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仮に、そういった行為で手に入れた地位があったとして……それを守るためには結局能力が必要だと思っているからだ。
澪奈はスマホをじっと弄り、いつも通りの無表情気味な表情でこちらを眺めていた。
この三人に実質的なリーダーというものは決めていないが、もっとも能力が高いのは澪奈だ。
その澪奈が花梨と麻美に向けると、二人はあっさりとした様子で答える。
「いや、まー、別にいいって感じ?」
花梨はあっさりとそういった。
「高野さんから聞いたけど、別に大したことじゃなさそうだし。ていうか、それで有名人になれるならむしろお得っていうか。一回股開けば大金手に入るかも、ってことでしょ?」
「ねー。私パパ活とかで稼いでるし、別にいいって感じかな?」
「おまえ……だからそういうのはやめろって」
別にパパ活を否定するつもりはないが、MeiQuberというのは印象が大事だ。
パパ活に関しては賛否両論様々な意見があり、そういった後に漏れたら荒れそうな行為はしないほうがいいに決まっている。
俺の言葉に、麻美と花梨は苛立った様子で言ってくる。
「ああ、もううるさいよ。茅野さんはもうあたしたちのマネージャーじゃないでしょ?」
「そうそう。高野さんはレッスンとかもそんなにやらなくてもいいって言ってるし、茅野さんは本当面倒くさいっていうか、まあ、そういうわけであたしたちとしてもマネージャー交代してほしいんだよね」
「そうそう。高野さんかっこいいし」
……そうか。
二人がちゃんと理解して、決断しているのなら俺が止める理由もないだろう。
悔しい思いはある。
俺が『ライダーズ』を結成したのが二十歳のとき。今年で三年目になり、順調にステップアップしていたところをすべて掠めとられるのだから。
でも、彼女たちがそれだけの覚悟を持ってMeiQuberとしての活動を続けたいというのなら、俺の考え方とは合致していなかったというだけだ。
……唇をぎゅっと噛んでから、息を吐く。
俺が駄々をこねるような内容じゃない。割り切るしかないだろう。
「頑張れよ。花梨も麻美もテレビに出るようになるかもしれないんだから……もっとちゃんと時間を守れるようになるんだぞ?」
澪奈はまあ……今でも十分大丈夫だが、この二人は時間にかなりルーズだ。
約束した時間に来ないことはザラにあったため、俺は最後に一言、それだけは伝えておいた。
しかし、俺の言葉は二人には届いていないようだった。
「はいはい、うざいからもうマネージャー面するのはやめてね」
「そうそう。もうマネージャーじゃないんだから」
二人がひらひらと手を振っているが、俺はもう伝えることは伝えた。
俺が高野たちに目を向けると、勝ち誇ったような笑みを向けられる。
「そういうわけで、これからは僕が担当になりますから、茅野さんはすぐに荷物をまとめて会社を出て行ってくださいね」
「自己都合での退職だからな。わんわんわめくんじゃねぇぞ」
ケラケラと笑っていた彼らに、悔しかったが、そこで何か言っても余計に惨めな気持ちになるだろう。
俺はすっと頭を下げて歩き出そうとしたときだった。
「それじゃあ、私も辞めるから」
これまで沈黙を貫いていた『ライダーズ』の実質的なリーダーである澪奈が、ぽつりと呟いた。
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