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勇者が英雄になるまで  作者: イヌ汰郎
第一章・降り立つ者
1/2

対話と一度目

勇者は選ばれる者

英雄は成る者

 人は俺の事をシスコンと言う。

 人間一人養うには金がいる。両親亡き今妹の為に必死なるのはそんなにおかしいことだろうか。

 学友とも校外で会うようなこともなくバイト三昧の日々を送る中、何時ものようにバイトに向かっていた。


「え?」


 気が付くとそこは真っ白な空間だった。

 周りを見回すも見渡す限り白く、何もない。

 先程まで駅前で信号待ちをしていた…はずだ。


「どこだここ…」

「起きたかの」

「…!」


 つい先ほどまで誰もいなかったはずの背後から声が聞こえ振り返る。

 そこにいたのはどこにでもいるような普通の恰好をしたごく普通の...人?だった。

 まず感じたのは違和感__顔が分からない。

 顔は認識している、口が動き声を発していることも分かるが…なんというか記憶に残らない。


「お主聞いておるか?」

「え、あはい…聞いてませんでした」

「もう一度言うぞ、お前は死んだ。17年間の人生を終えて輪廻へと還る」

「........は?」


 ...家を出て、駅前まで行って、トラックが突っ込んで来た―――ような気がする。

 ぶっちゃけ実感がない。というかコイツは何だ。


「…」

「ほっほっ疑っておるようじゃが信じるも信じないも関係ない、お主が死んだという事実は揺るがぬ」

「あんたは…閻魔か何かか?」

「違うな、神と言えば分かるか」

「神様ねぇ…生憎無神論者なんだが」

「気にせんよ、今どき信仰心のあるものの方が少ないわい」

「それで神様が何の用だ?」

「取り引きじゃ」

「取り引き?」

「やってもらいたいことがあるのじゃが。お主がちょうど良くての、条件に当てはまり、適正もあり、叶えねばならない望みがある」

「…望み?」

「お主が死ぬと遺される人がいるのではないか?」

「…妹が成人出来るだけの貯金はある、俺が居なくても問題は無い」

「鈍いのぉ〜…お主が思っておるよりあの子にとって兄という存在は大きいものじゃ」

「アイツなら乗り越えれる」

「まともに成長出来ればそうじゃろうな、あの子はお主が死んだ後祖父に引き取られるが…2年後に死ぬ、その後は…お主の叔父に引き取られる」

「……脅しか?」

「似たようなものじゃな」

「取り引きに応じたら蘇らせてくれると」

「察しが良くて何よりじゃ」


 どうしてこう俺の周りにはカスみたいな奴しか出てこないんだ。

 クソ叔父なんぞに引き取られたらどうなるか目に見えている、少なくとも高校にすら通えず弄ばれるだろう。


「すまんの、事実を言ったまでじゃ。知らなくてもいい事じゃが知れば後悔することなだけじゃな」

「……そんで神様は俺に何をして欲しいんだ?」

「世界を救って貰いたい、お主がいた所とは異なる世界、元は同じじゃが創造神様が増やされた世界の一つじゃ」

「世界を救う…?」

「邪神なる者が表れる、世界を滅ぼすことを目的とし、あらゆる世界を渡る存在じゃソレを討伐して欲しい」

「ただの高校生にそんな事ができるのか?」

「そのままでは出来んな、異なる世界に送り出す時にお主の制限を解除する」

「制限?解除?」

「異なる世界と言っても元は同じ世界じゃ、管理する上で不必要な要素…お主がいた世界じゃとレベルやステータスといったものじゃな、この制限を解除するのじゃ」

「…で、強くなると」

「無論それだけでは邪神に勝てるとは思っておらん、お主が元々持っているもの…『異能力』とでも言うものかそちらも解放させてもらう」

「『異能力』…」

「これはどちらかの世界独自のものというわけでもない、持つ者、持たざる者が居るが…お主の世界では自由に使えないようにしておった。まぁ発現させた者もおるが…」

「どんな能力なんだ?」

「それは解放せんことには分からぬな、基本的には個人の心が作用するの」

「……」

「さて、どうする?お主がやらぬのなら他の者に頼むだけじゃ」

