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閃光烈火の刀巫女  作者: まっつん
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ゲーム...始動!

under field on-line、2X世紀に発売された新作のVRMMORPG である。


『早くログインするように』というメッセージを友達にメールで送られて、それを見て私はハァとため息をついた。


私は鶴原 御幸みゆきという名前の高校二年生、性別は女、今は友達から誘われてVRゲームを楽しむところだ。


なんでも、このゲームは公式から情報がほぼ秘匿されていてネットで調べてもプレイヤー同士の情報共有くらいしか載ってない。


私も興味はあったものの、友達からこんなに催促されるとは思っても見なかった。


「とりあえず、夏休み中にいろいろ試してみよっかな」


現在8月序盤で夏休みが始まって数日の時期、課題はできる限り最初に終わらせるのでもう大半は既に終わっていた。(課題を夏休み一週間前に出す先生マジで神)


「もうログインしてるよね、ゲームあまりうまいわけじゃないけど」


私はゲームをするよりも外で遊ぶ方が多かった、というよりも部活で陸上をやっているので運動はそこそこできる。


「まあ、リアルに忠実って言ってるくらいだしね。そこは一度やってみないと」


VRの本体はヘルメット型で、被ると視界が真っ暗になる。


脳の微弱な電磁波を読み取り、五感すべてをVRの中に移動させる技術だが、詳しいことは私もよくわからない。


ゲームの世界に入るには、強く念じればいいそうな、それで本体が読み取ってゲームの中にダイブする。


目を瞑って瞑想のように念じると、気づけばそこはもう周りに何もない白い空間だった。


ピコンという効果音とともに現れたウィンドウにはuser name:空欄と書いてあった。


そこをタッチするとキーボードが出現して名前が打てるようになった。


「名前は、そうだね、名前が御幸だからユキにしよう」


user nameを書き込んだあとyesのボタンを押して、ウィンドウが閉じた。


その後すぐにもう一度別のウィンドウが開き、自動で棒読みに読まれ始めた。


《ようこそ、under field on-lineへ。現在、ステータスを脳内思考傾向を用いて最善のステータスを自動で構築しております。しばらくお待ちください》


「そういえば、性格によって自動でステータスが変わるって言ってたっけかな?まあいいか。自動ならお言葉に甘えよう」


正直無難なステータスであってほしいと願いながらももしかしたら強いステータスになるかな?と思ったりもしながら数分が経過した。


《完了しました。では、ゲームをお楽しみください》


「え?チュートリアルなし?」


私の体は光に包まれて、視界が一瞬にして真っ白になった。


「やっとログインできた」


「遅いぞ〜。全く...」


ようやくログインして町の中心だと思われる広場にやってきて早々聞き覚えしかない声が聞こえた。


町の外観は地下にあるかのように空は無く、大きな地下空洞にある空間だとわかる。


街灯によってすごく明るいが、リアルに比べて少し薄暗く感じる。


目の前には、白い髪を肩で切りそろえてローブに身長ほどもある大きな杖を持った女の子が立っている。


私の友達で、名前は霧崎 波瑠


「ごめんね。で、どうすればいいんだっけ?」


「あのね、まず自分のステータス確認しないと。自分の思いがステータスに反映されてるはずだからだいたい察してるんじゃないかとは思うけど」


「うーん、私だったら走るの好きだからスピードタイプかな?」


私は適当なことを言いながら頭で念じるとウィンドウが出てきた。


user name ユキ(lv1)


HP50/50 MP20/20

STR35 AGI120 VIT35

DEX15 MAG20


スキル

疾風迅雷(NEW) • 刀術lv1(NEW)


疾風迅雷:移動速度が速いほど、威力増大。さらに、AGIステータスを1.5倍にする。


刀術lv1:武器、刀の威力を上昇。さらに、刀を用いた攻撃の動きに補助がかかる。


「わーお、使いにくいね」


「えー?強くない?」


「あ、そっか。御幸は知らないんだね。このゲーム、相当インフレしてるから、この程度なら常識の範囲内なんだよ。私だって相当だし」


そう言ってハルはステータスを見せてきた。


user name ハルサキ(lv1)


HP20 MP170

STR5 AGI10 VIT20

DEX65 MAG85


スキル

魔導並列起動 • 魔導速射 • 初級魔法(火)


魔導並列起動:レベルによって魔法を同時発動させることができる。


魔導速射:魔法にかかる時間を軽減する。(魔法の再発動時のクールタイムは減少しない)


