Act.Two 時の流れ それぞれの道へ Epilogue【60歳 美歩と新くん、2人だけの同窓会】
まったく立ち直れないまま、結婚を機に自宅を出、夫婦としての新居を、自宅近くで中古condominiumですが構えることに。
業務はあいも変わらず途切れることもなく、というより怒涛の如くかなあ。夢にまで出現する。はぁーと溜め息つけば、幸せが逃げる!って仲間から煙たがられる。
業務が終わればsuperへ主婦として買い物が待っている。memo用紙を片手に献立を思い浮かべ店内を右往左往。
世の奥方様の大変さを、身に沁みて感じております。
本当にお疲れ様です。
以前、新くんとの会話で、
「ひと息つきたい時は、白wineを片手に、そのwineにあったcheeseをchoiceし、jazzを聴かないか?」
ってふと思い出してしまう。新くんなら直ぐ実行。
今は、いつ実現するのだろう?
いけない!いけない!主人に失礼だよ。ごめんなさい。
でも新くんとともに歩んだ17年は、主人の1年未満には太刀打ちできるわけもなく比較しちゃあいけないことはわかっている、わかっているけれどつい。
あれこれ公私に振り回されあっという間に月日が過ぎて行きます。
新くんからは、住所が変わるたび一報を頂き、私からも定期的に便りを出したりして交流が続いています。
私の結婚式というより、単にwedding-dressが着たかっただけのphoto-weddingを葉書に載せ、添え書きには、またおしゃべりしましょ!と。送付したり。
蒲郡にまた来てください!が、
蒲郡にいつ来るの?に。
たまにはランチ、ご一緒にいかが?とか。
恋に焦がれ、5年、10年、20年、25年と一日千秋の思いがあっという間に過ぎ。
私は定年として線は引くものの現職を引き継ぐことに、
新くんは完全に退き、地元で能力を買ってくれる企業さんに再就職、がんばってるよって。
それに例の住宅金融公庫の借入は完済した!って。
ということは、2人ともようやく落ち着いたんだ!
じゃあ会える?いつ?
2人だけの同窓会、日時決定!
もう、2度と会えないと思っていたのに。
当日。
新くんが列車で蒲郡に来てくれることに。
しかし、駅への到着予定は午前11時ごろ。
10分20分経っても待ち合わせの改札口に降りてこない。
まさか、忘れてる?だんだんイライラが募り、ようようの45分遅れで到着。
35年ぶりの劇的な再会は、感動の熱い抱擁ではなく、私は昨夜から嬉しさのあまり食事がのどに通らず、今朝の朝食もとれず、お腹はペコペコ、にプラスこの大切な日に遅れるとは何事?!の2重の怒り爆発寸前。でした。
私の自家用車で市内の会席料理店へ。
ようやく落ち着きを取り戻し冷静になり。
いざ、お食事を、いただきます!
お箸をとおし、少し頂いたら、あら。
堰を切ったように、おしゃべりが止まらない。
内容までは思い出せなくても、交互におしゃべりのcatch-ballが止まらなかったことは記憶に残っています。おなかが空いているはずなのに。
お店の方は、お皿の具合を見ながら、次の料理の準備をするのですが、私達がおしゃべりに夢中になりいっこうにお料理が減らないので、timingがつかめず苦笑いされていました。
お店の皆様、本当にごめんなさい。
お料理をかなり残してしまったこと、口にあわなかったのではなく、久方の相方様との食事に緊張と感激に、おなかがいっぱいになってしまい、ごめんなさい。
こんなこと初めてだよ。
2人とも同じ意見です。
店を出る時も私達2人平謝り、でもお店の方は、本当にお2人は仲良しなんですね。店の者一同幸せを貰った気がして、こちらこそ感謝ですって。
さて気を取り直していつものところへいこまい!
