名門私立大学の試験に俺の著書がでた結果...
ありがとうございます。
今日は人生という名の航海において大きな分かれ道となる日である。
そうだ、大学受験である。高校3年生の俺はサッカー部を夏のインターハイで引退してからひたすらにペンを握った。暑い日も寒い日も風邪気味の日も机に向かい続けた。
そして今日は第一志望である○○大学の試験日である。名門大学で問題もクセがあり、一筋縄では合格できないことで有名だ。
だから俺は赤本はもちろん、その他役に立ちそうな問題集は全て解いた。すると、判定はどんどん上がっていき、合格を射程に捉えた。だから絶対合格したい。神よ私に幸福を。
最終科目である国語が始まって、1分も経たないうちに俺はその問題に絶句した。問題の内容に問題があるわけではない、その出典が問題である。そう。この「幸せのビーチサンダル」という小説、俺の書いた本なのだ。
高校1年生のときに書いた物で、そこまで有名にはならなかったが、新人としては素晴らしい出来と称された。その後、部活が忙しく、執筆活動は中断したのだが、まさかここで自分の小説に出会うとは。確かにクセがあると聞いていたが、ここまでとは。とりあえず見てみるとしよう。
ざっとその問いを見てみたのだが、著者なだけあってたいそう簡単だ。何も難しいことはない。当たり前である。罪悪感はあるが、さっさと次の問題にいくことにした。
試験が終わり、一人で試験会場を出る。周りには自分の出来に狼狽える者や神に感謝を捧げている者もいた。俺はというと、小説のおかげもあってかギリギリ受かりそうだ。発表が待ち遠しい。俺は自信を持って帰った。
合格発表 結果……………不合格
この三文字をみて言葉を失った。どんなに叩いても下から見ても上から見てもパソコンの画面から映るのはこの三文字である。
なぜだ。点数は足りていたと思っていたのに。俺は掲示板を見て答え合わせをすることにした。日本史と英語は予想通りの点数だった。
しかし、国語で恐るべき事実がわかった。なんと小説が全問不正解なのだ。きれいな全問不正解。自分が絶対にないと踏んだ選択肢が全部正解なのだ。
こんなのおかしい。俺は怒りのままに大学に電話をした。そして問題作成者に代わってもらえた。
「あの、幸せのビーチサンダルの作者ですけど、あの問題はどういうことですか。解釈がまるで合っていない。」
「はぁ。そんなことを言われましても。」
「だ か ら ……まぁええわ、俺を合格にしてくれれば水に流す。」
「それは出来ません。」
「なんでや。」
「それはですね。解釈の多様性を学ぶ学部があなたの受験した文学部なので。」
電話がプツリと切れた。
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