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ワールドコネクト  作者: 如月
第二章 方向転換
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015 狂化の刻印

 私は憧れていた。物語のような警察に、アニメのようなヒーローに、そして絶対的な正義というものに。

 昔の私は世間を知らず、ただ闇雲に世界の善性を信じて、組織の潔癖さを妄信して、そして、私は失敗し続けている。


「狗飼!!」

「はっ。」

「お前、また余計なことをしたみたいだな?」


 余計な事。それはどの件だろうか。私としては余計な件と言われることなんて、した覚えもない。そればかりか、市民を救うために奮闘している毎日だ。どこに余計なことがあるのかさっぱり分からない。

 自分の信じた正義を貫くために、私は一歩一歩進んでいるに過ぎないのだ。


「余計なこととは何ですか?」

「はぁ。お前はアホなのか?業務外のことをするなって、何度言えば分かる?あのカップル、なんと言ったか。忘れたが、お前がDVとかなんとか言って連れてきたやつだよ。」

「あれは目の前で起こったことでして。」


 事実、腕にあざを作った女が崩れ落ち、男が去っていくのを目の前で見てしまったのだ。それを救わずして、何が警察だろうか?何が正義なのだろうか?

 手に届く範囲にいる人間を助けない警察なんて、どうしようもないじゃないか。それを、どうして責められる?何故、これは警察になったんだ?


「だ・か・ら~、課が違うだろ、課が。そんなに助けたければ市民課でも行ってこいて。無駄な仕事を増やすんじゃない。お前のせいでどれだけの時間が犠牲になる?こんな風に話してる時間も無駄なんだが?」

「い、いえ、しかし……」

「いえも、しかしもあるか!!警察とはいえ、所属している課が違うんだから、仕事内容が違って当然だろって。仕事を増やすんじゃない!!適当に専門の課に連絡して、放置して帰っておけよ。お前は頭が使えないのか!!」


 はぁ。どうして、いつもこうなるのだろうか。そんなに目の前の人を助けるのがダメなことなのだろうか?どうして、こうもこいつは怒っている?

 二言目には仕事をしたくない。ただ、それだけのために、助けるべき市民を助けようとしない。詭弁の元に救える人を見捨てろと言う。これが警察、正義だとでも言うのだろうか?


「申し訳、ございません。」

「ふん。」


 虫を払うように手を振っている。おそらく、立ち去れということなのだろう。これ以上反抗してもいいことがないのはお互いに分かっている。なら、これ以上言う言葉はない。早々に立ち去ろう。


「あっ、そうだ。お前、罰として外回りしてこい。」

「……はっ。」


 言われずともそうする。元々、他の案件もあるのだ。書類仕事を今やっている場合でもない。それに、今からは絶対に外してはならない契約があるのだ。いつかのために、正義の鉄槌を下すため。




「ああ、今日のことはちゃんと記憶からなくしておけよ。」

「はい。記憶から消去しますね。」

「くくく、くははははは!!」


 この街の権力者の息子だ。こいつは様々な人間を食い物にして、嗤っている。その笑い声が背後に聞こえるが、相手の話に合わせてやるのは苦痛だ。

 それでも、あいつが話した言葉、それに行動がいずれあいつを捕まえる手立てになることを信じて、今は耐え忍ぶ。

 記憶は消えても、私のスマホの記録は消えない。これが、あいつを捕まえる一手になるんだ。


「……絶対に捕まえる。」


 一人路地裏で決意を固める。本当の中に極小の誤魔化しを含ませながら、何とかあいつからの疑いを回避して、証拠だけは集められている。

 でも、あいつは権力者の息子、こんな小さな証拠を積み上げて本当に意味があるのだろうか。それに意味があるとしても、すぐに捻りつぶされてしまいそうで、正義が遂行できるか、とても不安だ。

 だが、そんなことも言っていられない。少しでもあいつを追い詰めるために、証拠集めをし続ける必要があるのは確かなのだから。


「……。」


 今は調子に乗らせておこう。いずれ来るべき時まで。決して許さない。




「狗飼!!」

「はっ。」

「お前、また余計なことをしたみたいだな?」


 この言葉は何回目だろうか?何度言えば気が済むのだろうか。もう、数えきれないほど聞いた言葉に私の心は雲がかったように重くなる。

 今回は予想がついている。ある職人の話だろう。これは確かに出しゃばり過ぎたという自覚はある。本来なら、事故の処理だけでいいと事を、その弟子を様子を見に行き、助言をするなんて、確かにやり過ぎなのだから。


「申し訳ございません。」

「ちっ、それを何度聞いたことか。仕事を無駄に増やすな。俺に何度も言わせるな!!」

「申し訳ございません。」


 機械のように繰り返す。私にはそれしかできず、それしかするつもりはない。私のしたことを間違えだと認めてしまえば、それは私の救った人たちが間違っているようで、それは違うだろう。

 私はただ、正義を執行するために市民を助けているに過ぎない。その気持ちに嘘はなく、そして私はそれを悪いものだと認めることなんて、さらさらないのだ。


「はぁ、もういい。どっかいけ。」

「はっ。」


 私は今日も市民を助けるために動く。それが私の根源だから。

 狂器“狂化の刻印(オーバーロード)”。身体能力向上に使える狂器だ。私のためにあるような狂器。それがある限り、私は現場を駆けまわる。そのための力だから。




 今日も街には悪が蔓延っている。それも正義である警官のはずなのに。

 警官が市民を追いかけており、何事かと市民を捕まえたら、汚職警官たちが市民を脅していたという。もう、この世界の正義、警察は信じられないのだろうか。

 どうすればいいのだろうか。


「ありがとうございます。」

「いえ、私は市民の味方ですので。」


 こうやって、市民を自分の足で助けていく。それしかないのかもしれない。

 どこか怯えたように視線をさ迷わせる男に私は出来るだけ柔らかく、微笑みを浮かべる。男は緊張に顔が引きつっているけれど、事態が済めばきっといつもの雰囲気に戻るのだろう。

 私は震える男を残して、その場を立ち去った。


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