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三十二章 市街地の攻防 2

 *話中、戦闘表現があります。



「とりあえず、この人をどこかに避難させるか」

 リドの言葉に、ディルは頷いた。

「ああ。このまま放置していっては、さっきの地獄の猛犬(ヘルハウンド)餌食(えじき)になるやもしれぬしな」

「そうだな」

 確かにディルの言う通りだ。目立った外傷や致命傷は見当たらないが、外に置いていっては魔物の餌食になる可能性が高い。

 リドは怪我人の男を担ごうとして、ふと手を止めた。そういえば、やけに息苦しそうにしていた。もしかしたら肋骨が折れているのかもしれない。

「担架でもあるといいんだが」

 思案気に顔を上げたところで、リドは目を丸くした。

 通りの向こう、ちょうど神殿のある方から馬車が一台、すさまじい勢いで疾駆してくる。だんだん音も近づいてきた。

「な、なんだ?」

 異様な空気を察して顔を強張らせ、ディルはスッと身構える。

「反乱軍とかいうやつじゃないか?」

 怪我人の男から忠告を受けたばかりだったのもあり、リドも警戒する。〈塔〉が近いから、ありえない話ではない。

「いや、違う! 魔物に追われているぞ!」

「まじかよ、今、近づかれたら餌確定だぞ」

 リドは怪我人を魔物の脅威から守るべく、ダガーを抜いて構える。

 馬車を追いかけていた五匹の地獄の猛犬のうち一匹は、馬車を引く馬の横まで出ると、馬の足に噛みついた。

 ヒヒーン!

 痛みに驚いた馬が前足を振り上げ、魔物を振り払おうと暴れる。そして、その勢いのまま近くの民家の壁に突っ込んだ。

 どうと音をたてて馬車が倒れ、土埃がたつ。

「あの魔物どもめ……!」

 目の前で馬車を襲われて、ディルの正義感に火が付いた。眉がつり上がり、険しい顔になる。見た目が銀髪と水色の目という涼しげな外見だけに、まるで氷のような冷たさをはらんでいる。

