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「マネージャー、どう?」
「とりあえず、ここまでは大丈夫だ。ゴブリンとの戦闘シーンに行こうか」
「うん。あと、撮影してて思ったけど、物件の内見みたいな感じで迷宮解説するのってどう?」
「ほのぼのな雰囲気と戦闘のギャップとかでありかもな。ちょっと色々撮影してみようか」
澪奈は台本を作らずともある程度まとまった話ができるから、撮影が楽なんだよな。
たまにふざけたジョークを飛ばすが、カット場面で入れるだけだからな。澪奈の息抜きだと思えば、そのくらいは別にいい。
花梨と麻実は台本をきちんと用意して、カンペを見せながらだったのでとても大変だったからな。
……いやいや。あまり比較するのは良くない。
この動画は、明日にでもあげればいいだろう。
色々と意見をかわしながら、澪奈とともに迷宮の撮影を行っていく。
ここからは、どこが動画として使えるかわからないので、カメラは回しっぱなしだ。
「ここが迷宮の一階層です。ちょっと暗いけど、カメラ大丈夫ですか? マネージャーが丸を作っているので大丈夫みたい。というわけで、本日のオフ会一人目、ゴブリン」
現れたゴブリンに澪奈が手を向ける。
俺は二人が映るように下がると、澪奈がさっと魔銃と剣を構えた。
そして、ゴブリンの突撃に合わせて澪奈も駆け出す。
振りぬかれたゴブリンの棍棒をかわし、澪奈は剣を振るう。
ゴブリンの足を浅く斬りつけ、ゴブリンの動きが鈍る。
距離をとった澪奈が魔銃を連射する。
……慣れた射撃で、寸分の狂いもなくゴブリンに命中する。
……これが、スキルの力なのか。
剣と銃を合わせた戦闘は、澪奈にとってかなり様になっている。
ゴブリンはなすすべもなく崩れ落ち、澪奈がカメラへと近づいてくる。
「ということで、ゴブリンさん、ありがとうございます。私、最近違う武器を使ってみたんですけど、どうにもこのほうが調子がいいみたいだから、これからはこのスタイルで戦闘していく予定です」
剣と銃の戦闘は、問題なさそうだな。
澪奈を後ろから撮影しながら、迷宮を進んでいく。
途中、撮影係の俺を狙ってきたゴブリンがいたが、蹴り飛ばして仕留める。
「マネージャー、凄い強い」
「俺が強いっていうよりか、装備品で補っている感じだな」
「そういえば……ショップでの購入ってお金とか必要ないの?」
「必要だぞ。1円=1ゴールドだ」
「……この魔銃はいくらだった?」
「五万円だったな……まあ、気にするなって」
「いや。気にする。マネージャー、お金あるの?」
デリケートな部分を聞いてくるな……。
「ま、まだ一応貯金は残ってるからな」
「……そっか。でも、マネージャーこれからの給料どうする?」
「……それなんだよなぁ。アルバイトでもするかなぁ」
迷宮で稼ぐ、というのも手段の一つではあるかもしれない。
ショップには飲食物もあるので、いくらでも生活はできると思う。
ただ、そもそもGランク迷宮だと稼げる金額も微々たるものになりそうだからな……。
朝から晩まで潜り、ようやくアルバイト3時間くらいの時給くらいになる可能性もある。
「一応、私の収益に関しては自由に使って大丈夫だから」
MeiQuberが活動する動画サイトはMeiQubeという名前だ。
ここでは、チャンネル登録してわりとすぐに広告などの申請が通るので、恐らくすぐに収入自体は発生するだろう。
「いやいや、何言ってんだ? 一応独立したんだから、これからの収入は全部澪奈のものだぞ?」
……まあ、ある程度稼げるようになった俺も澪奈に正式に雇ってもらうとかはありかもしれないが、別に今すぐたかるような真似をしなくてもな。
「夫婦の財産は共有だから、気にしないで」
「夫婦はそうだな。俺たちの関係は?」
「夫婦」
「マネージャーとMeiQuberだ」
「似たようなものじゃない?」
「全然違うぞ。……とりあえず、まだお金に余裕がある間は俺も冒険者として稼ぐつもりだ。強くなっておけば、澪奈の身に何かあったときに守ることもできるしな」
「……ま、マネージャー」
なぜか澪奈は照れた様子で頬を赤らめている。
俺が首を傾げていると、澪奈はこほんと咳ばらいをしてから口を開く。
「うん、わかった。でもお金で困ったら言って。私、ほとんど貯金してるからお金は結構ある。とりあえず、装備品に関しては自分のお金で買うから」
「……了解」
本当は俺が準備してやれればいいが、さすがに俺もかっこよく宣言できるほどの余裕はない。
すでに自分の装備を購入して結構使っちゃってるしな。
先ほどの会話はもちろん動画では使うことはない部分だ。
それから澪奈とともに迷宮の五階層まで到着した。ここまで戦闘では全く問題がなかった。
……装備を整えただけでここまで変わるとはな。
「そろそろ一度戻って編集する?」
……確かにもうかなり撮れたし、一本の動画を制作するくらいはできるだろう。
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