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月読は11号から足を離した。
何も起こらなかった。
こういった機械物ってトラップが仕掛けられてることがある。
よくあるのが機能停止と同時に自爆装置が起動するトラップ。
あくまでも敵は倒すっていう執念深い仕掛けだ。
11号にはなかった。
これで邪魔者がいなくなった。
けどこのロボットしかいない?
普段はこんなもんで十分なのだろう。
人が来たって夕方からだと伝えれば問題は起こらなかったはず。
月読のような者さえ訪れることがなければ。
外で戦闘があったのに誰にも気づかれてはない。
月読は今度こそ教会のドアを開けることになる。
ドアとドアの隙間に右手の指を伸ばした状態で指先を当てた。
鍵のある所に一瞬だけ光の剣を発生させた。
人差し指からの5センチ程度の小さなものだ。
これでドアの鍵部分だけを切断できた。
なにもドアを壊せばいいってもんじゃない。
破壊狂でもないので最小のことしかしない。
やはりねと思ったほど教会内は暗闇。
徹底的に光は排除している。
でも月読にはすべて見えている。
いるね。
この教会の造りはドアから入るとそこが礼拝堂。
奥に講壇がある。
その前にズラッと長椅子がきれいに並んでいる。
並んでいる椅子群のまん中あたりに独りだけいる。
痩せた男のように見える。
その男がスッと立ち上がった。
「ここに入ってきたということは機械人形を倒したのかい?
あんた、強いね」
金髪の男だった。
白人の外国人だったが日本語が堪能だ。
長く住んでいるのかもしれない。
そしてなんだか楽しそうだ。
「ここにドクター方円って人がいるようだね。
わざわざ会いに来た」
「それはそれは···
わざわざ、ね···」
男はパンパンと拍手してくれた。
バカにしてるって?
「外人なのに日本語がうまいねぇ、坊や。
それで、いるのかいないのか、どっちなんだい?」
挑発的なようだが、おそらく月読のほうが年上。
それに坊やを相手にしてる暇もないって。
「おまえ、調子にのるなよ。
このまま無事に帰れると思うな」




