表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/80

第十三章 崩落が進み、世界への侵食が拡大する 1

 タキオン島。

 そこは、アサイラム付近にある場所だった。


 赤い珊瑚が浜辺に群生している島だ。

 長閑な島だった。


 ケルベロスが選んだ場所だ。

 敵側にバレないように、各地の難民を集って、シェルターに避難させている。

 主に、緑の悪魔とイゾルダの攻撃によって、都市を破壊された者達の避難場所だ。ニーズヘッグと呼ばれる者が破壊した都市は、住民が一人残らず消し去られてしまっている。

 現状は悪過ぎると言わざるを得ない。

 他にも問題は山積みだ。


 武器商人の方は、未だ行動が分からない。

 ホーリー・ドラゴンの方は、相手の望み通り、メビウスが討伐に向かったとの事だった。

 レウケーは、煙草を吸いながら、心労を抑えていた。


「ん、何だ?」

 レウケーは、シェルター内で、彼に語り掛けてくる少年を見る。

 どうやら、共通言語が通じない。どうやら、その少年が使う言葉は、翻訳しなければならないみたいだった。レウケーは、彼の話す言語を知っている者を、アサイラム内で探す事にした。

 どうやら、かなり田舎町の言語みたいだった。

 レウケーは、何とか翻訳機を使って、その少年と会話をする。翻訳機を作ったのは、アサイラムに収容されている囚人だ。レウケーは、心の中で舌打ちをする。



 グリズリーの焼け跡から、数百キロ離れた地域。

 そこは、まだ平和で、侵略に怯える人々で溢れていた。


 人口は、数百万人程度だろうか。少し、ダート側の強力な能力者が暴れるだけで、簡単に壊滅してしまうような場所だ。

 そこは、中世から近世にかけての、建築物をそのまま残した歴史ある場所だった。白亜の城塞が並んでいる。

 兵隊達は、兜に鎧を身に付けて、剣と槍で警護を行っていた。


 ホビドーは、この辺りで待機していた。

 確実に、狙われる可能性のある場所だからだ。

 相棒のスロープは、此処にいる避難要請の住民をシェルターへと案内するべく、幾つか配置されたヘリコプターへと案内している。

 もし、逃走用のヘリを敵側に見つけられれば終わりだ。だから、ヘリは光学迷彩という透明になる技術を駆使して、慎重に動かさなければならない。


「やはり、此処だったか」

 自分の読みは的中した。

 街中で、反乱が起こっている。

 手に手に、ショットガンを持ったパワード・スーツの男達が現れる。彼らは、街の兵隊達を撃ち殺し続けていた。

 ホビドーは、彼らの前におもむろに立ちはだかる。


「何だ? お前らは?」

 男達は、彼に向けて、銃を撃ち続ける。

 ホビドーは、周辺へと自身の能力を広げていく。

 酸の空間だ。

 男達は、悲鳴を上げ始める。


「ゾンビでは無い……? 生きた人間か? ゾンビなら痛覚は無いだろうからなあ」

 彼はそう言いながら、冷静に状況を分析しようとしていた。

 通信機から、スロープの声が入る。


「何? 街が囲まれている? 強化服を身に付けた者達にか?」

 彼は、苛立っていた。

 彼の上司であるレウケーは、タキオン島へと出払っている。レウケーはすっかり意気消沈してしまって。この戦いでは、自分は裏方に回ると述べていた。彼の自尊心をへし折る程に、ダート側の敵は強力な相手ばかりだった。実際、この前、アサイラムは再び襲撃されて、ケルベロスが重症を負っている。

 ホビドーは折れるわけにはいかなかった。

 自分の能力は、きっと大した事は無い。だから、最大限に生かさなければならない。

 敵は、市外地のあらゆる場所を歩き回っている。

 彼は、パワード・スーツの男達を見つけ次第、酸の弾丸を撃ち込んでいく。

 ホビドーは眉を潜める。


「統率が取れている。ただの無頼漢じゃない。敵側に司令塔がいるのか?」



「あははっ、ミソギちゃん。あたしが見る限り、この街も簡単に終わるわよ?」

 そう言いながら、筋骨逞しい厚化粧の男が、通信機で会話をしていた。


「他にも、勢力図を広げていくわけでしょう? 儲かるわねえ」

 彼は、くねくねと全身を動かしていた。


「それで、貴殿は一体、何なのかな?」

 ラジュリは、後ろを振り返る。

 すると、獅子頭の巨漢が、戦斧を手にしていた。


「あは? ちょっとねぇえん、乙女には色々と秘め事があるのっ!」

 そう言いながら、骨太い肉体の男は、全身をくねくねとさせる。


「ミソギ、と言ったか。何処かで聞いた事があるのだが…………」

 ラジュリは何とか交渉に持ち込むような姿勢をする。

 しかし。

 スロープは、問答無用だった。

 バトル・アクスを、オカマの頭に向けて振り下ろす。

 ラジュリは、咄嗟に身を翻す。


「あらぁ? あなたは、タイプじゃないしぃ。あたしが此処で始末してもいいのよぉ?」

「そうか、俺は貴殿の命を終わらせなければならないらしいな」

 そう言いながら、獅子頭は、戦斧を振り回していく。


「あははっ? そんなんじゃ、あたしを倒せないし。あたしの『ハイエルフ』の敵じゃないわよ?」

 そう言うと、ラジュリは両手をハートの形にする。

 すると、彼の周辺が、桃色と琥珀色が入り混じった空間へと変わっていく。

 スロープは、少し冷や汗を掻く。


「此処、水脈があるのよねえ。開拓してリゾート地やら何やらに出来るんじゃないかしら?