移動中私の車内では、こんなやりとり。
新くんの家の方は、数10年前に他界、
私の父は、数年前に他界、
新くんからは亡き父へ和蝋燭と、お線香、名古屋銘菓をお供え物としておあずかり。
私の母は、施設に自発的に入所し、お稽古事、習い事に、美歩より忙しいのよって楽しんでいる。
その場の写真を新くんに見せたところ、
記憶にある母の姿ではなかった、と大粒の涙の新くん。私の責任ですと言いながら。
確かにあの日から母は変わっていったような。
新くんの記憶にある母は、今の私そのままだと。
「そっくり!」そりゃあ母娘だしね。
美歩から新くんに、
「髪、みてみん。真っ黒にみえるだらあ」
「実はこれ、染めとるん」
「ある日を境に髪真っ白になったん」
新くん、はっ!としてまた大泣き。
そんなつもりで言ったのではないからね。
それから、例の我が家のあの件は、現在私の姉夫婦が跡を継いでいるよ。新くんは何か悔しそうな素振りを。たぶん考えていることは一緒だと思う。
最後の父の思い。新くんは知らない方がいいかも。
2人、私と新くん。こうのとりさんが来てくれなかったんだね。もしかして、新くん。私に気を……。
ついたよ。いつものお店。
お抹茶と黒蜜あんみつ。
ここでも学生にもどったように、色々な話題に議論が白熱。はたから見たら、難しい言葉を並べ、独特の雰囲気で、立ち入る隙がないほど異様に見えたらしい。
でも普通の会話も。
「美歩様は猫がお好きでしたね。よく2人で猫真似してたっけ?」
「そう!そう!やったね!またしよ!」
「家猫かえた?」新くんから質問。
私「今の所、petは不可だから、まだ」
私「新くんは?」
新くん「小型犬が2頭いるよ」
私「へえー」
新くん、いきなり私の手を取り、手のひらを見つめ
「あの頃、美歩様は胃腸が悪くこのあたりが真っ赤になってた」
「今は大丈夫?」とさすってくれて。
時刻は、もう16時。
だんだんそれぞれの家庭の顔にもどっていく気配を、2人感じ取り、そろそろ帰らなきゃね。
駅に到着。
新くんからのお願い。
「お見送りは、大丈夫!」
「ここでbye byeしよ」
私は自家用車に乗ったまま。
お別れ。
back-mirrorから見えなくなるまで新くんは手を振り続けて。
時が解決するっていうけれど、気付いたときはもう手遅れ。解決なんてしない。忘れるしかない。
時間はいくらでもある?ありえない!限られた時の中で即断しなければ、叶うことはない。
だからね、新くん。
私。
教員を断念した時、
25歳の時の帰路の時、
35歳の時の将来をお捨てになった時、
そして、今日、私の手のひらを取って下さった時、
いつもご自身ばかり犠牲にし、ご自身の意思は黙ったまま心の奥に押し込み、私は蚊帳の外?
私のことを思って?
それは違う!
いつ如何なる時も、
「一緒にがんばろう」
って私の手を力強く繋ぎ離さなければ、
私は何もかも捨てて、新くんとともに歩む覚悟があったのに。
今日も、手のひらを取ってくださった時、新くんはそのまま私の手を引っ張り、ともにすべてを捨て、ようやく2人の夢が叶うのだ!と期待し、目も閉じたのに。
新くんの鈍感!いつになったら気が付く?
思いでは美しいままに?
私達って、そんなに薄っぺらい存在だった?
ほんと、「そんなこと、ほっといて!」
美歩の人生を台無しにした!と本気で悔んでいるのなら、新くん。
でも、まあ、いいんじゃない。じゃあね。
【終わり】
数ある作品の中から、見つけだし、目を通してくださりありがとうございました。
作中にある、生徒諸君からの2枚の色紙、canvas画、卒業論文、葉書等は現在も私の手元にあり、それを改めて見つめ思い起こし綴ってみました。
わかりやすく、読みやすく、を心掛けて書いてみましたが、いかがでした?
かなり省略、短縮したので、判断や想像しにくかったのでは?の中、最後までお付き合い下さりありがとうございました。
それから、作中の当時に関わって下さった皆様、私の人生に良い意味で多大な影響を与えて下さいました。遅くなりましたが、心より御礼申し上げます。