(けん)(さび)にしてくれる!」

 ディルは大剣を引き抜くと、魔物達めがけて突進していく。

「あ、おいっ!」

 流石に五匹相手ではまずかろうとリドが止めるが、聞こえていないようだ。かといって、ここでリドが援護に回ると怪我人ががら空きになり、餌にされる確率が高くなる。

「うおおお!」

 ディルは気合の声とともに剣を一閃、まずは馬の足に食らいついている地獄の猛犬を片づける。

 いきなり飛び込んできた少年騎士に対し、魔物四匹はじりりと間合いを見計らう。

「光よ矢となれ、ライトブリッド!」

 そのうち一匹を〈光弾〉で倒し、飛びかかってきた二匹を剣を振り払って吹き飛ばす。隙をついてきた残りの一匹には、そのまま蹴りをお見舞いした。

「ギャウン!」

 三匹は地面に叩きつけられる。が、すぐに身を起こし、グルルルと低い唸り声を上げ始めた。

 ディルは再び剣を構え、三匹と対峙する。

「風よ!」

 突然、声が割り込んだ。

 小さな竜巻が起こり、三匹の地獄の猛犬を渦に巻き込む。風が止むと、ずたずたに引き裂かれた地獄の猛犬の死骸が三つ出来ていた。なかなかグロッキーである。

「大丈夫かい、君」

 ディルが声の方を振り返ると、倒れた馬車の扉が開いていて、そこから赤毛の男が身を乗り出していた。

 深紅の髪と、静かに凪いだ深い緑色の目が穏やかそうな印象の男だ。白い神官服に身を包んでいる。

 男は静かに微笑んだ。

「手助けしてくれてありがとう。困っていたので助かった」

「いえ、困っている市民に手を貸すのは、騎士として当然のこと。それより、怪我はないだろうか?」

「ええ、私は。あっ、いけない。クリス、クリス、大丈夫かい?」

 男はハッとした様子で馬車に引っ込み、中にいる別の人間に声をかけた。

「う、うーん。はっ、グレッセン卿、ご無事ですか! いっ!?」

 馬車が倒れた拍子に昏倒してしまったクリスは、慌てて起き上がろうとして、ぶつけた頭を押さえた。額から血が出ていた。

「とりあえず一度外に出よう。ほら、手を貸して」

「すみません、グレッセン卿……」

 若干ふらついているクリスの腕を掴んで支え、グレッセンは馬車の外に出た。その際、車内に転がっていた帽子も拾っておく。

 そして外に出ると、クリスの怪我を聖法で治す。それにますます恐縮するクリス。

「神官の方だったのだな。申し訳ないが、あそこの怪我人も診て頂けないだろうか?」

「勿論です。民に奉仕すること、それが我々神に仕える者の使命ですから」

 グレッセンは頷き、怪我人の側に膝を突く。そして大方の怪我を確認した後、その部位に術を使う。

 すると、今まで苦しそうにしていた怪我人の表情がすうと和らいだ。

「サンキュー、おっさん。これで運びやすくなる」

 リドはニッと歯を見せて笑い、怪我人だった男を背負う。それから周りを見回して、安全そうな家に目を止めると、家の者に事情を話して休ませてもらうことにした。

「これで良し。じゃあ行くか」

「うむ、そうだな」

 リドとディルは互いに頷き合う。

「あなた達、一体どこに行くのですか? 避難所はあちらですよ」

 そのまま〈塔〉に向かおうとしたら、クリスに呼び止められた。

「どこって、〈塔〉だよ。ダチが戻ってこないから、迎えにな」

「迎えにって……。こんな中ですか? 〈塔〉所属魔法使いなら、心配しなくても良いのでは?」

「あいつは魔法使いだけど、杖連盟には所属してねえよ。知り合いのとこに訪ねていっただけ。……ん? そういやおっさん、どっかで会ったっけ?」

 クリスに返答しつつ、ふと横にいるグレッセンに目をとめるリド。帽子を被っていなかったので分からなかったが、よく見るとどこかで会った気のする顔だ。

「そういう君は、こないだの……」

 グレッセンもそこでようやくリドに気付いた。

「お知り合いなのですか、卿?」

「ああ。こないだ散歩していた時に会った少年だよ」

 クリスはそれを聞くと、恭しく頭を下げた。

「卿を助けて頂いた方ですね。どこのどなたか存じませんが、ありがとうございます。私、卿の従者を務めております、クリス・エストと申します」

「どうも。俺はリドだ」

「私はディルクラウド・レシムといいます」

 それぞれ名乗り合ったところ、グレッセンは深緑(ふかみどり)の目を見開き、リドを凝視した。

「リド……? それが君の名なのか?」

「そうだけど、それがどうかしたか」

 何をそんなに驚くのだろう。リドは不可解さに首を傾げる。

「家名、家名は何と言うんだっ?」

「リドだ。……ただのリド」

「そうか……。いや、すまない。不躾(ぶしつけ)なことを聞いて」

 ひどく真顔で問うてくるグレッセンに、リドは不機嫌になるのも忘れ、気圧され気味に答える。いつもなら、家名を問われると、それを知らないことに腹が立って不機嫌になってしまうのだ。

 リドの返事を聞いて、しばし黙り込んで考え込んだグレッセンであったが、すぐに元の穏やかな表情に戻す。意味が分からないのはリドだったが、前に会った時の別れ際のように、グレッセンの目に哀しみの陰を見つけ、何も聞かずに口を閉じた。

