表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネットアイドルの配信を手伝っていたマネージャーの俺、なぜかバズってしまう  作者: 木嶋隆太


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/100

95


「ええ。ですが、協会は国とともに最悪を想定する必要があります。そして……それは日本だけではありません。他国のクランも日本に足を運ぶことはありますが、彼らを制御するのも、冒険者協会の役目となっています」

「……そうですね」


 他国のクランに関しては、俺も聞いた事はある。

 日本はそもそも迷宮攻略や冒険者業に関しては大きく出遅れている。

 それは、日本の国民性が関与してのものであり、決して悪いことではなかったのだが、その遅れは確実に他国の差を広めることになった。


 日本にいるSランク冒険者は合計六人に対して、他国は二桁を越えるSランク冒険者がいる。

 何より、日本のSランク冒険者は……あまり強くない。他国に通用するSランク冒険者はサムライクランの一人のみだ。

 そういった理由から、他国の冒険者に舐められることは多くあり、それによって発生した事件もいくつか起きている。


「今は、私の力でどうにか国内、他国の冒険者たちを抑え込めている部分もありますが、それもかつての名声を利用してのものです。これからも、押さえ続けられるものではありません」


 秋雨会長は他国からの依頼で、暴走したSランク迷宮の攻略に参加したことがある。

 その際、危機的な状況からボスモンスターを討伐したらしく、他国から英雄のように扱われている。

 その秋雨会長の名声があるからこそ、日本の冒険者や安全が守られている部分は大きくあるだろう。


「ですので、今なお力をつけ、他国からも知られているお二人に力を貸してほしいと考えています。どうか、もう一度考えてはいただけないでしょうか?」


 秋雨会長が頭を下げてくる。

 今回の話、俺たちにとってはまったく悪いことはないだろう。


 秋雨会長は政府の迷宮省とも強い繋がりがある人だ。恐らく、会長も後任に立場を譲ったあとは、そういった関係の部署で仕事をするはずだ。

 彼とともに行けば、成功者としての人生が約束されるだろう。


 ……だけど、俺はあまりそれを魅力に感じなかった。

 澪奈に確認をして、彼女も断るという話はしていたが……その前から俺はこの話に興味を惹かれなかった。

 その理由は、たぶん簡単なことだった。


「……やはり、断らせてください」

「……理由を聞いても?」

「私は澪奈のマネージャーとして冒険者を始めました。別に本気で強くなりたいとかそういうことは一切考えていませんでした」

「はい」

「ですが、今は……澪奈のマネージャーなど関係なしに、強くなりたいと思っています。どこまで強くなれるのか、それに強く興味を惹かれていて……それらは、冒険者協会の仕事をしながらでは行えないことだと思います」

「……そうですね。私ももうしばらく迷宮には潜っていませんからね」


 協会の仕事は、迷宮の攻略を行うことではなく、ギルド、冒険者の管理だ。

 もちろん、誰にも見向きもされていないような迷宮の攻略を行うことはあるが、それらはだいたい低ランク迷宮となる。


 ……そんな場所に、たまに入ったからと言ってレベルを上げることはできないだろう。

 より難易度の高い迷宮に入り続け、さらに強くなりたい。

 それが今の俺の考えだった。


 澪奈がどこまで考えているかは分からないが、俺は少なくともこう考えていた。

 仮に、澪奈のマネージャーを辞めたとしても恐らく俺は世界中の迷宮に潜り続けると思う。


「ですので、断らせてください。俺の夢は……そうですね。世界最強になって澪奈の配信を支えたいだけなので」


 これまで明確に強さを求めたことはなかった。

 ただ、レベルを上げてより強い魔物と戦える。

 ……それを楽しんでいる自分がいた。

 俺の言葉に会長は驚いたようにこちらを見てから、微笑を浮かべた。


「それだけの力をつけてから、日本で暴れまわらないでくださいね」


 冗談めかした言葉とともに会長が立ち上がる。


「もちろんしませんよ。何かあれば、連絡をください。自分に手が空いているときは協力しますから」

「ありがとうございます。それと、検査に関しては事前に連絡を頂ければ撮影しても問題ありませんからね」

「……ありがとうございます。助かります」


 秋雨会長とともに会議室を出ると、彼はこちらを見てきた。


「本日は貴重なお時間を割いていただいて、本当に感謝します。くれぐれも、怪我だけはしないよう気を付けてください」

「はい、こちらこそわざわざありがとうございました。検査の日程が決まりましたら、また連絡します」

「ええ、お待ちしています」


 秋雨会長との話はそこで終わり、俺は一礼のあとギルドを後にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