愛らしきもの
てちてち、と効果音がつきそうなほどかわいい小さな歩幅でかわいくふゃふゃと鳴くかわいいそれは、かわいい羊のようにふわふわと白い毛並みにピンクの眼をした、かわいい小ぶりのフェネックのような生き物だった。かわいい首元にはピンク色の花をあしらえたかわいい白いスカーフをしている。
かっ、かわいいわ…!!
その愛らしい生き物はぴくりと耳を動かすと、更に私の方へと近づきスンスンと鼻を鳴らす。どうやらパンの匂いにつられてやって来たらしい。
「ふゃぁ!」
「欲しいの?」
私の言葉に愛らしき生き物は首を横にこてん、と傾ける。
「はい、どうぞ。」
持っていたパンを少しちぎって差し出すと少し匂いをかいで食べ始めた。どうやらお気に召したらしい。唾液で湿らせ柔らかくし、せっせと口を動かしている。その生き物がパンに夢中になっている間にこっそり、ふわふわした毛並みを撫でる。
「わ…。」
本当に肌触りがいいわね…。スカーフもしているしこんなに毛並みが良いということは、きっと誰かに飼われているという事よね?
ここにきてようやく森の中のお屋敷と、そこに住む使用人と少女の存在が現実味を帯びてきた。私の中で一気にやる気が高まっていく。
「よし!わかったらこっちのものだわ!待ってなさい、お屋敷!」
どこぞの憎らしい令嬢のように腰と口元に手をあてて高笑いをしてみた。結構気合が入っていいわね、これ。