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「私も行っておきたい。配信する前に安全か確認したいし」
「それじゃあ行こうか」
迷宮がどんな風に変化したのか、景色的なものはすでに見ている。
だけど、まだ魔物は確認していないからな。
「難易度はDランクだよな? 大丈夫かな」
「Gランク迷宮のボスモンスターがFかEランクくらいって聞いていたから、ちょっと大変かもしれない」
「だよな。もしまったく歯が立たないってなったら、別の迷宮でレベル上げしないとだよなぁ」
「うん。でも、そのときはそのときまた考えよう」
澪奈の言う通りだな。
今はひとまず、新しい迷宮に対する期待感が強い。
……俺は澪奈のフォローをしつつ、自分も冒険者として一流を目指したいと思っているからな。
着替えなどの準備を済ませるため、俺は一度トイレへと向かう。
昨日の澪奈の転びそうになったことを考えた結果、澪奈がそういう時間になったら俺はトイレに隠れたほうがいいのではと思ったからだ。
そういうわけでトイレに避難した俺は、昨日の予想外の迷宮騒ぎで確認できていなかった二つのことを確認する。
まずは、装備だ。ゴブリンリーダーがドロップした装備品を確認してみる。
ゴブリンリーダーの指輪 ランク7
効果:【筋力+6】【速度+6】
スキル:【鼓舞】
……おお! なかなかの装備品だ。
澪奈が倒して入手したものだが、澪奈に戦ってもらう場面などでは俺が身に着けたほうがよさそうだな。
そもそも、アクセサリー系の装備をつけても澪奈のステータスが大きく上昇することはないし、これはしばらく貸してもらおう。
スキル【鼓舞】はゴブリンリーダーがゴブリンに使用していた強化スキルだよな。
これを使えば、澪奈のステータスを一時的に強化できるはずなので、多少相手が格上でもどうにかなるかもしれない。
これに関してはあとで検証してみるとして、次にショップだ。
ショップのスキルブックを確認してみると、【鼓舞】のスキルが増えている。
これは一応確認済みだったが、改めてだ。
やはり、スキル持ちの魔物を倒すことで、スキルが増えていくという認識で良さそうだ。
あとは、ショップか。
ショップの品ぞろえが更新されていて、装備品が四百万まで増えていた。
ランクが1上がると、装備の性能が+3されていくようだ。
装備に関しては装備制限がある以上、より高額の品を身に着けたほうが強くはなれるが……四百万円の品を買えるようになるのはいつになることやら。
……ショップの更新に関しては、迷宮を攻略したからだろうか? それとも、俺のレベルが上がったからか?
考えても分からないことだな。
「マネージャー、着替え終わった」
トイレがノックされ、澪奈の声が聞こえたのでトイレから出る。
澪奈は動きやすそうなジャージに身を包んでいる。彼女の洗濯物と俺の洗濯物はドラム式洗濯機に入れて、まとめて洗濯する。
乾燥機付きなので、迷宮の下見を終える頃には終わっていることだろう。
準備を終えた俺たちは、改めて迷宮へと入る。
中に入ると、明るい空が見えた。
気温は……寒くもなく暑くもない。
体を動かすことを考えれば、半そで半ズボンくらいでいいかもしれないな。
ひとまずはこの迷宮の調査からだな。
結構広いな。
どこにどんな魔物がいるのか……魔物のレベルはどうなのか? ボスモンスターは? それに、自然に生えているもので採取可能な道具はあるのか?
それらが非常に気になるところだ。
「自然が多くていい感じだけど……蚊とかいないかな?」
「そうだなぁ……」
蚊に刺されは酷いときは跡が残ってしまう。
澪奈の肌に残ってしまうと、わりと致命的だ。
周囲を見た感じ、そういった生物はいなそうだし、今後も現れないことを祈るしかない。
草原を歩いていくと、向かいに一匹の人型の魔物を発見する。
あれは――ワーウルフだ。
まだ向こうはこちらに気づいていないが、獲物でも探しているのかすたすたとこちらに背中を向けたまま歩いている。
「……やっぱり、少し迷宮と違うよな。初めから出現してるなんて」
「迷宮は、私たちの動きに合わせて魔物が出現するから……確かに少し違う」
澪奈の言葉に頷く。
迷宮の魔物が自然発生することはない。
普通の迷宮では、魔物が発生する地点が決まっており、一定の範囲に踏み込んだ時点で魔物が発生する仕組みになっているのではと予想されている。
製作者にインタビューできるわけではないため、予想の域を出ないのだが、俺も似たような感じだと思っている。
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