「私は、デューク・グレッセンといいます」

「グレッセン……様!!?」

 グレッセンの名乗りに、ディルはあんぐりと口を開けた。

「? 知り合いか?」

 リドの呑気な問いに、ディルはクワッと目を吊り上げる。

「こないだ話した、風の神殿の神殿長一族の家名だ!」

「…………へえ」

 リドは目を瞬いて、目の前の男の顔をまじまじと見つめた。

「じゃあこのおっさん、めちゃくちゃ偉いの?」

「偉いどころではないは! とりあえず、おっさん呼ばわりはよせ!」

 うろたえ気味に制止をかけてくるディルに対し、リドは相変わらずマイペースだ。

「まあ偉いのは分かったけど、そのすっげー偉いおっさんが、こんな所で何してんだ? エアリーゼでもないし、王都のど真ん中じゃねえか」

 だからおっさんはよせ! ディルが横でわめくのをスルーし、リドはグレッセンを見やる。当の本人は特に気にした様子もなく、事情を話す。

「私用で王都に来たのだが、〈塔〉に愛娘がいるので、折角なので会おうと思ってね。それで馬車で向かっていたら、この有り様だよ。困ったね」

 本当に困っているのか疑わしくなる程のんびりした声音で言い、グレッセンは小さく溜息を漏らす。

「君達、これから〈塔〉に行くのなら、良かったら私も同行させては貰えないか」

「卿!? 突然、何を言い出すのです!?」

 ひっくり返った声で抗議するクリス。

「クリス、娘があんな殺伐とした所にいるのだから、迎えに行くのは親の務めだろう?」

「そ、それはそうですがっ」

「ほら、彼も良いと言っていることだし、どうかな?」

「私はそんなことは一言もっ」

 とどめににっこりと微笑むグレッセン。クリスはその無敵の笑顔を前に、敗北を悟った。がっくりと肩を落とし、盛大に溜息をつく。

「……分かりました。私もお伴致します」

「分かってくれて嬉しいよ」

「…………」

 リドとディルは二人を前に顔を見合わせる。許可を求めてくる割に、すでに行くことは決定事項のようだ。

「分かったよ。好きにしな、おっさん」

 リドの返事に、グレッセンは再度にっこり笑うのだった。


 *  *  *


「おい、爺さん! 爺さん!」

「落ち着いて下さい、レッドさん。マスターは重傷なんです! 動かさないで下さい!」

 突然の襲撃を受けて負傷したヘイゼルは、長椅子でピクリともせずに眠っている。それを目にしたレッドが死んだと勘違いしてヘイゼルを揺するので、周りにいた魔法使い達は慌ててレッドを止めに入る。

「重傷……? 生きているのか? 動かないじゃないか!」

「眠っているだけです。大丈夫です、ランガスタンさんの時とは違いますから……」

 ヘイゼルの看護をしている女性の魔法使いがやんわりとそう諭す。レッドが何を恐れているのかは、ヘイゼルやレッドと付き合いの長い彼女にはよく分かった。

「人間や獣人のことが、竜であるあなたに分からないことはよく分かってます。それに、あなたは人の姿では大人ですが、まだほんの五歳の子供の竜なんですから尚更です。ね、少し落ち着いて、深呼吸して下さい」

 落ち着いた声に促されるまま、レッドは言う通りにする。そしてそのままヘイゼルの傍らに座り込むとうつむいた。

「爺さん……。親父殿だけでなくあんたまでいなくなっちまったら、俺はどうしたらいいんだ」 

 自分の存在意義について悩む赤竜(レッドドラゴン)を前に、魔法使い達は何とも言えず視線を交わし合う。人の間で育った竜だけに、その悩みは常に恐れと共にある。

 最初は気落ちしていたレッドであるが、だんだん怒りに変わってきて、ギリリと歯噛みをすると拳で床を叩いた。

「クソッ、なんなんだあいつら! いきなり〈塔〉に襲撃かましてきやがって!」

「レッド、先程偵察に赴いた者によると、襲撃は王都全域に及んでいるそうじゃ。反乱軍だそうじゃよ。とうとう、西が動いたようじゃな」

 老年の男の言葉に、レッドは眉を吊り上げる。

「権力争いってやつか。ふん、だから人間のすることは分からないんだ。俺ら竜の世界じゃ、強い奴が王になる。それで終わりだ」

「ワシらの国は、血筋と赤色の髪で決まると教えておるじゃろう。そして王が絶対じゃ、そこはお主の考えとは変わらぬ。ただ、近しい者ゆえに争いも起こる。古くからそれを繰り返してきた」

