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見通しのよい公園にいるので敵が現れてもすぐにわかる。
暗視レンズが吸血鬼反応を教えてくれる。
どうやら向こうもこちらを見つけたみたい。
余裕ありげに急にゆっくりとした足取りに変わった。
ひょっとして警戒してるのかもしれない。
月読は左手に持っていたものを上空に投げた。
先制攻撃。
今回初めて使う武器。
これが記録されたりしてしまうと次回から使いどころが難しくなる。
2人の吸血鬼は月読がなにかを空に向かって投げたのを見ていた。
それがなんだかわからなかった。
武器かなにかだと思ってビクッとして足を止めた。
だがそれも杞憂だった?
なにも起こらない。
起こらないはずだった。
爆発。
だが殺傷力はまったくない。
見当違いのところで爆発。
その代わり昼間の明るさになった。
上空に投げたことによって広範囲に光が届けられる。
2人の吸血鬼が最後に見たのはその閃光だった。
一瞬で全身が熱くなり燃え上がった。
自分の肉の焦げた臭いを嗅いだような気がした。
吸血鬼は消滅した。
月読が空に投げたのは紫外線手榴弾。
手榴弾本来の攻撃力は期待できないが対吸血鬼戦には効果は絶大だ。
「油断しないでください。
他にもまだいます」
時雨からの注意。
吸血鬼反応を感じ取れるのは今は時雨だけ。
今夜集まってきてる吸血鬼は少数だとちよも言ってた。
それならすべて片づけておく。
普通の人間だったら眷属と1対1でも勝てないだろう。
同じ眷属でもちよとなら戦闘力に格段に差がある。
それに月読だって対吸血鬼対策をしている。
そう簡単に負けるつもりはない。
いたいた、見つけた。
また2人の吸血鬼だ。
眷属どもは2人1組で動いてるようだ。
それはいい心がけだが、ヤツらは弱いんだよなと正面50メートルほどにいる吸血鬼たちに向かって手を振ってやった。
余裕を見せたつもりだ。
車1台通れるほどの狭い路地では人間たちが少なからず歩いている。
吸血鬼たちは眷属であっても自分の気配を減少させることができる。
ここにやって来てるあいつらはそれをしない。
あえてやっているのか?
そういえば歌舞伎町で瞬殺してやった眷属もそうだった。
なんだ?
余程自信があるのか?
そんなに自己顕示欲が強いヤツらなのか?
その挑発にはちよも大いにのっている。
ハンデと言えるほどでもないが不意打ちはしないよといったメッセージを送ってるつもりだった。




