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Blood Times-吸血鬼たちの小夜曲(セレナーデ)  作者: 弁財天睦月
再び

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夜12時前。

中野通りにある哲学堂公園の入口あたりで1台のタクシーが止まった。

降りてきたのはつぐみを抱いた時雨とちよ。

立川駅から中央線で中野駅まで。

駅からはタクシーに乗ってきた。

車を降りたのは妙正寺川と交差する信号のある場所。

周辺は静かな住宅地。

人の姿はない。

車の音は聞こえる。


「こんな所?

駅から遠かったね」


ちよが懐中電灯を取り出した。

ちよも時雨も人間化している。

つぐみを連れてくるかどうかを迷ったが何かあった時のために連れてきた。

今は熟睡中。

人間化していて、しかも真夜中なんかに歩きたくはないのだが仕方ない。

「待ち合わせ」の指定場所が哲学堂公園で満月の夜中12時になってるからだ。


哲学堂公園は東洋大学の創設者である井上円了によって設立された。

井上円了は幽霊を含む妖怪や民俗資料を収集していて妖怪研究家としての一面も持っている。

そのため公園内にも妖怪に関連する資料なども見られる。

ただし心霊スポットというわけではない。

公園内には野球場やテニスコート、武道場などもあり広い敷地を有している。

「待ち合わせ」の場所としてはなかなかイカしている。

公共公園としては珍しいことに18時になると門が閉じられてしまう。


「本当ね。

もっと駅の近くだと思ってたのに···」


時雨はちょっと不安。

これから公園内に入らなければならない。

鍵もかかってるから不法侵入?

それよりもまっ暗なのが嫌。

吸血鬼化してる時は夜でも見える。

人間化していまうと急に不便になってしまう。


苦労してなんとか公園内に入った。

誰にも見られてないはず。

目指す場所は哲学の庭という所。

実際に歩いてみると夜の学校より怖い。

見えないってことがこんなに怖いとは。


老子とかアブラハムとか世界の哲学者(?)の銅像があちこちにある。

夜中に見るとかなり気味が悪い。

いまにも動き出すんじゃないかって怖さがある。


「指定場所ってここよね?」


時雨はつぐみを抱いたまま懐中電灯の光を目で追っている。

独りだったら絶対にこんな所に来ないなと思いながら。

昼にでも来るとまた違った(おもむき)があるのかもしなれない。


「そろそろ?」


どこに現れるんだろうかと懐中電灯の光を動かしながらちよは進んでいく。

ランタンを持ってきたほうが広範囲で照らせたかもと、ちょっと失敗したかもとキョロキョロしながら。


「見つけた」とちよが懐中電灯の光を向けた先。

銅像が円陣を組んでる先の芝生の上。

空間が変。

なんか白っぽい渦を巻いてるように見える。

渦を巻きながら少しずつ大きくなってる。

ちよと時雨は無言でしばらく見ていた。


一定の大きさになってグルグル動いてた右回りの渦もゆっくりとしたスピードに落ちついた。

これから何が起きるんだろうとちよと時雨は固唾を飲んで見守っていた。


渦のまん中にニュッと何かが出てきた。

人の手のようだ。

その手がグググッと渦を押し開いていく。

渦の中から腕が出てきて上半身が出てくる。

そして全身が現れた。

ちよと時雨は詳細は聞かされていた。

実際に目にするのはもちろん初めて。


「なんか、なんかねぇ、思ってたのと違って大きくない。

それにものすごく怖い。

怒ってる?」


亜空間(?)から出てきたのは死神。

3メートル、いや3メートル半はありそうだ。

こんなに大きいとは聞いてなかった。

そして、なにやら禍々しい雰囲気を持っている。

普通の死神と大きく違ってるのは顔。

この死神は顔の上下が逆になっている。

「逆さ顔の死神」と呼ばれる非常に珍しい希少な死神。

通常は生きてる者を死の国へ連れていくのが死神の役割。

逆さ顔の死神は死の国から生還させるのがその役割。

死の国から連れてきたのは月読。

わりと雑な扱いで引きずり出されたような寝起きのような状態でボ〜っとしてるようだが、確かにそこに全裸の月読がいる。

役目を終えた逆さ顔の死神はちよや時雨が見ていることを気にした素振りも見せずにさっさと死の国(?)へ戻っていった。



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