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補喰神話ーアポカリプスー  作者: 鬼姫煉明
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第0話最初の崩界

2050年、世界は、終わりを迎えた。

たったの1日で。

8月15日。

日本にとっては、最も有名な日。

日本の戦乱が終わり、平和になった日。

そんな日に「それ」は起きた。

「それ」は、海の中から天へと昇った。

「それ」の体によって天は覆い尽くされ、太陽は隠され、地は暗闇に包まれた。

「それ」は獣のような姿をしていた。

四本の巨大な足。巨大な黄金の毛皮を纏った体。

背には輝く巨大な翼。尾はまるで蟒蛇《ウワバミ》のようだった。

その体からは、十の首が伸び、その頭は様々な生物を形作っており、その全てに冠の如き十の角があった。

グオオオオオオオオオオオオオオオ

「それ」の首は、一斉に咆哮した。

その雄叫びは、一度聴いただけで頭から離れてなくなるほどの恐怖を持っていた。

グオオオオオオオオオオオオオ、グオオオオオオオオオオオ、グオオオオオオオオオオオオオオ

咆哮が起こした音圧によって青かった海は、白く濁り、津波すら起き、大地に巨大な地震が襲いかかった。

正午になるまでその咆哮は続き、大地を壊し続けた。

ドオン!!

突如、「それ」の体に小さな爆発が起きた。

ようやく、人類が造り上げてきた「力」――世界各国の軍隊や日本の自衛隊が到着したのだ。

地上、海上、天空に無数の兵器が集結し、「それ」に向かって攻撃していく。

無数のミサイルや砲弾によって「それ」の体に次々と爆発が起こる。

――――――――――しかし、傷一つつかなかった。

頭、胴、翼、尾。どこに攻撃しても、血を流させるどころか薄皮を破ることさえ、出来なかった。

そして、今まで天に向かって、吠えていた「それ」は、

初めて人類に頭を向け、巨大なアギトを開いた。 

開かれたアギトの先に居たのは、諦めずに「それ」にミサイルを撃っていた戦闘機の大群だった。

その大群に向かって巨大なアギトから赤い球が吐き出された。

パイロット達は、慌てて避けようとスピードを上げるも赤い球は、あまりにも速く大きすぎた。

たちまち射線上にいた戦闘機達が赤い球に飲み込まれていった。

赤い球は、そのまま進みつつ少しずつ小さくなっていき、

仕舞には消えてしまった。

生き残った戦闘機のパイロット達は、その光景を見て、安堵の息をついた。

その瞬間

――――――――音が消えた。

戦場を莫大な閃光が包み込む。

圧倒的な光の奔流は、10分以上も暴れ続けた。

そして、閃光が収まるとそこには、

―――――――何も無かった。

空を覆い尽くすほどいた戦闘機の群れは全て塵《ちり》と化していた。

更に、首の一つが海へ向いた。

再び、吐き出される球。

今度の球は黒く染まっていた。

その球は何隻かのイージス艦を飲み込みながら海中へ沈んでいった。

バリィッッッ!!!

瞬間、海全体が青白く光った。

そして、次々と海上にいたイージス艦や空母が爆発していった。

瞬く間に、海上をひしめいていた軍艦達は、一隻も残らず海中へ沈んでいった。

「それ」は、もう一つ球を吐き出した。

灰色に染まった球は、空中で止まると少しずつ回転し始めた。 

少しずつ、少しずつ回転は、速くなっていく。

それと共に吹きすさぶ風が強くなっていく。

球は、回転しながら風を取り込んでいく。

そして、溜め込まれた力は、解き放たれた。

球から灰色の巨大な槍が伸び、天と海を貫いた。

竜巻。

人類がそう名付けた現象。

どんな人でも、その姿と恐ろしさを知っているだろう。

そして、何が起こるのかも。

――――――――飛んだ。

地上にいた戦車や対空砲などの兵器やジープなどの軍用車。

そして、人。全て飛んだ。

そして、一つ残らず、槍の中に飲み込まれた。

10分ほどして、槍は静かに消えていった。

槍が消えて、少したつと空から灰色の雨が降ってきた。

灰色の雨が何も無い地面にカンカン、音をたてて降り注ぐ。

しばらくすると灰色の中に赤色が混ざり始める。

カンカンという音にビシャビシャという音が混ざっていく。

灰色に染まりつつあった地面に赤色が広がっていく。

その景色の中には、「それ」以外、誰もいなかった。

人類が作りあげた兵器という「力」は、ことごとく打ち砕かれた。

「それ」に傷一つ付ける事も出来ずに。

しかし、人類には、たった一つだけ「力」が残されていた。

世界最大の国力を持つアメリカ合衆国で「力」は、その姿を現そうとしていた。

何十年も閉じられていた扉が開く。

縛られ続けていた「力」が遂に解き放たれる。

白い煙を纏い、地上へ、そして大空へと飛び立つ。

「それ」と「力」の戦いを見ていたのは、たった一人生き残った男だけだった。

その男だけが、全てを見ていた。

「それ」の御伽噺《おとぎばなし》に登場するドラゴンのような頭に「力」が突き刺さる光景を。

その頭を中心に「それ」の身体が炎に飲み込まれていく光景を。

炎に飲み込まれてた身体から巨大なキノコのような煙が上がっていく。

男の心の中に喜びの感情が溢れ出す。

しかし、溢れ出した喜びは、それ以上の絶望に飲み込まれた。

大量の煙の中から、金色の巨体が姿を現したからだ。

巨大な両翼には、所々に、穴が穿たれ、巨体のあちこちに傷がついていた。

「力」の直撃を受けた頭は、ごっそりと無くなっていて、気持ちの悪い断面を見せていた。

それだけだった。

人類の持つ最後の「力」を使ったのにもかかわらず、「それ」が負った傷は、それだけだった。

しかも、ミチミチという音を響かせながら、無くなっていた頭が治っていく。

身体や翼についていた傷も次々と塞がっていく。

まるで、傷など無かったかのように全てが元通りになっていく。

グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

元の姿に戻った「それ」が十の口全てを開けて吠える。

その声に導かれるように、暗雲が空を覆っていく。

「それ」は、巨大な翼を羽ばたかせ、黒天の中へと消えていく。

その巨体が消え去ると同時に

グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

一際巨大な咆哮が響きわたった。 

その咆哮を追いかけるように血のような真紅に染まった雨が降りしきる。

グオオオオオオオォォォォ…………

咆哮が小さくなるにつれ、雨はどんどん強くなる。

グォォォ……………………

地球を震わせていた咆哮は、消えるように聞こえなくなった。

そして

―――――――――黒天を突き破り、金色《こんじき》に染まった巨大な

球が落ちてきた。

その数は、12。

一つは、海へ、残りは、大地へ。

落ちた時の衝撃波は、海を狂わせ、大地をなぎ払った。

黄金球は、落ちると共に、砕け散り鳴動を繰り返す肉塊を残した。

しばらく鳴動を繰り返していた世界各地の肉塊は、一斉に鳴動を止め、見たことも無い怪物達を生み出した。

怪物達は、生き残っていた人間達に襲いかかった。

その夜、空に空いた穴から、月の光が差し込んだ時、ほとんどの大陸から、人間達は、消えていた。

その1日で大陸の――世界の支配者が変わった。

逃げ延びた人間達は、生涯この日を忘れず、子孫へ語り継いでいった。

8月15日、世界が終わった日のことと、

世界を滅ぼした「それ」の。

一番最初に現れた滅びの名。

―――――――ザ・ワンを。


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