AIに小説書かせてノベライズしてもらうのよ!
初めての執筆作品になります。お手柔らかにお願いします。
「全部AIが書いちゃえば良いと思うのよ!」
「は?」
シルクのように美しい艶のある長い黒髪を靡かせ、豊満な胸をこれでもかと張りながら、彼女は突拍子もないことを言い出した。
「昨日テレビで見たの!これからはAIがどんどん人間から仕事を奪っていく時代が来るんだって」
「えっと…全然状況が読めないんですが…」
「私、なろうに小説投稿して書籍化してアニメ化してゆくゆくはパチンコパチスロ化して一生不労所得で遊んでいきたいのよ!」
「うわすごい早口ですごいこと言い出した。脳が情報を処理できない」
彼女の名前は橘侑里。
私立東冬高校に通う2年生である。
神聖ささえ感じ取れるほど完成されたフェイスラインとその抜群のプロポーションから放たれる美貌はもはや凶器とさえ言え、数々の男たちのハートを射抜きまくっている。
なんでも入学したその日には全学年はもちろんのこと、他校からも一目観にくる異常事態になったとか。他校の生徒は入学式をサボるんじゃないよ。
そんな全学年のアイドルである彼女と話している冴えない男こそ、この俺。
善知鳥太郎。
今をときめく一年生である。
身長172センチ、体重64キロのザ・平均体型だ。
学力も、運動神経も特筆する点なし。
自分で言ってて悲しくなるが、本当のことなので仕方ない。
さて、ひょんなことから交流することが多くなった俺と先輩だが、多感な時期の俺は勘違いしそうになりながらも、こんな調子でいつも先輩の思いつきに振り回されているのだ。
「えっと、つまりあれですか、AIに小説を執筆させて、お金を稼ぎたい…ってこと?」
「話が早くて助かるわ。これ短編だからチャキチャキやっていくわよ」
「おい待てあんたそのメタ発言はこの題材では危険すぎるだろ。」
素人作家には禁忌とも言える所業にいきなり土足で踏み入る先輩に思わず嘆息が漏れる。
短編とは言ってもまだ1000文字もいってないんだぞ!
ああいかんいかん俺までなにを言い出しているんだ。
こんな調子では「小説家になろう」なんて土台無理な話だと俺の中で結論は既に出ているが、俺も男である。超絶可愛い先輩のキラキラした目には勝てない。
「はあ…とりあえず、やりますか」
「いつもありがとう!ウトー君♡」
はい好きィ!!!!!!!!
「今回ご紹介させていただくのはこちら!!」
「商品番組かよ」
得意げに両手をノートパソコンに向かってひらひらさせるその画面には『AIのべりすと』なるものが映し出されていた。
「ここに冒頭の何文字か入力すればAIが学習して自動で名文を生み出しまくるんだって!!これが私の金の卵を産むガチョウってワケ!」
「そんな簡単に行きますかね…」
「百聞は一見にしかず!最近のなろうのトレンドはもう全部頭に入ってるから、そこ狙っていくわよ!」
「いやホント世の小説家さん達へのリスペクトとかないんですか?」
「そんなもので食っていける程、世の中甘くないわよ!」
「先輩確か良いとこのお嬢様でしょ…何が先輩をそこまで駆り立てるんだ。」
呆れる俺を他所に、先輩はカタカタと軽快なリズムで『AIのべりすと』なるものに文章を入力していく。
“婚約破棄された侯爵令嬢ですが実は異世界転移してきた最強の時空間能力使いだからこれから復讐ざまぁします。〜今更戻ってこいと言われてももう遅いですわ〜”
「…」
「よし!!」
「足し算しか知らんのかアンタは」
中2の時、好きな女の子に贈るオススメの誕生日プレゼントを聞きまくっていた同級生がいた。
やれマフラーだ、リップだ、ハンドクリームだと、それはそれは皆一生懸命案を出したものだ。
彼はその意見の“全て”を購入し、女の子にプレゼントして速攻振られた。
その際女の子に言われた「福袋かよ」の一言が忘れられず、年末のショッピングモールに並ぶ福袋を見るたびに彼を慰めるのに苦労したものだ。
今、まさに第二の犠牲者が出ようとしている(確信)
止められるのは俺しかいない。
先輩には気の毒だが、ここはビシッと言ってやらねば!
「いいですか、先輩。世の中美味しいとこだけ取って上手いこといくほど単純なものじゃないんです。ハンバーグとミートスパが好きでも、ハンバーグミートスパを食べますか?そういうことですよ。」
「どうしてもダメ…?」
「これでいけるに決まってるでしょ。ハンバーグミートスパ最高!!」
世の中は理屈で解決することばかりじゃない。
賭けるんだ、人知を超えたAIの学習能力ってやつに…!