初級魔法(火):火属性のランク1の魔法を放つことができる。(魔法を使う場合はランクと属性ごとにMPを消費する)


「全プレイヤーは各自、初期ボーナススキルを獲得できるんだ。運が良ければ基本スキルの他に四つくらいもらえる人もいるらしいけど私は二つ、御幸は刀術除いて一つだからね。微妙かな」


「そっか、まあいいけど、そんなインフレして大丈夫かな?」


こんなインフレすれば間違いなくプレイヤー同士の格差が生まれてしまう。


そうなればこのゲームの人気は間違いなく絶対に落ちるだろう。


「まあそこは汚い大人の事情で再度キャラメイキングするのにお金がかかるらしいね。私はこの髪は普通に染めただけだけど」


「うわぁ、汚い」


そんな酷い話を純粋に楽しみたい私に言わないで欲しかった、切実に。


「ねえ、あと実名はアレじゃない?だからそろそろゲーム内の名前で呼んで?」


「ああ、そういえばそうだったね。リアルの方で呼び慣れてたから失念してた」


「じゃあ、ユキ、行こうか」


波瑠は私の手を取ってモンスターのいるフィールドまで歩いて行った。


「ねえ、そのステータスだと使いにくくない?」


「え?なんで?」


「多分その速さだと初心者は酔っちゃうしまともに攻撃当たるかどうか」


ああ、そういうことか。


私のAGIは120を1.5倍した180となっている。


普通に歩くだけでも相当な速さなのでハルに合わせて現在ゆっくり歩いていた。


「いくら陸上部でも慣れるのに時間はかかると思うよ?気をつけて」


「うん、わかった」


と、話していると早速真っ赤なトカゲが現れた。


「よし、初戦闘。ちょっと気持ち悪いけど」


私はだっと飛び出してトカゲに急接近した。


「うわ?!思ったよりも速い!」


刀よりも先にトカゲに足が当たってしまいそのまま放物線を描いて吹き飛んでいく姿は、ミヤコからすれば結構異常な光景だった。


「うーん、練習する?」


「うん、そうする」


リアルで走っていた速さとは比べるまでも無く明らかにスピードが出ていた。


ステータスが強いのは確かだけど、それを扱えるかは自分次第ってわけだね。


「取り敢えず、モンスターに対して動きになれる練習かな?それから刀を使った動きで自分に合った立ち回りを覚えるのがいいかな」


「かもしれない。頑張ってみるよ」


その後、私とハルはモンスターを何体も狩りながらフィールドの奥へ奥へと進んで行った。


初期から強力なスキルが手に入る代わりに、敵自体も勝てなくはないがそこそこ強く戦闘用スキルがなければ詰みそうな状態だ。


このゲームはたぶん生産職の人はずっと生産職のままだろう。


どう考えても戦えそうにない。


「うーん、1日じゃ慣れるのは無理かな。ここら辺のモンスターに負けることはないけどどうしても動きに振り回されちゃう」


「はぁ、仕方ないか。スピード型のステータスのプレイヤーは結構練習必要だからね。数日かけて覚えていこう」


波瑠は私とは別にモンスターに対していくつもの魔法を使って掃討していた。


二人とも着々とレベルを上げて1日でレベル4まで行った。


「そろそろ街に戻ろうか。もう数時間経ってるし、リアルの方では夜じゃない?」


「そうだね。帰ろっか」


「うん」


私たちは一旦街に戻り中央広場で解散、明日またモンスター狩ってレベリングにゲームの動きになれる練習も兼ねる予定だ。


「ログアウト」


言葉に出して頭で念じることでVR機器が反応してリアルの感覚に戻る。


「明日も大変そうだな〜」


薄暗い洞窟をモチーフにしたVRゲームに、初期ボーナススキルによる多大なるインフレ、人それぞれ全く違うプレイスタイルで共闘したり対戦したり。


みんながみんな高水準のプレイを身につけることができるから一応ゲームバランスはギリギリ保ってられるのかな?