此処の国の王様と交渉したいんだって。ミソギちゃん、最終的には、此処にミサイルを幾つも撃ち込んで平らにしたがっているわ。彼はとってもお金がお好きな男。だから、お金の為になら、何でもやるんじゃないかしら? “故郷を持たない”から、守るべき国も無い。守るべき大切な人もいない、あの人にあるのは、果ての無い野心と物欲だけなのよねえ?」

 スロープは、通信機を取り出して、相棒へと連絡していた。


「あたしのハイエルフに畏れを為しているのかしら? ちょっと、近付いてごらんなさぁい?」

 スロープは、ホビドーと連絡を取っているのだった。相手の話の内容がよく分からない

と、だから、どちらかと言えば策士タイプのホビドーが考えて欲しいのだが。

 ホビドーが言うには、ミソギというのは『武器商人』と呼ばれている男だった。所謂、マフィアなどの裏社会では、それなりに有名な名前だし、賞金首達も、この男の息の掛かったブラック・マーケットなどで、武器や奴隷などを調達しているとの事だった。


 ……どうする? ラジュリとかいう男の使うハイエルフの能力の全貌が分からない。確か、眠らせる、とか言っていたが。どれだけの効果があって、本当に眠らせるだけなのかも分からない。

 通信機の向こうの声は、鼻で笑う。

 ……そいつは、多分、かなり頭が悪い。ミソギに踊らされているだけだろ。そいつの能力の全貌も大体、予想が付いた。誘惑、混乱タイプの精神攻撃か何かなんだろう。それに加えて、何か物理的にダメージを与えてくる力もあるかもな。とにかく、距離を置いて戦え。まともにやれば、お前の相手じゃないさ。それから、なるべく、口を割らせろ。


「ミソギちゃんは、イゾルダの生体兵器も欲しがっているわぁ。もっとも、操作が難しそうだから、頭を捻っていたみたいだけどねぇん」

 そう言いながら、ラジュリは、くるくる、と全身を回転させていく。

 スロープは、距離を置き続ける。


 そして。

 その辺りにある壁を拳で破壊すると、ラジュリへ向けて投擲していく。

 ラジュリは、明らかに困惑したような顔をしていた。


「ほらぁ? あなたは臆病者なのかしら? もっとこっちに寄ってよぉ」

 スロープは、彼の言葉の一切を耳に貸さない。

「今から、貴殿から出来る限りの言葉を引き出したい。覚悟はいいかな?」

 オカマは彼を嘲るような顔で見ていた。

 スロープは心の底から腹立たしく、彼を見るのだった。



 ケルベロスは、レウケーの部下のホビドーと通話をしていた。


「武器商人ミソギ……? ……ああ、知っている。尻尾が掴めないから、ランキングには

入れられていない。顔も知らないが。確かに、その男は裏社会を牛耳っている大物だ。能

力者では無いらしいが、奴の射撃の腕や、兵器の操作。それから、奴の部隊はかなりやっ

かいな障害になるだろうな。そう言えば、先代の看守長や、死んでいった多くのハンター

達が、ミソギという男を追っていたらしい。奴を捕縛するなり、倒せれば、かなりの数の

マフィア達が勢力を削がれるだろうとも言われている。いや…………、それ処か……」

 武器商人。

 その男が扱っている武器の事を考えるならば。


「マフィアどころじゃない……。そいつは、色々な各国家に最新型の銃、ミサイル、戦闘機、地雷、戦艦、強化服……。レーザー銃や超振動ブレードまで売っていると聞いている。詳しくは俺もよく分からない。銃の種類、爆薬の種類も色々だ。銃ならば、拳銃、アサルト・ライフル、スナイパー・ライフル、ガトリング・ガン。文明レベルの高い国と交渉して、意味の分からないビーム兵器や改造人間まで手に入れているらしい。爆弾は、小型の時限爆弾から核兵器まで動かしているらしいがな。……とにかく、ふざけた奴だ」

 ケルベロスは、ホビドーの話を聞いて嫌な想像が頭にちらつく。


「銃や爆弾で、能力者を倒せるのか? ……細菌兵器とかも有しているかもしれない」

 彼は首を傾げた。

 銃やミサイル、果ては核爆弾くらいなら、この世界の平均的な文明を有している者達の

道具だ。

 想像する上で、やっかいなのは、ドーンなどが手を出せない科学が発展した国だ。

 もし、そこにある兵器とやらを手にしているのならば、何が出来るのだろうか?


「昔、『エーテリオン』という人工的に能力者を生む計画が、当時の最先端の科学者達の間

で行われていたな。インソムニアも、エーテリオンの計画で生まれた実験体だとは聞いて

いたが……」

 そして、資料によれば、その計画の集積物が、イゾルダという存在だ。

 彼の生体兵器は、人類が創り出した“負の遺産”なのだ。


 しかし……。

「とにかく、俺はミソギの正体は知らない。まず、顔が出回っていない。チェラブさんや

ハーデスの師匠が色々言っていて、尻尾を掴みたがっていたが。彼らが死んで、俺が所長

になってから追跡が中断されている。それ処じゃなくなったからな。しかし…………」

 何の為に、ダートに参戦したんだ?

 まるで、理由が分からない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