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第3話□お金にならない!

前の治癒士さんが いなくなったのは半月ほど前だそうだ。教会に所属していた 治癒師がいなくなったのだから もう教会には戻れないはずだ。 別の組織に属するか 個人で仕事をするしかない。


私はここで腕を磨けと言われたが適当に腕を磨いたらおさらばした方がいいのではないかなと思う。 あまり有用なのが分かれば魔王討伐に駆り出されるかもしれない。この聖女 というのは知られない方がいいと思う。


まあそんな事はまだまだ先の話なので とりあえずは生きていかなければいけない。 教会は腕を磨けと言った割には全くお金を持たせてくれなかった。稼いで生きていかなければ。


私はこの世界に来てからまだお金というものを見たことがない。 確か銅貨が100枚で銀貨1枚になる。 そしてその銀貨が100枚で金貨1枚になるということは聞いた。銅貨 も10枚集まると大銅貨1枚になる。 銀貨も 10枚集まると 大銀貨1枚になるようだ。まあこの2種類は 500円玉みたいなもんかな。


価値は仲間から聞いた情報によると銅貨 1枚が100円程度と見ていいだろう。つまり 銀貨1枚が1万円ということになる。 金貨 なら100万円の価値がある。早く手にしてみたいものだ。


部屋の掃除も終わったので治癒院の方を始めようと思う。治癒院と言っても 待合室と診察室があるだけの仕事場だ。裏には 自分が住む家 がある。だが部屋がひとつとトイレと台所と井戸があるだけだ。


値段設定は前にいた人のものを参考にさせてもらった。切り傷や擦り傷や打撲や 捻挫ぐらいなら ヒールで治る。銅貨 10枚から20枚だ。しかし骨折になると ミドルヒールが必要だ。銀貨1枚になる。1万円で骨折がすぐ治るんならありがたいと思うけど。これ以上の大怪我になるとハイヒールが必要だ。 銀貨 10枚以上になる。


だけどこのやり方で 前任者は 夜逃げをするハメになった。ということは ここの人達ってお金持ってないんじゃないかな。スラム街だから当然なのかな。


掃除が終わってからだったので朝10時に治癒院を開けて 患者を待つことにした。さすがに私が来たことは近所の人たちから伝わってはいるだろうが そんなすぐには来ないだろう。なんて思っていたらすぐに 患者さんが来た。


「頼む手当てしてくれ」


「はい どうしましたか」


「ううう·······ちょっと包丁で切っちまったんだ」


何で包丁で切ったのに背中が切れてるんだよ。どう見ても喧嘩じゃないの。しかし血がいっぱい出ててグロいな。うぇ~。


「銀貨1枚になりますけど大丈夫ですか」


「はい お願いしやす」


「ミドルヒール!」


「うおー痛みが引いていく。 すげーな」


うん。完璧に塞がった。 跡も残っていない! これなら文句ないだろう。


「実は今金の持ち合わせがねえんだ。これで勘弁してくれ」


「ええ〜治したのにー!なんですかこれは?」


「魔獣の魔石だ!これなら 銀貨1枚の価値はあるぜ」


「だったら換金してきてくださいよ」


「その前に怪我しちまったんだよ」


「はあ~分かりました。次はないですよ」


これ絶対いわく付きの品じゃないの? 盗品だったりして。 次の患者さんからはお金をきちんと出してもらおう。


そう思ってこの後15人の治療に当たったがまともにお金を持って 来てくれた人はいなかった。


お金が足らない分はパンだったり野菜だったり果物だったりした。ひどいのになると 鉄くずや古着なんてのもあった。


なるほど これじゃあ 前任者が逃げるのも無理はないわ。一応今日のご飯は手に入ったけれど これじゃあ いつまでもつかわからないわね。


今日の稼ぎは銅貨が 45枚だ。あとはなんだかよく分からないものがいくつかある。うーん 、お金に変えられそうなものは魔石ぐらいかな。


これは他にお金を稼ぐことを考えないといけないわ。 治癒士だけでは とても生きていけない。


こういう時は町へ出て情報収集ね。 きっと何かしら いい話が転がっているはずだわ。と言っても夕方だし とりあえずこの魔石 だけ 換金してきましょうか。


冒険者ギルド という ハローワークのようなところが存在するらしいので そこに行ってみようと思う。お隣のおばちゃんに場所を聞いて歩いて出かけることにした。20分ぐらいで王都の南にある冒険者ギルドに到着することができた。


中に入ると大勢の人たちでごった返していた。 どうやら 依頼を達成した冒険者たちが 報酬をもらいに帰ってきてるところのようだ。


ギルドの脇の方には酒場が併設されており そちらでもう 酒盛りをしている 冒険者たちも数多くいた。私は30分ほど 並んでやっと魔石を売ることになった。


「冒険者ギルドへようこそ 本日はどのようなご用件でしょうか」


「この魔石を換金していただきたいのですが」


「分かりました。少々お待ちください。こちらはブラックウルフの魔石になりますので 銅貨80枚になります」


「それでお願いします」


やっぱり 銀貨1枚には届かなかった。そんなことだろうと思ったけどね。換金も終わったので帰ろうとしたら血まみれの男が運ばれてきた。


「誰かこいつの腕を治してくれ!報酬は払う!おお!あんた治癒士だろ?頼むよ!」


「はい。いいですよ」


見ると男の左腕は 二の腕が裂けており 骨折もしているようだ。これはまたグロいな。 なんか気持ち悪くなってきた。 しかしここは頑張らねばならない。


「まず 骨折を直しますから この人をしっかり押さえててください」


「おう!分かったぜ!」


男の人2人に体を押さえてもらって私は 複雑骨折した骨を ミドル ヒールでつなげた。次に切り裂かれている腕の治療をした。ミドルヒール3回で治療を終えることができた。痕も残っていないし 腕も動くようだし完璧だろう。


「嬢ちゃんすげえな゙!俺はこんな すげー 治療 見たことねえぜ。普通痕は残るし ひどい場合は後遺症 だって 残る」


「ありがとう 助かったよ」


銀貨5枚もらうことが出来た。思わぬ収入になったわ。 これでお肉を買って帰れる。私は治癒院の宣伝もしてその場を立ち去った。


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