「明日、波瑠に色々聞こう」


そして次の日、再びダイブした私は波瑠と待ち合わせをしていた広場の中央で合流した。


「今日はお母さんに昼ごはん作り置きしてもらったから。気がすむまでゲームできるよ」


「へえ、そういえばユキ、豆知識だけどこのゲームって何が目的かわかる?」


「え?オープンワールドの自由探索ゲームじゃないの?明確な目標なんてあるのかな」


「あるんだよね、これが。簡単に言えば世界樹ユグドラシルを蘇らせる。方法は未だによくわかってないけど、多分いくつものアイテムを集めて復活させるんだと思う」


「それってどこ情報?」


「運営の唯一の情報。といっても大まかな目的だけね。このゲームのコンセプトだからそこだけはネットで調べればわかったよ」


「そうなんだ、でも、ここ地下だよね?世界樹を設立するほどの空間はないはずだよ」


「うん、だから多分地上ステージも今後追加されると思う。要はアップデートだね」


あー、これ多分開拓イベント的なものが絶対くるね。


しかも世界樹なんて大それた目的だし相当な難易度の全プレイヤー総出イベントかー。


その前にも地下空間を広げてステージ拡大イベント、レイド戦なんかもあるよね。


でも、そんなこと今考えてもよくわからないし、今のうちにできるだけレベルあげとこう。


「できれば人がいないところがいいね。混雑してると効率が落ちるし」


「じゃあマントル域行こう。地形的に人気ないし人もいないだろうから」


なんだその危ない領域は、絶対ろくなこと起きないでしょ。


「うん、凄く地形ダメージを受けそうな場所だね。大丈夫かな」


「そこは大丈夫だよ。地形ダメージは基本ないけど、魔物は比較的他の場所よりも強いかな、ってくらい」


「私たち現状レベル一桁だよ?そんな強いエリアいっても勝てないよ」


「マントル域は初心者の人が行くエリアの中では強いってだけだからね。あと、このゲームまだ発売してすぐだからまだそこまで強力な敵とかはいないんだよね」


そういえば、このゲーム前に波瑠が熱烈に進めてきたけどそれが発売日だったから、そう考えると結構最近このゲームは出たのか。


「わかったよ。行こう」


「それじゃ、レッツゴー」


と、張り切ったはいいものの...そこからが地獄の始まりだった。


というのも、まだ速さに慣れていない私が強いモンスターと戦うなんて想像に容易いことが起こるに決まってる。


そう、勝てないのである。


マントル域に出るモンスターはマグマスライム、ファイアバット、レッドラビットとかいう火属性の小型モンスターが多くてとてもじゃないけど刀を当てるのは無理。


「あーもう、また外した!」


「あ、これで十二連続空振りだね。ドンマイドンマイ」


マグマスライムは遅いから落ち着いて攻撃すれば当たるけど、ファイアバットとかいうコウモリは絶対当てられる気がしない。


そもそも刀の正しい持ち方も構えもわからないのにその上制御不能の速度を強制させられるのは流石に無茶振りすぎる...。


「波瑠はいいよね、魔法使ってれば倒せるし」


「だって仕方ないじゃん、魔法には補助機能が付いてて予測弾道が視覚的に表示されるからそりゃあ当たるよ」


「ずるい、使いやすいのいいな〜」


なんで操作補助がないんだろ、あんまりにも酷すぎる操作性に少し心が折れそう。


ピコンッ!


「ん?いきなりウィンドウが表示されたけど、どれどれ...」


スキル獲得

縮地:任意で発動可能。対象との距離を通常速の1.8倍の速度で縮める。代償として30秒間他の発動型スキルを使用不可(再使用まで300秒、消費MP0)


スキルレベルUP

刀術(LV1→LV2)


「わお、これまたすごい。デメリットがでかすぎるのがきたね」


「うーん、これ強いのかな?」


ただでさえ速さを制御できないのに、1.8倍の速度を自在に操れるわけがない。


「今のユキなら役に立つと思うよ。試しにほら、そこにぴったりの魔物が」


ハルが指をさす先にはマグマスライムがウネウネとさまよっている。


「うーん、じゃあ...縮地!」


言葉に出した瞬間、走ろうともしていないのに体が勝手に動いてマグマスライムに突撃していく。


だが、運動エネルギーの法則を全く無視した目の前での完全停止を発揮して瞬きした頃にはすでに肉薄になっていた。


「あっえ?と、とりゃぁぁぁぁ!」


止まったところでハッと我に返った私はとっさに刀を振り下ろしてマグマスライムを真っ二つに切り裂いた。


切り裂かれたモンスターはパリンと光となって砕け散り、経験値として私の元へ入って行くのが感じられる。


「確かに、これ使えるかも」

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