表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

絵本・童話

ぼくの ふしぎな なつやすみ

挿絵(By みてみん)



夏休なつやすみの ちょうど まんなかごろ。

ぼくは いなかの おばあちゃんのうちへ あそびにきた。


おばあちゃんのうちの ちかくには ぞうきばやしがあって、

ぼくは むしとりをして あそんでいた。


のみき がけて むしとりあみを えいやって ふったら

おおきなせみを つかまえた!


ジー、ジー。


あみのなかで ふるえてる。


ジー、ジー、ぶるぶる、ぶるぶる。


ぼくは そっと せみを むしかごに いれた。


つかまえた せみを おばあちゃんに てもらいたくて

ぼくは ぞうきばやして んぼのみち

ずんずん あるいていった。


てくてく、てくてく。

  とてとて、とてとて。

てくてく、てくてく。

  とてとて、とてとて。


あれれ?

ぼくの 足音あしおとのほかに もうひとつ 足音あしおとがきこえるぞ。


くるり!


「わぁっ!」


ふりかえってみると ぼくと おんなじくらいの おとこのが びっくりぎょうてんしていた。


「わぁっ!」


ぼくも びっくりぎょうてん。


「きみは だれ?」


ぼくが たずねると おとこのは しつもんを むしして いった。


「やい、おまえ。さっき せみを つかまえただろ。

どうするつもりだい?」


ぼくは こたえた。


「おばあちゃんに せるんだ」


おとこの子は いった。


「しってるかい? そのせみは いっしゅうかんしか きられないんだ。

いますぐ にがしてやれよ」


ぼくは すこしかんがえてから いった。


「おばあちゃんに せたあとで にがすよ」


おとこのは ほそいを つりあげて ぼくをじっとた。

ぼくも おとこのを じっとた。


おとこの子は はだしだった。

かみは ぼさぼさで ぴょこんと はねてる。

すっぱそうな (なつ)みかんのいろの シャツ(しゃつ)に ぞうきばやしの のはっぱみたいな きみどりいろの ずぼんは どろんこだらけ。

オレンジ(おれんじ)いろリュックサック(りゅっくさっく)は、ずいぶん ふるくさかった。


おとこのは いじわるそうに いった。


「しんじられるもんか。にがさないで ずっとかごのなかに とじこめておく つもりだろ」


ぼくは ぶんぶんと くびをよこにふって いった。


「そんなこと ないよ。じゃあ、きみもいっしょに おいでよ。おばあちゃんに せたら ほんとうに にがすんだから」


おとこの子は あたまをひねって いった。


「なんだって。うーん。よし、わかった! いっしょに ってやる」


ぼくとおとこの子は おばあちゃんのいえに もどってきた。

おばあちゃんが でむかえてくれる。


「おかえりなさい。あらあら、おともだちもいっしょなのね。さあ、いらっしゃい。アイス(あいす)を あげようね」


おばあちゃんは ぼくが せみを せるまえに 台所だいどころってしまった。

ぼくと おとこのが えんがわで まっていると、おばあちゃんは むぎちゃと アイス(あいす)を もってきてくれた。


アイス(あいす)をもらった おとこのは にもった レモン(れもん)あじのアイス(あいす)を じっとて たずねた。


「これ、くいものなのか?」


ぼくは びっくりして ききかえした。


アイス(あいす)を たべたことがないの? つめたくて おいしいよ」


おとこの子は おそるおそる アイス(あいす)を かじった。


「なんだこれ、キーン(きーん)ってする! あまい!」


それからおとこの子は がぶりがぶりと あっというまに アイス(あいす)をたべてしまった。


「おいしいね」といいながら、ぼくも アイス(あいす)をたべた。


あれれ?

アイス(あいす)のぼうを なめている おとこのの おしりから なにか えているぞ。

ふさふさの きいろい しっぽだ!


ぼくは おどろいて おばあちゃんに (て!)といおうとしたけど、おばあちゃんは すかさず ぼくのくちを で おおった。

おばあちゃんは やさしく ウインク(ういんく)した。

まるで(いま たものは ないしょよ)といっているみたいだった。

それで ぼくは だまっていた。


ぼくは アイス(あいす)を たべおわると、おばあちゃんに つかまえたせみを せた。


ぶるぶる、ぶるぶる。


せみは また ふるえてる。

おばあちゃんは にっこりわらうと ぼくのあたまをなでて いった。


「りっぱな せみを つかまえたねぇ。このせみは もしかしたら んだおじいちゃんが まれかわったのかもしれないね」


ぼくは びっくりして いった。


「おじいちゃんが?」


おばあちゃんは やさしいこえで いった。


「おぼんやすみには んだひとの たましいが むしになって かえってくるんだよ」


「ふぅん」


ぼくは かごのなかのせみを じっとた。

ほんとうに おじいちゃんが このせみなの?


となりのおとこのも せみをてた。

ぼくは こっくりうなずいてみせると むしかごの ふたをあけた。

せみは またぶるぶる ふるえると はねをならして そらへ とんでいった。


ぼくたちは せみがえなくなるまで ずっとそらていた。


おとこのは くるりとふりかえって「アイス(あいす)、うまかったよ」というと、ぼくのに たくさんのおかねを にぎらせた。

ぼくは こまったこえをあげた。


「こんなに もらえないよ」


おとこのも こまったかおをした。


「おかしいな。にんげんは おかねをもらうと よろこぶってきいたけど」


そういって おとこのは リュックサック(りゅっくさっく)なかを がさごそと さぐると、おさまみたいな なつみかんを とりだした。


「それじゃあ、ばあちゃんと これをなかよく くってくれ」


そういって おとこの子は ぼくと おばあちゃんに いっこずつ なつみかんを わたした。


「ありがとう」


ぼくが おれいをいうと、おとこの子は くるりと とんぼがえりをうった。

すると おとこののすがたは ゆらりときえて、ぎつねに かわった。

そのまま いちもくさんに ぞうきばやしへと かけだしていったのを ぼくとおばあちゃんは くちをあんぐりとあけたまま おくった。


おやつのじかんになって おばあちゃんが なつみかんを むいてくれた。

くちなかが きゅーんとなるほど すっぱかった。

おばあちゃんは くちをすぼめて いった。


「おじいちゃんが ぞうきばやしでとってきた なつみかんを おもいだすねぇ」


ぼくは おばあちゃんに たずねた。


「また あのに あえるかな」


おばあちゃんは にこにこわらって いった。


「ええ、きっと あえるとも」


つぎに あのにあえたら なにをしてあそぼうかな。



挿絵(By みてみん)

2022年6月4日制作。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ビタミンカラー祭企画より参りました。 おばあちゃんの家の周りには不思議がいっぱいですね。 おじいちゃんがせみに生まれ変わったかもというおばあちゃんの言葉も、僕には不思議でしょうね。 突然現…
[一言]  男の子も、おばあちゃんも、温かい心の持ち主ですね。また一緒に遊べるといいですよね。新美南吉先生の作品と、重なる部分があって気に入りました。
[良い点] ビタミンカラー祭から拝読させていただきました。 子狐の男の子。とても優しく可愛らしいですね。 そして見守るおばあちゃんも優しい。 ほっこりするお話をありがとうございました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