昨日の日曜日何されてましたか?
「海老谷さんは、昨日の日曜日何されてましたか?」
「ではご説明させていただきます。早朝4時に目覚めた私はジンジャーエールでうがいして、顔を洗ってからいちごジャムパンを食べ、お手洗いに行きました。便通は……」
「その説明は結構です……」
「そうですか。ではその部分は省いてご説明を続けさせていただきます。お手洗いと朝シャンを済ませ、朝6時まで顔の吹き出物と時間を潰した私は、軽自動車を駆って中州の歓楽街へと向かいました。朝の歓楽街を散策するのは私にとっての無上の喜びなのです。世界に一人きりになったような寂しさがあって、心が芯から暖かくなります」
「へぇ……」
「それから一丁目のソープ街の方に向かいました」
「……風俗とか行かれるんですか?」
「いえ。冷やかすだけです。ソープ街に入ると、キャッチの方々がしきりに声を掛けてきます。『お兄さんいい店あるよー』だの『ラッキーですねあなた!』だの『どこかお探しですか?』だの何だの。そんな喧騒が飛び交う朝7時のソープ街を歩いていると、有名人になってしまったような気がして来るのです。誰もいない歓楽街で熱い孤独を味わった私の心は程よく冷えていきます。サウナの後に冷水を被るような感覚ですね」
「そ……そうなんですか……」
「それから朝9時頃に一度帰宅してジンジャーエールを飲み、筑後川の河川敷を歩いて雑草に勝手に名前を付ける遊びをしました」
「あっ、それは地味に面白そうですね。素敵だと思います」
「でも、とても残酷な事だと思います。彼らには本当の名前があるのに、私に『グニャグニャ草』だの『ニセタンポポ』だの訳の分からない名前を付けられてしまうなんて。私だって本当はそんな事したくないんですが、楽し過ぎてついやってしまいます」
「そ、そうですか」
「一時間程雑草に名前を付けた私は、もつ鍋店へと向かいました」
「どなたかとご一緒されたんですか?」
「いえ、一人です」
「……あ、そうですか。もつ鍋お好きなんですね」
「いえ、あまり好きではありません。締めの雑炊が好きなだけです」
「まあ、確かにおいしいですけど」
「食後にジンジャーエールを五杯飲んだ私は……」
「ジンジャーエールお好きですね」
「はい。生姜は嫌いですが」
「そうなんですか……」
「盛大に食後のゲップをした私はゲーセンに向かいました。バジリスク2を打つためです。バジリスクタイムの曲がどうしても実機で聴きたかったもので。しかし、2000円近く使っても全くバジリスクタイムが始まらなかったので唇を噛み締めながらやむなくゲーセンを後にしました。私はギャンブルはやりませんが、ギャンブルに負けた方の気持ちが少しだけ分かった気がしました」
「そうですか……」
「何の気なしに消費者金融で2000円借りて帰宅した私は、首筋の吹き出物を潰したり、ライターの火を見つめたりしながら1時間ほど過ごしていました。そして午後3時頃。私はベッドに寝そべり、ヘッドフォンでマゾ向け同人音声を聴きました。『こんな音声聴いてるとかバッカじゃないのー?』『君って最低のマゾイヌなんだねー!』様々な女性の罵詈雑言が、私を鋭く突き刺して行きました」
「ええ……」
「私は罵倒されるのが好きなんです。誰もが私に期待していない。誰もが私を必要としていない。誰もが私を見下している。その事を再確認する事で、全てのわだかまりから解放されるのです。本当に魂が洗われるような心地でした」
「えっと……」
「午後六時。ついに私への罵倒が鳴りやみます。心地よい涙を目じりに溜めながら、録画していた『いないいないばあっ!』を視聴しながら、解凍した豚の生姜焼きときなこ餅と各種サプリメントを胃に収めた私はベッドへと戻り、長山さんをオカズにオナニーを開始しました」
「えっ……私ですか……?」
「はい。シチュエーションとしてはまず罵倒を……」
「あの……もういいです言わなくて……もう大体分かりましたから」
「いえ、まだ全ては話し終えていません。少し長くなりますがここからが本番です。どうかお付き合いくださ……あ、待ってください! まだ話していない事が沢山あるんです! ちょっと! あなたから聞いて来たんでしょ? 最後まで聞いてくださいよぉ……」