「断れば妹は」

「先に話した通りじゃ」


 クソが。


「分かった、やる…が、1ついいか」

「なんじゃ?」

「俺が失敗しても妹は助けてくれないか」

「……成果次第では考えてやろうかの」


 --------


 静かな森。木の葉の擦れる音だけが聞こえる森の中。

 地面から1メートル程の空中に黒い渦が現れ、その中から男が放り出された。


「うぐッ」


 痛ぇ。ここは…何かの遺跡?のようだ。石造りの円形の舞台が見える。


『ここは古の儀式の場所じゃ、人里は…日の方向じゃな。期待しておるぞ人の勇者よ』

「神様か、日の方向ね…曇ってるけどあっちで合ってる?」

『…それとここと似たような遺跡か神殿に行けばワシと話せるからの』

「聞いてねぇなコイツ」

『誤差じゃろ、まあさっき教えた事を念頭に頑張ってくれ』

「直接人のいる所に送ってくれりゃあいいのに…」


 コイツほんとに神様か?雑だし。


「さて…どうすりゃいいんだ?神様の声も聞こえなくなったし」


 結局どっちに行けばいいのかわかんないし。

 …とりあえず歩くか。


 ――――――――――


 ひとまず歩きながら現状確認をする。

 服装は上下ジャージ、携帯や財布は無い。遺跡の周囲を探索したらカバンに数本のナイフ、使い道のよくわからない道具等々が入っていたので頂戴した。

 一応雲の間から日の光が見えたのでそちらに向かって進んではいる。一応自分は勇者という身分らしく、この世界には勇者の伝承が広まっているので人に合えれば何とかなる…らしい。


「ステータス」


 眼前に半透明の板が表示される。さっきここに放り出される前に神様に教えてもらったヤツだ。

 自分の状態や能力が確認できるらしいが………大した事書いてねぇな。

 この世界はスキル制、というやつらしい。魔術マジックと技術アーツの二つがあり、それぞれが細分化されている…ということまでしか教えてもらえなかった。

 まぁ今のところ何もない…超能力とやらを除いてだが。

 確認も終わったのでステータスを閉じる。と…


「マジかよ」


 周囲を犬?というより狼の群れに囲まれている。角があるので狼と呼んでいいのかわからないが。

 どうすりゃいいんだこれ。


「うおっと」


 突っ込んでくる狼を避ける、身体が軽くなったように素早く動ける。


「身軽になったな…これも制限のせいなのか?」


 ……よし、どこまでやれるかな。


 ――――――――――


 結果を端的に言えば。まぁ、いくら鍛えていて、身体が軽くなったとはいえ相手は肉食の野生動物、それも群れな訳で。二分くらいもったので良いほうだろう。

 ナイフも向けてみたものの刃を当てることこそできたものの大した傷も与えられなかった。

 右手と右足は動かない、左足からも血が出ている。逃げることもできないだろう。


 何より既にすぐ近くまで角狼達が迫ってきている。


「頼む…ぞ、神様」


 一番大きい角狼が飛び掛かってくる。

 そのまま首元に噛みつき鮮血が飛び散った


 ――――――――――


 残された神は一人思案する。しばらくの後、どこかへと移動した。

 向かった場所ば唯一の上位存在足りえる創造神の場所。


「創造神様、第48世界へと第23世界から一人、送り込んだぞい」

『第48世界...次の邪神が生まれる世界ですね』

「対話の結果、対価も蘇りという小規模なものに留まると思うからの」

『そのあたりの判断は任せます。その男は...世界を救えそうですか?』

「前回の第26世界から送り込んだ男よりは弱いじゃろうが...意思はありそうじゃ。心は強いじゃろうな」

『…期待しておきましょうか、第48世界が崩壊するまでの時間も10年程。この男が最後になるかもしれませんし...人間の力というものは我々(神々)の予想を超えていきます』

神が勇者として送る条件は

異能力が発現すること

対価を求め命を賭けるか

同じ存在が居ないか

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