「進歩のねえ奴らだな」

 レッドは吐き捨てるように呟いて、すくりと立ち上がった。

「……どこに行く?」

「爺さんのことはお前らに任せる。俺はアルを探す。ここにはいないらしいが、爺さんがこのザマじゃ心配だ。兄貴分としちゃあ、助けてやらねえとな」

「レッド……」

 襲撃者から逃れ、地下室に身を隠している魔法使い達は、皆、期待を込めてレッドを見つめた。アルモニカのことを心配していたが、下手に動くことも出来ず、困り果てていたのだ。

「アルをよろしく頼むぞ」

「ええ、彼女は私達の宝物」

「大事な預かり物だからな」

 レッドは大きく頷いて見せ、ほとんど足音も立てず、部屋を出て行った。


  *  *  *


「おい、ほんとにこっちで合ってんのか?」

「合ってますか、だろうが!」

「ディルうるさい。お前、俺の親父かよ」

「誰が貴様の父親だ!」

 無遠慮にグレッセンに問うリドに対し、ディルは怒る。さっきから似たようなやり取りばかりしているのを見て、クリスが呆れた顔をした。

「仲が良いのだか悪いのだか。ともかく、気が抜けるのだけは確実ですね」

「良いじゃないか、緊張してるよりも」

 にこにこと返すグレッセン。そんな彼の態度もまた、場の緊張感を大幅に削っている。

「ヘイゼル先生の家は、〈塔〉本部の真裏にあるんだよ。けれどまさか、君達が娘の友達の友達とは思わなかったな」

「あんたの娘さんの友達なのかも怪しいけどな」

「一緒にお茶をしたんなら友達だよ。……着いたよ」

 ヘイゼルの家に着いた四人だが、その有り様に皆凍りついた。

 玄関の扉は壊れているし、部屋の中はあちこち荒らされていて目も当てられない。地下室にも行ってみたが、変形して倒れた扉と、やはり物が倒され荒れている部屋だけがあった。

「……階段に続いていた血といい、追いつめられていたことは確かだな」

「あまり認めたくはないが、そうなのだろう。この魔法陣は何だ?」

「これは多分、遠距離用の転移魔法の補助魔法陣だよ。娘が前に実験していた」

 二人の疑問にグレッセンは呟くように答える。顔からは血の気が引いている。

「遠距離用? そんなものは初耳ですが……」

 ディルは首を傾げる。

「娘の通っている学校に、転移魔法の権威がおられてね。娘も興味を覚えたようで、色々と思索していたようなんだ。あの子の行ける場所は、ここかエアリーゼか学校くらいなものだから、そのどれかにはいるのだろうけれど……」