「よし、それじゃあ残り2000文字くらいの尺、ガッツリ稼ぐわよ!」
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「アーシャリア。お前との婚約破棄を破棄する。」
「……はい、かしこまりました。王太子殿下」
そう言ってアーシアは部屋を出ていった。
残された俺は、ただ呆然と立ち尽くしていた。
*****
「お兄様! どういうことですか!?︎」
「…………」
「どうしてあんな女と婚約なんてしたのですか!」
「…………」
「私はあんな女よりずっと前からお兄様のことが好きだったんですよ? なのにどうしてあんな女を好きになったんですか?」
「…………」
「なんとか仰ってくださいよ!」
「……うるさいぞ」
「っ!」
「少し黙ってくれないか?」
「……申し訳ございません」
「それで、お前は一体なんなんだ?」
「なにがでしょうか?」
「俺のことを好きだと言ったり、いきなり態度を変えたり、挙句の果てには、あの女の肩を持ったり……。もう何が何やらわからないんだが」
「それは私もですよ。お兄様に婚約者ができたからといって、諦めるわけないじゃないですか」
「じゃあなぜ急に態度が変わったんだ?」
「それについては謝らせていただきますわ。でも、私がお兄様のことを諦めたわけではないことは覚えておいてくださいね」
「それはわかったが、なぜ俺があいつと婚約していることを知っていたんだ?」
「それはですね、お父様とお母様が嬉しそうに話してくださったからです」
「なるほど、そういうことだったのか」
「えぇ、まぁそのあと、私にもチャンスがあるかもしれないと思って頑張ってきたのですけどね」
「そうか」
「はい、だからこれからは時空間能力を使ってアーシアに復讐します!」
「そ、そうなのか……」
(アーシアには悪いが、正直ありがたい)
「というわけで、早速行ってきます!」
「あぁ気をつけてな」
「ありがとうございます! 大好きなお兄様!」
「うぉ!」
そう言って、妹は消えていった。
ーーーーーー こんにちは、作者の佐藤 春馬です。
ここまで読んでいただいて本当に感謝しております。
今回この『俺の彼女は聖女様』が50万文字を超えました! これも皆さまのおかげです。本当にありがとうございます。
そしてこれを記念して、1日2回更新をさせていただきます!(本日は19:30と22:00に投稿予定です。)
今後もよろしくお願い致しますm(_ _)m ではまた明日お会いできることを願っています。
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「…どこからつっこめばいいんですか?」
そこには誰も解読できない怪文書が作成されていた。
何故か侯爵令嬢は早々に退場し時空間能力をもったブラコンメンヘラの王太子妹が追い討ちをかけようとしていた。
侯爵令嬢に代わって属性てんこ盛りの妹の前では思わず王太子殿下もタジタジだ。
「…誰よ佐藤春馬って」
「いや俺に聞かれても。でもすごいですよ佐藤春馬さん。この調子で50万文字も書けるなんて、先輩も見習ってくださいよ」
「だから誰なのよその佐藤春馬は!!」
人知を超えたAIから生み出された佐藤春馬さん。
毎日2回更新お疲れ様です。うちの先輩を夢から醒ましてくれてありがとう。ありがとう。
しかし、俺からすれば当然の結果なのだが、思った形と違ったのだろう。
先輩は涙目になってしまい、今にもこの日本のどこかにいる無関係の佐藤春馬を呪い殺してしまいそうだ。
「こんなはずじゃなかったのに…こんなのどうやってアニメ化するのよ…」
「なにしれっと書籍化まではこじつけてるんですか」
いつもの快活な先輩も最高に可愛いが、シュンとした先輩もまた可愛いなあ。
呑気にそんなことを考えながらも、本気で傷ついてるらしい残念な先輩の為、ここは人肌脱いでやりますか。
「まあ結果こそ残念でしたけど、思いもつかない結果でとても楽しかったですよ。
いつもありがとうございます。さすが先輩。」
「…何よ急に。ちょっとそのセリフ臭くない?」
「…」
王太子の妹よ、今だけでいい。俺に時空間能力を貸してくれ。10秒前の俺をぶん殴るために。
「…ふふ、気遣ってくれたんでしょ。ばかね。
…ちょっとだけかっこよかったよ」
まぁ先輩が元気になってくれたみたいだし、俺の恥ずかしいセリフなんてどーでもいいよね!
「よし!私のビジネスマーケティングはこんなものじゃないわ。
今回は偶々、偶々失敗しただけなんだから!」
「はいはい」
強がる先輩もかわいいなあと思いながら、
明日もまたバカなことを言って、俺を振り回すんだろうなあ。
「…楽しいなぁ」
「なにかいった?ぼそぼそ言ってないでウトー君も何か案を出しなさいよ!」
すっかり元気を取り戻した先輩はまたいつもの快活な笑顔を浮かべ、
その宝石みたいな瞳を俺に向け、思わず俺はその可憐さに見惚れてしまう。
「つぎはディ〇ニーの購入代行よ!あたし年パスもってるから定価以上で売り捌いてやるんだから!」
「俺も先輩とディ〇ニー行っていいですか?」
「…別にいいよ」
スタスタあるいていくその耳が真っ赤になっていることを俺は見逃さなかった。
…あぁ、AIが実際どんなものなのかなんて、大して知らないけれど、間違いなく先輩は人知を超えてかわいいよ。
今からディ〇ニーが楽しみでしかたない。
逸る心を抑えながら、先輩と一緒に夕焼けの中並んで帰る。
これからも俺は先輩とバカなことをするんだ。
ちょっと変だけど最高にかわいい先輩と平凡な僕の高校生活は、まだ始まったばかりだ。
ファンタジーものを書こうと思ったんですがなぜかよくわからないものになりました。
文字数を稼ぐのにAIのべりすとは非常に有用な為、今回の結果を踏まえて愛用していきたいと思います(錯乱)