くちにまかせて
「お嬢様はあなたと面識がございません。どなたかと勘違いしていらっしゃるのでは?」
オニキスさんはやんわりと私を拒絶するように黙ったままのメイリーン様の前に立った。
なぜ?どうして?
警戒の姿勢に対する疑問より先に私の口から出たのは
「あら、オニキスさん。口調を変えてしまったのですか?あれはあれで親しみがあったのですけど。」
そんなとぼけた言葉だった。言い終えてからしまった、と口を押さえる。
私が聞きたかったのはそんなことではないのだけれど!?
「し、失礼しました。それで、メイリーン様とオニキスさん。どうしてそんなによそよそしい態度をなさるのでしょうか。説明をしていただかないと私納得できません。」
そうよ、この七日間ずっと会える日を待ち遠しくしていたのに待ち構えていたものが否定だなんて。
「ふゃゃー」
ふやちゃんも そうだー と言うようにメイリーン様たちの方を見て鳴いている。
二人はというとお互いに顔を見合わせ、メイリーン様は目を丸く開いて私の方を手で指し、オニキスさんは勢いよくブンブンと顔を横に振っている。
「もしかしてもう私のこと、忘れてしまいました?」