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〈収益化おめでとうございます ¥1000〉
〈頑張ってください! ¥500〉
開始してすぐに、スーパーチャットが流れてきてしまった。
……なんと早いことか。嬉しいことではあるがまだ挨拶もしてないからな……。
澪奈も気づいたようで、こちらに視線でアピールしてくる。
……先に触れたほうがいいと判断したようで、俺も頷いて返した。
「あっ、ありがとうございます。スーパーチャットに関しては最後にまとめて、読み上げますから……とりあえず、ありがとうございます」
ぺこりと澪奈が頭を下げてそう伝えたところで、俺も配信の概要欄に、その旨を書きこんでおく。
それから、澪奈が両手で軽くピースを作った。
「それでは、改めまして。皆こんばんは。澪奈とマネージャーの迷宮攻略のお時間です。とりあえず今は九階層に来てます。今日は中ボス? ボス? とにかく、十階層にいるゴブリンリーダーを倒しに行く予定ですが、途中の戦闘で疲れてしまわないよう、マネージャーに道中の戦闘をお願いする予定です。私はコメントと話してますから、マネージャー。よろしく」
「分かりました」
〈楽しみです!〉
〈初見です。マネージャーさんも戦えるんですね〉
澪奈の宣言通り、スマホを預ける。
とりあえず九階層の戦闘は俺が基本的に行う予定だ。
始まってすぐはコメント欄も活発なので、澪奈にはそちらの対応をしてもらったほうがいい。
「さっき気付いたけど、マネージャー、白髪が混ざってる」
「変なところズームしないでください」
澪奈が俺を映して楽しそうに笑っている。コメント欄が気になるが、俺はさっさと先導して魔物狩りへと向かう。
道中のゴブリンを倒しながら、澪奈が快活に話していく。
コメントに返信し、他愛もない雑談をしながらも、時々ゴブリンリーダーについての解説もしていく。
「マネージャーがロケハンしてくれたけど、ゴブリンリーダーの仲間は一体残しておけば追加で呼んでこないみたい。だから、一体残して戦うのが良さそう」
「うん、そんな感じ。マネージャーは昨日一日迷宮で鍛えて準備してくれてたみたいだから、万が一の場合もなさそう」
「そうそう。ゴブリンリーダーを倒せるくらいにはなってるみたい。うん、うん」
そんな友人との会話のような感じで言っていた澪奈をちらと見ると、彼女が丸印を作っていた。
……どうやら、十階層に行ってもいいようだ。
「そろそろ、十階層に挑もうと思うから……私も少し体動かしたい。マネージャー、交代してもらっていい?」
「分かりました」
返事をしてから澪奈からスマホを受け取って確認すると、視聴者は1500人を超えていた。
……あれ? マジで?
こんなにいるとは思っていなかった。
〈マネージャーさん、お疲れ様です〉
〈めっちゃ強いですね!〉
と、わりと好意的なコメントが多い。
とりあえず、ほっとする。
そこからは澪奈の戦闘シーンだ。俺はできる限り近くで撮影するため、彼女に近づく。
ゴブリンが現れたところで、澪奈がさっと銃を取り出して構える。
そして、そこからは魔銃を乱射して仕留める。
澪奈が戦闘を開始すれば、澪奈に関してのコメントが増えていく。
……うん、こっちのほうが落ち着くな。やっぱり俺はこのほうがいいな。
澪奈の様子を撮影しながら進んでいくと、十階層へと着くころには2000人を突破していた。
……おお、この前くらいの人が集まってきてくれているのか。
同じ人が見ているわけではないと思うが、前回見てくれた人が来てくれているのも事実だ。
確実にファンを増やしている。
そのことに満足していると、澪奈が深呼吸をする。
「ちょっとお茶休憩」
といったので、俺はさっと彼女に飲み物を渡す。
澪奈が飲み物を飲みながら、生放送を確認して話を始める。
「あれ? いつの間にか結構人集まってる?」
〈初見です。ゴブリンリーダーと戦うって聞いていたので〉
〈ゴブリンリーダー気を付けて! ¥1000〉
〈迷宮の生放送とかってもっと大人数でやるものだと思っていました。二人で大丈夫ですか?〉
「心配してくれてありがとー。ゴブリンリーダーに関しては、前回も少し戦ってるから大丈夫、だと思う。……それじゃあ、あんまり待たせても悪いし、そろそろボスに挑もっか」
澪奈の問いかけに頷いて返してから、歩き出す。
十階層へ下り、少し進んだところでゴブリンリーダーが出現した。
「ガアアア!」
威勢よく咆哮を上げたゴブリンリーダーに、澪奈が剣とハンドガンを構える。
……いよいよだ。視聴者の盛り上がりも頂点に達している。
この戦闘を、きちっとカメラに収めないとな。
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