幕間5
「なあ、君は知っているか?」
男は窓の外――雲に覆われた夜空を見つめたまま、背後に問いかけた。
そこでは、黒い髪と金色の目をした青年が椅子に座っていた。無言のまま、問い返す視線を青年は男に向ける。
「ルマルディー王国の現女王が死んだら、次に後を継げる者は二人しかいないことを」
「知っている。だから俺はお前と手を組んだ。益の無い相手とは組まない」
淡々と返す青年。彼の腰には黒い鞘におさまった剣が一振りある。服も全て黒く、印象としても静かで、まるで夜のようだ。そんな青年の足元の影には魔物が棲んでおり、青年の身の回りには薄らと瘴気すら漂っている。
恐ろしく濃い闇。
青年がその状態で生きていることも、ましてや正気を保っていることが不思議な程。
男はときどき、自分がとんでもない怪物と契約をしていると感じることがあった。まるでそう、悪魔を相手にしているような。
契約内容は実に単純。活動資金と場所を提供する代わりに、男の野望を叶える手伝いをして貰う。主に、薄暗いことが中心だ。
「さあ、宴を始めよう。待っていろ、可愛い姪よ」
男は目を細めて笑う。
その時、雲が割れ、薄らと月光が降り注ぎ、男の姿を顕にする。
その男の髪は赤く、目は深い青色をしていた。
幕間というより、序章的な。短めです。