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次の日。
なんか、昨日の生放送がバズっていて、ニュースなどでも取り上げられていた。
登録者はもちろん、昨日の生放送を再生してくれている人もいるようで、めちゃくちゃ伸びていた。
朝から澪奈のTwotterにテレビ局から取材の依頼もあり、ひとまず簡単に取材を受けて……今に至る。
その撮影されたインタビューは昼頃にはもうテレビで流れていた。
それだけ緊急のニュースだったということだろう。
ここまでフットワークが軽いことに軽く驚きはあったが、だからこそテレビがメディアの一つとして長年人気だった理由なんだろう。
想定外の地上波デビューだったな……。
澪奈だけではなく、俺までも一緒にインタビューを受けてしまったのだから、人生分からないものである。
「澪奈、今日も配信する予定だけど……大丈夫か? 疲れ溜まってないか?」
「うん。インタビュー自体はすぐ終わったし」
「それならいいんだけど……あれ?」
生放送の予定は夜からだったので、その前に一度諸々確認しようかと思っていると、俺のスマホに着信があった。
……高野からだ。
もちろん、俺が所属していた『スピードフォーク』の先輩だ。
まあ、あまり出る必要もないし連絡先を消そうかと思ったが、一応退職後の何か法的な処理とかの連絡の可能性もあるわけで……。
この前も花梨、麻美、高野からの連絡では罵倒ばかりだったので出るのに少し迷っていたが、
「マネージャー。改めて、話したいこともあるし出てみたら?」
「……そうか?」
澪奈の話したいことは分からなかったが、早くしないと電話が切れてしまうと思ったので、通話に出ることにした。
澪奈も聞きたがっていたので、スピーカーモードにしてだ。
「……えーと、お疲れ様です。どうされたんですか?」
『……おい、茅野! てめぇ、花梨と麻美の変な噂流してんじゃねぇぞ!』
「……どういうことですか?」
『あいつら、配信するたびにどんどん変なことばっかり言われてんだよ! ネットでは好き勝手言われてな! おまえがなんかしてんだろ!?』
……それは、恐らく二人の能力不足が原因だ。
完全に能力がないわけではない、と思う。
ただ、決定的に集中力がなく、飽き性だ。……それを必死に取り込めるように俺はしてきたのだが、どうやら高野がマネージャーになってからも同じようだ。
……高野は、そこら辺もすべて知っていたんじゃないようだ。
「こちらからは何もしていませんよ……評価が低いのは、見直して改善していくしかないんじゃないですか?」
俺も前に所属していた場所なので、多少は二人の様子も見てはいた。
……高野の言う通り、評価はどんどん下がっているようだ。
登録者数も少しずつ減っていってしまっていて、何かテコ入れが必要なのは確かだ。
『まあいい。……とにかく、茅野。さっさと澪奈を事務所に戻してくれよ!』
「……それ、以前断らなかったですか?」
『直接会って話せば考えも変わるだろ!? とにかく頼む! 今はチームをまとめる人間が必要なんだよ! 戻ってこい!』
……お願いしている立場からは考えられないような怒声が返ってくる。
そう考えていると、突然向こうで声が上がった。
何かやり取りをするような音が聞こえた後、
『おい』
……高野から別の人間に変わった。
これは、恐らく社長だ。
「……なんですか?」
『茅野。おまえ、事務所の悪い噂流してんだろ!? ブラック企業だなんだと色々言われてんだぞ!?』
「いや……その……」
困った。それに関しては直接は口にしていないが、異常な勤務時間であるような発言はしてしまっている。
答えに窮していると、
『まあ、いい。さっさと事務所に戻ってきやがれ』
「……へ? 何のことですか?」
『察しの悪ぃやつだな! だから、いつてめぇと澪奈が事務所に戻ってくるかだよ! さっさと戻ってこい!』
まったく、話が見えてこない。
怒号を張り上げる社長に、俺が首を傾げながら問いかける。
「いや……俺たち事務所を脱退させられましたし、戻る理由はないですよね」
『あああ!? 誰が、てめぇらを育ててやったんだ!? 使えなかったてめぇを育ててやったのは誰だ!?』
育てて……もらっただろうか?
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