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「あっ、それと戻ってくるまでに2人倒してきた」
「えっ、そうなの···」
反応してくれた女性に向かってヘヘッと笑ったちよは両手でピィ〜ス。
絶好調だ。
「ビルの屋上に誘い込んで眷属2名瞬殺」
「歌舞伎町か?
あのあたりはよくいるはずだ。
夜になれば人間のほうから集まってきてくれる所だから。
わざわざ他に行かなくてもいいしな」
若い男はタオルで濡れた髪をゴシゴシ。
アジア系のような欧米系のような絶妙な容姿の20代半ばほどの青年。
少年の面影も残っている170センチほどの神楽月読という青年。
本名ではない。
元はなんと呼ばれていたのかはっきりとは覚えてない。
時代に合わせて名前は変えてきている。
「面倒なことにならなきゃいいけど···」
心配そうに話す女性が生田時雨。
今の目の色は普通の人間と同じになっているが彼女も吸血鬼の眷属の1人。
1945(昭和20)年3月9日深夜から10日にかけて東京大空襲があった。
アメリカ陸軍航空軍のB29爆撃機によるM69焼夷弾などを使った無差別爆撃。
確認された遺体数は8万人とも10万人とも言われている。
負傷者数は15万人以上。
その負傷者の中で全身火傷で瀕死の重症であったのが生田時雨。
両足も欠損していた。
吸血鬼の眷属にはなったものの人間としてすごした記憶はそっくりそのままある。
眷属になった時の年齢は29歳。
なので永遠に29歳の姿のままでいることになる。
吸血鬼という存在がいつからとなるとはっきりとはわからない。
人間が現れたのと同時にその裏側にはひょっとしたらいたのかもしれない。
ずっと長い間、巧妙に隠れていた可能性もある。
いつ頃からだろうか?
人間の文化や科学、生活などが発展·拡大していくのと比例して吸血鬼の陰が垣間見れるようになってきた。
アナログからデジタルに移行してきた現代社会では、それまでは個別での存在であった吸血鬼たちもそれぞれの組織としてまとまるようになっていった。
大きくは3つの組織に分かれることになった。