第2話□治癒士になった
「異世界からきましたセイアです。よろしくお願いします」
「うむ 聞いている。私は王都大司教カミーユ·アンペールだ。とりあえず 他の治癒士見習いと一緒に修行に励め」
「わ、分かりました」
王都の教会の大司教と言っていたが若い女性だった。 20代半ば と言ったところかな。 きっと優秀なのだろう。
ここには大司教様をトップに 司教様 司祭様シスター等たくさんの人が働いている。
王都の教会には治癒士見習いが20人程居て日々 治癒士になるために努力をしている。年齢は10才から14才で男女比は同じくらいだ。 15歳になると成人だそうで それまでに 資格を取る必要があるらしい。私は14歳だからもう成人まで1年もない。
「ねえあなた召喚されてきたんでしょう。すごい力があるんでしょう?」
「いえ 私は全然大したことないみたいです。 こちらで修行しろと言われました」
「そうなの?私はアイシャよ。よろしくね!」
「セイアです。よろしくです」
アイシャに聞いたところ治癒士見習いの人たちは 魔力値が100前後だそうだ。 修行するとだんだん増えて行き 一人前になれば 200を超えるそうだ。そう考えると 私 の 魔力値 30はとても少ないのではないかと思う。
だいたい同じように召喚されてきたのに あっちの3人は魔力値が高くて能力もあり なぜ私だけこんなに低いのだろう。
私は魔法なんか信じていなかったからな。影響あるのかもしれないわね。これまで生活魔法や治癒魔法を見て否応なく信じる気になったわ。
修行部屋に魔力測定器があるのでそれで調べてみた。2、3回練習してから魔力値を測定したら80に増えていた。やはり信じる事は大切らしい。
私のステータスにスキルがあるらしいのだが何て書いてあるか分からないのがある。だから今のところ治癒士だけになる。
こちらに来てから言葉は通じるし書いてある文字も読める。書くのは時間がかかるが何とかなる。自動で翻訳出来るようだ。長さや重さの単位が同じなのはびっくりしてる。
私達は10人1部屋で生活している。ベッドが並んでいてロッカーがひとつあるだけだ。
私は治癒士見習い服を2着とパジャマと下着を2着もらった。この世界の服や下着はゴアゴアしていてあんまり着心地が良くない。なれるまでが大変だ。
下着はカボチャパンツで可愛くない。ブラジャーはあるがサイズが合わないので調整が必要だ。絶対に元の世界に帰ってやる!セーラー服はしまっていつもこの見習い服を着ている。
石鹸はあるがあまり良い物ではない。お風呂は公衆浴場に行けばある。しかしお金がかかる。 見習いは 衣食住 は保証されるがお金は得ることができない。 これじゃあ買い物もできない。どうすんだよ〜。
教会に認められれば患者を任せられることもある。そうなれば ある程度のお金を得ることができるようだ。 これでは 早く治癒魔法を習得するしかないじゃないか。
色々試してみたが 今の私の力だとヒールを1回かけるのに魔力を5必要とする。 だから今のところ ヒールは16回しかかけられない。 だが魔力は限界まで使うと容量が伸びるらしい。 だから 昼間から全力で使ってみたら気持ち悪くてぶっ倒れた。 それからは夜寝る前に使い切るようにしている。
修行を始めてから2週間が経った。私の魔力値は150になっていた。これはすごい伸びと言えるのかな。 他の人と比べたことがないからよくわからない。
私は特にヒールの詠唱をしなくても魔法が使えるようになった。 魔法はイメージが大切なんだそうだ。 だから 治る イメージさえつかめれば魔法を発動できる。
修行を始めて1ヶ月が過ぎた頃 私はミドルヒールを習得することができた。魔力測定器の数値は300になっていた。それともう一つ 今までわからなかった スキルの欄に聖女とあるのがわかった。
これはまずい! 聖女なんてものが出てきたら魔王討伐 一直線じゃないか。 これ なんとか隠せないものかな。とりあえず 測定器には近づかない方がいいかな。
「セイア!司教様が呼んでいるわよ」
「ありがとうアイシャ」
なんだろう?私たち女性見習い治癒士 10名を監督しているのはやはり女性の司教様だ。名前はアガート·チラールだったか。
「セイア参りました」
「うむ。セイア見習いは終わりよ。今日から治癒士として治癒院で働きなさい。そこでさらに力をつけるように努力しなさい」
「分かりました。あのお金はもらえるんですか?」
「もちろん 報酬はもらえるはず」
修行を始めてから1ヶ月 ついに治癒士になることができた。治癒院で働くことができるのだからほぼ一人前と認められたのだろう。 私は荷物をまとめて 王都の南にある治癒院へ向かった。
王都と言っても ずいぶん 南の方で 街の外れのような気がする。なんかとっても臭いんですけど。 家もボロボロなものが多いし道端には横になってる人が多い。 ひょっとして これはスラム街 なのでは?
ボロボロの街の中にボロボロの治癒院があった。中には誰もいなかった。あれ?誰もいない?どういうことなの?せっかく勤められるようになったと思ったのに。
「あんた 新しい先生かい?」
「はい。治癒士のセイアです。よろしくお願いします。 何で誰もいないんですか?」
「あははは 前の先生は割に合わないから 逃げちゃったのよ」
「ええー逃げた!?」
なんてこった。 ご近所さんの話ではこの治療院に来る人はスラム街の人々でまともに お金の払えないような人が多い そうだ。 前の先生はそれに耐えかねて出て行ってしまわれたということだ。教会は何で私をこんなところに送り込んだのだろう。まあ あいつらと一緒に魔王討伐に行くよりはマシかな。
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