第十一章 罪の十字架が広がるから…… 5
ルブルは、アイーシャの存在に気付いていた。
ニーズヘッグが去っていった後、しばらくしてアイーシャが此処に来ていた。
一応、切り札として、クルーエルがいる。
しかし、アイーシャはまるで隙を見せなかった。そして、クルーエルの能力は、アイーシャに知られている。完全に、それを念頭に入れられて、飛行型の機械ゾンビで、偵察を行っている。
彼女に手落ちがあるとすれば、未だ、ルブルとクルーエルのみが、この家の中に隠れていたという事を見つけられなかった事だろう。
地下室は、二重にも、三重にも作られていた。
戸棚の裏側に、隠し部屋を設置して。更に、その隠し部屋から、別の部屋へと向かえた。
頼りの、メアリーとセルジュは出払ってしまっている。
もし、全力で叩かれたら、完全に終わりだった。
特に、今、メビウス辺りに来られたら、ルブルは完全に詰んでいた。
ルブルは自省の念に駆られる。
……アイーシャの考え通りね。学ばないと。彼女は私を“買い被り過ぎていた”。もう少しだけ、色々な場所を調べれば、私が此処にいる事に気が付いた筈なのに。やはり、私は早くこの場所を去らないと。来たのがアイーシャじゃなくて、メビウスだったら、間違いなく見つけられて、殺されていた可能性が高い…………。
それにしても。
メアリーとセルジュが戻るのが遅い。
ミソギとの交渉に時間が掛かっているのだろう。
二人が戻ったら、すぐにでも、此処を離れるべきだった。
ルブルは認めている。
というよりも、冷静に実力を見極めている。
アイーシャは、強い。
もはや、彼女の創り出すゾンビは、ルブルのゾンビでは話にならない上に、それ処が、アイーシャそのものが脅威以外の何者でもない。
ルブルは少しだけ、固まったような顔になる。
……って、待って。あれ、もしかして、首領の私が、ダートで一番、弱い……?
ルブルは自虐的な笑みを浮かべる。
多分、この考えは事実だ。
メアリーも、セルジュも、どんどん能力者として、成長していっている。
ルブルがやった事は、多分、居場所を与えた事くらいだ。
彼女は苦笑する。
……うーん、ボスとして威厳、何も無いわねえ。グリーン・ドレスに謀反された時も、メアリーのお陰で難を逃れたし。どうしたものかしら。また、謀反されたら、私、簡単に負けて死ぬわねえ。まあ、それはそれで面白いのだけれども。
ルブルは、指先をこめかみに当てながら、色々と、何か良い策が無いか考えていた。
ミソギとかいう男は、メアリー達からの通信によれば、兵器を貸してくれるらしい。それで、何とか、難を逃れようと考えていた。
もし、その兵器とやらが、それなりに強いものならば。自分の生み出すゾンビ達に持たせてみよう。そうすれば、アイーシャやメビウス、ケルベロスといった、厄介な連中に対する牽制になり得るかもしれない。