「そうですよ、グレッセン卿。アルモニカお嬢様は、もしかしたらエアリーゼに逃げられたのかもしれません」

 グレッセンを励ますクリス。二人の会話を聞いて、リドは不思議に思う。

「何でその三か所って分かるんだ?」

 その問いには、ディルが答える。

「転移魔法は、自分で行って、自分の目で見た場所でないと転移することが出来ないのだ。オルクスとて、そのような場所にしか転移していなかっただろう?」

「そうだっけ?」

 そんな気はするが、あまりよく覚えていない。

 だが、〈たゆたいの水路〉で、水に濡れるのが嫌な割に(もぐ)っていたのはその為なのかもしれないと思い到る。

「つまり、グレッセン卿のご息女は、その三か所にしか行ったことがないから、そのどこかにいるというわけだな。……転移魔法を使ったのなら、だが」

「ルイも一緒だといいんだけどな」

「なあに、オルクスがついているのだ、そう悪い方向には向かわぬと思うぞ」

「あに言ってんだよ、あのアホオウムだから不安なんだろ。思い出してみろ、前にお前と会った時のこと。あいつも一緒に伸びてたんだからな」

 リドとディルの二人が言い合っていると、突然、怒鳴り声が割り込んだ。

(じじい)(かたき)! 覚悟しろ!」

 何事かと思った瞬間、赤茶色の髪の青年が殴りかかってきた。

「うおわっ!」

「ぬっ!?」

 さっと飛び離れ、(こぶし)をかわす。

「ちょっと待て! なんなのだ、(かたき)とは?」

 慌てて問うディルであるが、青年は聞く耳を持たない。

「問答無用!」

 再び殴りかかってきたのをディルは避ける。

 ドゴ!

 青年の拳が分厚い石壁にめりこみ、穴を開けた。

「……なんという怪力だ」

「おっかねえの」

 二人は揃って背筋に冷や汗を浮かべる。素手でこれとは、一体何者なんだろう。

「落ち着いて、レッド! 彼らは(てき)ではない!」

「………!」

 また飛びかかってきた青年を前に、二人の少年を庇うようにして立ちふさがったグレッセンの顔の寸前で、ぴたりと拳が止まる。

「……もしや、アルの親父殿か?」

 青年の灰色の目が見開かれ、落ち着いた光が浮かぶ。きょとんとした顔で問うのに、グレッセンは頷いた。

「お久しぶりです、赤い竜の子」

 殴られる寸前だったにも関わらず、グレッセンは穏やかな笑みを浮かべた。

「なっ、なんでこんな所にいるんだ!? あんたはここにいて良い人じゃないだろう!」

 グレッセンはレッドにここまで来た経緯を話し、質問を投げる。

「アルモニカがどこにいるか知らないかい?」

「俺も探しに来たんだ。爺が重傷で、仲間達も何人か殺られた。生き残ってる奴らは身を隠してる」

「先生が重傷?」

「ああ、奴ら、真っ先に爺を狙ってきやがったらしいんだ。あいにく、〈塔〉にいなかったからその時のことは詳しくは知らない」

「そうか……。ひとまず先生は無事なんだね?」

「安静にしとけばな」

「…………」

 グレッセンは黙り込み、思案に暮れる。

「どうする? ルイの居場所も分からない、卿のご息女も行方不明。エアリーゼはここからでは遠いし、私は転移魔法は使えぬし……」

 ディルの呟きを拾い、皆、顔を見合わせた。他のメンバーも転移魔法を使えないようだ。

「闇雲に探しても、見つかるものも見つかりません。何か手掛かりがあればいいのですが……。アルモニカお嬢様を見かけた人などがいればと思いますが、この有り様では厳しいでしょうし……」

「……それだ!」

 ぶつぶつと呟くクリス。リドはパッと顔を上げ、手を叩いた。他四人はリドを注視(ちゅうし)する。

「それ、とは?」

 グレッセンの問いに、リドはおかしそうに笑う。

「なんでそれに気付かなかったかな。そうだよ、あいつの居場所なら聞けばいいんだ!」

「誰に?」

 他の人と同じく、ディルも(いぶか)しげな顔になる。

「精霊さ! 風の精霊なら、海や湖なんか以外ならどこにでも行ける。そうと決まったら、さっそく頼めるか?」

 リドはそう説明し、そのまま傍らにいる風の精霊に頼んだ。精霊の声が分からないディルは、リドに問う。

「精霊は何だと?」

「少し待ってろ。今、探しに行ってくれた」

「うむ……」

 リドはにやりと歯を見せて笑う。

「後は適当に待ってりゃ、結果が出るさ」

「そうだな。……しかし便利だなあ、〈精霊の子〉というのは」

 感心しきりで頷くディルの横で、クリスはひどく驚いた顔でリドの顔を凝視していた。




 


 リドとディル編、めっちゃ長くなってしまった……。でも省けなかったんです。

 次回は流衣視点に戻ります。

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