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「おお……うまいな」

「練習した。短剣のときに使えそうだったし」

「MeiQuberとしてか?」

「そう。あと、以前マネージャーと歩いているときに風が吹いて、スカートを抑えたとき、マネージャーがこっち気にしてたから」

「それはあくまで澪奈を心配してだからな? 他意はないからな?」

「ちらり」


 澪奈がスカートの裾を持ち上げ、俺は思わずそちらを見てしまう。

 慌てて視線を澪奈の顔に向けると、にやりとからかうように口元を緩めている。


「男なら見られるものは見たくなるんだよ」

「ほかにもあるの? あと何に吸い寄せられるの?」

「……それ言わないとダメか?」

「うん。男性マネージャーの利点は、男性ファンの需要を伝えてくれる点だと思うから。はい、どうぞ」


 手をマイクに見立てて近づけてきて、俺は小さく息を吐く。


「……例えば胸元とか?」

「大きいからとか?」

「大きくなくても、服の間からちらって見えそうになったらつい視線が集まるな」

「なるほど。ほかには?」

「……いや、もういいだろ。逆に聞きたいけど、澪奈とか……女性はないのか?」

「人によるかも。私の場合、二の腕とか好きだからよくマネージャーの見てる」

「……え、マジで?」

「マジ。あと夏場とかマネージャーがシャツをパタパタして涼しくなってるけど、そのときにちらちら見える腹筋に興奮したりしてた」

「おまえって興奮してたって口癖だよな」


 実際、本当に興奮しているのではなく、過剰な表現のほうが人の意識をひきつけやすいからわざと言っている部分もあるのだろう。


「うん、素直だから」

「はいはい。とりあえず、練習がてら動画の撮影でもしてみるか?」

「やってみよう」


 澪奈がすっと何度か深呼吸をする、俺がスマホを構えて準備をしたときには、澪奈はすっかり撮影モードに入っていた。


「そういえばチャンネル名って、どうしよう」

「澪奈の迷宮攻略チャンネルとかでいいんじゃないか?」

「でも、それだとマネージャーの要素が何もない」

「俺の要素は必要ないだろ」

「ダメ。カップルチャンネルなんだし……」

「勝手にカップルにするな」

「でも、マネージャーも戦えるなら多少は意識したほうがいいかと思って。一緒にトップMeiQuberを目指すんだし」

「いや、俺は大丈夫だ」


 そもそも、澪奈は女性なので男の影がちらつくと、それだけで評価が下がる可能性もあるからな。

 もちろん、カップルチャンネルというのも需要はあるみたいだが、澪奈の場合はソロのほうが絶対いいに決まっている。

 俺はいないものとして扱ったほうが伸びるはずだ。

 カメラで撮影を開始すると、澪奈が咳払いのあと口を開いた。


「皆さんに、大事なお知らせがあります。これから私澪奈とマネージャーのカップルチャンネルで活動していきますので――」

「澪奈?」

「ラブラブチャンネルの間違い。ごめんなさい」

「カットだぞ?」


 そんなやり取りをしつつ、戦闘の風景などを撮影してみていった。


 迷宮内での撮影に関して明るさなどは少しきになるが、特段大きな問題はなさそうだ。

 お試しでの撮影を無事終えたところで、俺たちは部屋へと移動する。

 チャンネルに投稿する初めの動画として、事務所脱退、ソロでの活動、今後の活動についてを語るための動画を撮影するためだ。

 部屋に戻ったところでスマホのカメラを澪奈へと向ける。

 

「準備はできたから、いつでも初めていいぞ」

「分かった」


 澪奈は一つ深呼吸をしてから、表情を引き締める。

 彼女の集中を感じ取った俺は、その様子をじっと眺める。

 そして、彼女の唇がゆっくりと震えた。


「皆様、初めまして。私は元『ライダーズ』の澪奈です」


 丁寧に頭を下げた澪奈が、それから事務所を脱退したことなどを話していく。

 ……背景が俺の部屋であり、少しみすぼらしく感じるがそこはどうしようもない。


 俺たちが事務所を辞めることになったきっかけなどの際どい部分に関してはうまく濁しながら、今後の活動についてを語っていく。


 花梨と麻美とは意識の違いからあまり仲良くなかった澪奈だったが、今回の撮影では二人を気遣うようなことを話していた。

 思うところはあれど、事務所を批判したところで意味はないしな。

 俺もそこは同じ気持ちだ。


 澪奈は最後に、「お互い頑張っていこう」というような意味合いの言葉を残し、それから澪奈の今後についての話へと変わっていく。

 ここからが、一番重要だ。俺は少し場所を移し、澪奈とともに玄関へと来ていた。


「――私もこれから冒険者として活動をしていきますが、時間のあるときに迷宮攻略をやっていこうと思ってます。マネージャーに聞いてみたところ、なんとマネージャーの部屋に迷宮が発生したらしいので、今はマネージャーの部屋に来ている、というわけ」


 てくてくと澪奈が玄関から上がっていく様子を俺が背後から映している。

 撮影用に、散らかっていたものは片づけてあるので、部屋はインベントリのおかげもあって綺麗だ。

 それでも不特定多数の人に見られる可能性があるため、恥ずかしいものはある。

 澪奈を追うようにスマホを動かしていると、ばっと澪奈が片手を向ける。

 その方角へスマホを向けると、そちらには黒い渦があった。


「それがこちらの迷宮です」


 それから澪奈が一呼吸を置いた。

 まるで、ここでカットでも挟んでくれとばかりの沈黙の後、


「私とマネージャーの愛の巣に現れたこの迷宮……速やかに攻略しないといけません」

「カットだからな」


 やる気に満ち溢れていた澪奈にぼそりと返し、そのあとまた編集点を作ってから澪奈が口を開く。


「迷宮調査課に依頼して確認してみたところ、迷宮はGランク相当だったみたい。市への攻略依頼は詰まってるみたいでしばらくはダメみたいなので、私が攻略してあげることにしました。それじゃあ、さっそく……迷宮へゴー!」


 澪奈がそういってぴょんと跳んだ。

 ……うん、この後に迷宮の一階層に移動ね。




ここまで読んでいただきありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんでこの手の女子たちは告白すっ飛ばして行き過ぎた好意を表明してくるんだか。
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