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「ゴブリンリーダーは私が今挑んでも勝てそう?」
「余裕、とはいかないな。でも、ステータスポイントを割り振ればどうにかなると思う。あと、経験値稼ぐなら十階層がめっちゃ効率良かったな」
「確かに……雑魚をずっと呼んでくれるなら凄い便利。ゲームでこういう稼ぎ方したことある」
「そうだよなっ。いや、俺も戦闘中に同じことを思ってな。とりあえず、今後はそこでレベルをあげていくのがいいと思うんだよ」
意外なところで意見があったな。
今後のスケジュールについて打ち合わせていくと、澪奈が首を傾げてくる。
「今週の放課後に、生放送を行って魔物狩りをしていくってのは大丈夫?」
「大丈夫だ。ただ、制服のままだと学校が特定されるから、なんでもいいから服を用意しないとだな」
まあ顔出しで活動している時点であれだけど、制服まで分かるとさすがに問題だからな。
「そっか。それなら服はマネージャーのインベントリに預けておいてもいい?」
「ああ。大丈夫だ」
「すーはーしてもいいからね」
「しないぞ?」
「しないの!?」
「今までに聞いたことないくらいの声上げるじゃん……しないって」
「私はしたのに……」
「絶対澪奈に服は預けないからな……ん? した?」
今聞き捨てならない発言が聞こえたような……。
「とりあえず……今日はちょろっと迷宮で体動かして明日から時間があるときに生配信? でも時間帯は考えたほうがいい?」
「そうだな……澪奈のことを考えると、二十時くらいまでには切り上げたいけど、むしろ二十時から二十二時くらいが一番視聴されるんだよな……」
社会人や学生などが落ち着きだす時間帯だからだ。
……まあ、俺はまだそのときは職場にいることがほとんどだったけど。
「それなら大丈夫。両親には伝えておくから」
「……んー、まあ分かった」
今は事務所も関係ないので、時間に関しては自由だな。
あとは、夜遅くなってから出歩くのが問題になるくらいか。
二十二時以降だと補導される可能性もあるしな。
「それなら十九時三十分からの二時間くらいでどうだ? 出発はもうちょっと早めにするとして、迷宮から出てきて家に戻れば二十二時までには着くよな?」
澪奈の家までここから歩いて三十分くらいだ。俺たちのステータスも上がっているので、走ればもっと早く着くだろう。
俺の提案に、澪奈が名案を思い付いたような顔を作る。
「毎日泊まれば問題ない?」
「別の問題があるからダメだ」
「そっか……子どもができちゃうもんね……」
「両親が心配するからだ!」
「両親の心配……学校行きながらの子育ては大変とか?」
「すでに手を出したあとじゃねぇか! 違う。もっと単純な心配だ」
「でも、毎日は無理でも金曜日くらいはいい? できるだけ長く生放送して、皆に見てもらいたい。それに、順当にいけば金曜日くらいにゴブリンリーダーと戦ったほうがいいと思う」
「……そう、だな」
配信というのは、難しい。同じことをだらだらやっていても、既存のファンなら喜んでくれるが新規の獲得は難しい。
常に、新しいコンテンツを提供していかないとすぐに飽きられてしまう。
……世の中、たくさんの配信者がいるわけだしな。その中から澪奈を選んでもらうには、やはり面白いものを提供し続ける必要がある。
あまり一つのコンテンツをいつまでも引きずらないようにしなければならない。
そう考えると、火曜日と木曜日はできないと澪奈が言っていた。
……動画をあげてから何も活動しないとそれはそれでファンの子たちを心配させるだろう。
水曜日で簡単に十階層までを配信して、それから金曜日でボスとの戦闘を行うのがちょうどいいだろう。
「金曜日より、土曜日のほうが視聴者増える?」
「まあ、増えるかもしれないけど、そのために一日先延ばしにしてもな。毎日行動していったほうが視聴者もついてきやすいと思う」
「そっか。それなら、金曜日は攻略して祝勝会でお泊りで」
「……お泊りって……はあ、分かった。その代わり、親御さんにちゃんと確認しておくんだぞ」
「分かった」
今日澪奈の家に行った時に両親にも挨拶をしておこう。
澪奈から話したとはいえ、やはり直接話したほうがいいだろう。
「それじゃあマネージャー。これからちょっと迷宮で体動かしに行ってもいい?」
「ああ。そうだな。俺ももうちょっとレベル上げておきたいしな」
明日からが本番なので、今のうちにできるだけ準備しておいたほうがいいだろう。
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