山田の喜び
「おいお前いつまで着いてくんねん。俺はピクミンかっての!!!(激寒ツッコミ)」
「いやそれを言うなら私がピクミンでしょ。あんたがキャプテンオリマーを名乗ってほしいと思いました。」
サタデーナイト山田のツッコミに対して女の子は超マジレスクソ正論で返す。山田は「いやぁそんなこといわないでよぉ」とゴミ陰キャみたいな言い方で少し反論して再び黙り、歩き出す。
今日も山田は名もない山を歩く。ただいつもと違うのは一人ぼっちじゃないということだ。
(やべぇぜ! 基本的に出会った人間を全員殺してたから会話自体が超久々だぜ……。言うて会話なんてしなくても何も気にならなかったからな! どんぐらい気にならなかったかと言うと足の薬指の爪ぐらい気にならなかったぜ。)
意味分からん例えを脳内で出しながら、内心は要するに美少女と居れて楽しいのだ。
「そういえばまだ私の名前言ってなかったわね。私の名前は『スペード』よ。よろしく」
「よろしくなスペード、俺はサタデーナイト山田だ!」
「それって本名?」
「本名だ。なんか文句あっか。」
「いやぁすんごいバカみたいな名前で逆に芸術的で素晴らしい名前をしているなと思いました。」
山田はそう言われて、勢いでスペードの首を再び吹っ飛ばした。数十メートル先まで飛んでいく。首が無くなった身体はおろおろとうろたえていてなんかウケる。そして数秒後に、首が飛んでいった方向から何やら悲鳴が聞こえた。
「ん、何か聞こえたな。また食糧にありつけるかもしれねえ! イクゾー!」
スペードの身体を持って一直線に山道を駆け降りる。山を渡り歩いているだけあってとてつもなく早いスピードで悲鳴の元まで辿り着いた。
そこにいたのは、数人の盗賊が老人を取り囲んでいるところだった。恐らく盗賊たちは老人が持つ食糧を狙っていたんだろうが、めちゃくちゃ運悪くスペードの飛んでった頭が老人の頭蓋をぶち破って絶命させているようで、そのせいで持っている食糧のほとんどが地面に転がって食べられなくなってしまっている。
「テメェか、せっかくの食糧をこんなにしやがった野郎は!」
「その通り」
「殺す! テメェの小腸を大腸にしてやる!(意味不明)」
意味不明な喧嘩文句を吹っかけながら盗賊数人が剣を持って襲いかかってきた。
「俺の豪烈覇斬拳の前には刃物など無意味だ! 俺の腕に当たるものは全てホームランになるのだ」
山田は呼吸法によって腕を鋼鉄のように硬くさせた。そして刃物が腕に当たる。だが腕には一切刃が食い込まず、逆に刃は一瞬にしてボロボロに刃こぼれしてしまった。
「なっ、そんなバカな。これはやべぇ逃げるぞ!」
「逃がさねぇぜ」
山田は逃げようとする盗賊に一瞬にして追いつく。
「豪烈覇斬拳、五の技! 狗首覇斬!」
盗賊全員の首をいっぺんに斬り飛ばす。サタデーナイト山田の大勝利! つよい!
「ふぅ、コイツら結構食糧持ってるぜラッキー!」
「一週間ぐらいは持ちそうね。」
盗賊はそこそこたくさんの食糧を持っていて、いつのまにか首が元通りになっているスペードと一緒に喜びまくった。
その流れで、もうすでに死んでいる老人の食糧でも何か食べられるものがないかを漁ろうとした。そのとき、老人の服から手帳がはみ出して見えていた。
「なんやねんこれ」
山田はペラとめくって中を読んでみる。