒れてしまう前に全力で人里にでも行かなければならない。
それからは無我夢中で駆けることになった。




