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血液融合剤という薬で吸血鬼に他の動物の特性を追加させることができるということはわかった。
さらにその薬を開発したというのが人であった時に外科医でもあったドクター方円という日本人であるということまで判明した。
それが今、教師のように話している目の前の初老の男だということまで。
「自分が言うのもどうかと思うんだけど、ここの警備って手薄じゃない?」
不用心だなと言うことは控えておいた。
「人数は少ないがな···
おそらく、おまえさんが強いからそう思うんだろ。
5人いたはずだ。
中でもアレックス···狼男と呼んでた軍人が最も強い。
そいつを倒したのか?
普通じゃ敵わない相手だ」
ドクター方円の言ってることはわかる。
人間では勝てない。
他の吸血鬼でもかなり厳しいものがあるだろう。
護りとしては問題ないレベルではあると思う。
これは俺が強すぎるからだ。
自惚れではなくてね。
さらに後から出てきた3人も連携がとれていた。
おそらく彼らも軍人なのだろう。
なるはど、普通なら十分な護りであるはず。
「ところで、おまえさんは誰だ?
ここに何しに来た?
その目···純血統か···」
「あぁ、そうでした···これは失礼。
俺は神楽···神楽月読。
ここに来た目的はドクター方円に会うこと」
「へ〜わざわざ危険をおかしてまでぼくに会いに来るってことはよっぽど切羽詰まった事情があるんだ。
それは···」
月読はドクター方円が言う「わざわざ危険をおかしてまでここに来た」理由についての説明を始める。
とはいっても理由なんてひとつしかない。
妹のリュシアンがどこにいるのかってことだけだ。
生存していると仮定しての話になるのだが。
「その話はいつ頃のことかね?
あまりにも古い話なのでぼくにはよくわからないんだが···
うん、まてよ···」
ここで話は中断して考え込んでしまったドクター方円。
月読は黙ってるしかなかった。
次の言葉を待つことになる。
「そういえばチラッと聞いたことがあったかな?
ぼくと同じようなテーマで『血の秘密』を解明しようとしている研究者がいる。
グレゴール・ウォーターという人物だ。
人であった時は生物学者だったと聞いている。
その男ならおまえさんの妹のことを知ってるかもな?」
「その学者って人物がどこにいるのか知ってるか?」




