4-2
マンション内にいるちよと時雨は吸血鬼の反応に気づいている。
同族だとわかってしまう体内センサーが感じ取ってしまう。
気配は消してない。
複数が近づいてくる。
これは友好的だとはとても思えない。
周りを取り囲むような反応がいくつもある。
「来たか」
ちよが嬉しそうだ。
アタッカーらしく戦闘意欲が膨らんでいるんだろう。
対して時雨は争いたくない派だ。
できれば話し合いなどで穏便にすませたいと思っている。
ディフェンダーらしい考え方だ。
だが向かってくる敵に対してはやすやすと殺られるわけにはいかない。
「ついにか···
それで何人くらい?」
月読は吸血鬼の気配を感じ取れない。
そして非力だ。
眷属の1人と素手で戦っても勝てないだろう。
だから対吸血鬼用の武器を駆使して戦うことになる。
それだと一撃必殺で形勢逆転にもっていける。
ただしそういった武器を持つことはこの国では違法になる。
「はっきりとはわかりません。
複数の反応があります。
外に出ますか?」
時雨としては戦うにしても逃げるにしても室内よりは外に出たほうが有利になると考慮している。
これまでの経験があっての進言になる。
「そうしよう。
つぐみも連れていかなければ···」
「わかりました。
まだ寝てると思いますが···」
「ピンチになれば起きてくれるさ」
月読は戦闘準備に入った。
ちよは「先に出るよ。時雨はキャプテンと共に」と言い残して窓から飛び出していった。
マンションは百人町にある。
北に行けばすぐ中央病院通りに出る。
ちよは反対側の大久保駅方向に駆けていった。
月読たち3人は山手線方向に向かった。
山手線の線路の下を通って戸山公園に進んでいく。
時雨によると吸血鬼反応はゆっくりと追跡してきてるそうだ。
その時雨は両手に1歳くらいの赤ん坊を抱えている。
危険が迫っていることにはまったく動ぜずに熟睡している。
泣き声などもまったくない。




